第99話 とんとん拍子で皆ハッピー

 卒業式。フィリアナをエスコートしながら、何だかんだと楽しかった三年間を振り返る。こうして好きな人と卒業式に参列出来て幸せだ。

 フィリアナのドレスは城のお針子さんたちに相談したら、凄い熱量で協力してくれた力作。凄く喜んでくれただけでなく、物凄く似合っている。


 フィリアナの両親もフィリアナのドレス姿を見てとても喜んでくれた。

 婿入りするし、義両親との関係も思っていた以上に良好で素敵。


 卒業後しばらくは各地を訪ねる予定。各投資先に訪問して、オルグレン領ではフィリアナの補佐が出来るようになるための勉強をする。

 投資先の視察とかも、もう全部フィリアナと一緒に行くんだー。楽しみ。


「ねぇ、フィリアナ。これからもよろしくね」

 しっかりフィリアナの目を見て言う。思いが伝われって願いを込めて。


「もちろんです。よぼよぼになっても仲良くしましょうね」


「何て素敵な提案。是非そうしたいな」


「そうしましょう」


 そっとフィリアナが寄り添ってくれる。エスコートにも気合が入るね!


 入学当初は友達はゴードン一人かもと思っていたが、実際にはカールやエヴァン、気のいい筋肉たちにシェリーもいて毎日が楽しかった。

 学園から退寮する時、がらんどうになった寮の部屋を見て、何か色々と込み上げて来たけれど、何故か先にニコールに泣かれて落ち着いた。


 一旦城に戻って視察やらなにやらの準備をして、その間にフィリアナとお針子さんを会わせてウエディングドレスの最高傑作をお願いして……。


 楽しい事で色々と忙しいって、最高。




 俺の卒業と共に弟とカリーナの処遇も決まった。俺が本格的に忙しくなる前にと、父上の側近フリッツが説明に来てくれた。

 弟は謹慎処分中に禁止されていたにもかかわらず、カリーナと連絡を取っていたので処罰されることになった。


 弟とカリーナの手紙のやり取りは最初からバレていて、フォード侯爵家も父上の命令で静観していた。

 手紙には反省の気持ちは書かれておらず、お互いの近況と未来の話だけが綴られていたそう。


 父上は俺の希望に沿って、二人が反省して約束を守るなら、機会を与えるつもりだったらしい。

 二人はそんな思いを裏切り続け、こちらに謝罪もなく、ひたすら二人だけの道を突き進んでいた。


 ある意味情熱的で凄いとは思うが、周囲にかけた迷惑を考えれば謹慎中くらいは大人しくして欲しかったな。

 そりゃあ弟の筆頭侍女も、ちょっとした言葉で泣きそうになるよね。


「当初は二人同時に学園へ入学予定でしたが、ディーハルト殿下のみになったのはその為です」

 リーリアに聞いたら教えてくれなかった事情が、やっと知れた感じ。


 弟だけが入学したのは俺に負担がこれ以上かかるのを防ぐ為と、叔父さんの立太子に邪魔が入らないようにする為の目くらまし。

 学園卒業後、弟は除籍後一代限りの男爵になる。ルールを守れない者を、王家に残してはおけないとの判断だ。


「お二人は家から除籍されても結婚したいと希望していたので、二人が除籍後は自由にさせることになりました」

 領地のある男爵家だから、二人は結婚してそこで暮らすのね。結局親は子どもに甘いよねぇと思ったが。


「除籍と同時に婚約解消の経緯と二人の不貞を公表します」

「あっ、公表するんだ」

「はい。二人の結婚はどう考えても不自然ですから」


 十八歳で男爵領とはいえ領主というのは異例の早さ。公表されて苦労もあるだろうが、二人は優秀だろうし初恋が叶ったのだから頑張るだろう。

 二人との関わりは薄かったし、他に聞きたい事も無かったので説明はすんなり終了。


「ケビンは何処の部門に戻りたい? やっぱり内政部門?」

「私は息子と一緒にライハルト様に付いていきます」

 アンナから先に返事が来た。気持ちは嬉しいけれど、夫婦別居なの?


「私も付いていきます」

「私とハノアもお願いします」

 リーリアとナタリーに、ハノアからも返事が来た。


 迷いが無いけれど、リーリアはロイドはいいのか? いいんだろうな。

 ナタリーとハノアは結婚予定で、いずれはオルグレン領でレストランを開業したいと既に聞いている。


「私も行くぞ!」

 投資の関連でルヒトじいが来てくれるのは助かるが、ロシーニ侯爵家はいいのだろうかとも思う。


「私も! ライハルト様!」

 ケビンが焦って単語になっている。


「私もそれに混ざりたかったー!」

 ニコールがジタバタしている。


 ニコールと熊さんは、熊さんの現役引退までは城に残る。実はケビン以外には今後の事は既に確認済み。

 フィリアナ側にも許可をもらっていて、希望者全員連れていく。投資のお陰で私財に余裕があるので、給料にも困らない。


 ケビンには側近になった時のいずれ希望の部門に戻すという契約があるのに、忘れているのか付いてくる気満々で準備をしているので、ちょっとしたいたずらでした。


「じゃ、そういう事でー」


 皆来てくれる。やヴぁい、幸せだわ。


 結婚式の準備は女性陣が張り切っていたから任せていいかと思ったら、そうでもなかった。

 ようやく招待状の送付が終わり、やっと王太子の発表が行われた。その時に弟についても発表された。




 馬鹿だったけれど諦めずに頑張ったことで、周囲に助けられながら幸せです。

 今日はフィリアナとの結婚式。頑張って良かったよー。


 小説通りにはならなかったけれど、弟とカリーナも結婚できるし、皆幸せでハッピーエンド!

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