実践重視、たぬき作家の手抜き覚書

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ネタを思い付いたらまず○○と○○


 ネタとは、ふとした瞬間に降ってくるもの。


 コレとアレを組み合わせたファンタジーが面白そう。

 ラブコメでこんなヒロイン出したい。

 こんなどんでん返しはどうよ?


 設定にしろ、キャラにしろ、ストーリーにしろ。アイデアが出た瞬間、貴方はじゃあ書いてみようとスマホやPCを起動していませんか?


 いつもの執筆ツールを開き、さてタイトルは……の前に、ちょっとだけ待って!!


 それをそのまま書いて、本当に面白い作品となりますか……!?



 いやいや、貴方の直感を否定するつもりはありません。しかし、一度冷静になってキチンと準備をした方が、より良い物は書けるんじゃないでしょうか……?



「うるせぇ、思い立った今が一番筆が乗るんじゃい」



 まぁまぁ、落ち着いて。

 

 小難しいプロットをミッチリと書けとは言いません。ですが、これから長編を書くのであるならば最低限の方針は立ててみませんか?


 そう、これはただの方針なのです。

 書き方はこうしろ、設定はこうあるべき、とはここで言うつもりはありません。


 私自身、そんな事を言えるほどの実力はありませんので。




 ……というわけで。

 今回は最低限、こういう方針は立てた方が後で後悔しないよ!!というお話です。



 やることは大きく分けて、『テーマの設定』と『読者が望む展開の想定』のふたつ。

 だいじょうぶ、そんなに難しい話ではありませんので。


 それではさっそく、やっていきましょう。




 1.テーマの設定


 最初のステップはまず、その思い付いたネタを箇条書きにしてみること。


 冒頭にあったような、○○ってどうだろう的なもので大丈夫です。

 それが書けましたら、作品全体のテーマを大雑把に決めましょう。


『○○が○○を目的として○○をする話』


 テンプレはこんな感じです。

 例を挙げるならば、


『大正生まれの婆ちゃんが住む限界集落が異世界にまるごと転移したので、大往生目指して、竹やり片手にモンスター相手に無双する話』



 ――まぁ、内容の良し悪しはさておき。


 こんな感じにテーマを決めておかないと、書いているうちにアレもこれもと、その時に思い付いた要素をつぎ込みがちになります。


 一話毎に見直す作者は面白い、と感じるのですが、通して読む読者には話が散らかって頭が混乱してしまいます。


 実はコレ、書いている本人にはかなり気付きにくい。

 

 挙句の果てに、良く分からないボヤけた作品を何万文字も書いてしまうことも……。


 書いているときは「やべー、おもしれー!脳汁ドバドバやんけ!」と気持ちが良いものなのですが。一方の読者は「一体コレは何を読まされているのか」と訳が分からなくなっていき、果てには「うん、もうえぇわ」と去っていってしまうのです。


 もちろん、どんどん要素が足されていくのが完全に悪い訳では無いです。

 むしろ読者を飽きさせないドッキリ展開は歓迎すべきだと思います。



 しかし軸となる部分が無いと、読者は『一体なにをどう読めばいいのか分からない』となってしまいますので、これはあらかじめしっかりと定めておきましょう。




 2.読者が望む展開の想定


 こうしてテーマが決まったら、次はターゲットを定めていきます。

 いわゆる、読者層の設定です。


 ――メンドクサイ。

 面白いと思ってくれた人がこの作品の読者層じゃい。


 分かる。めっちゃ分かる。

 だがしかし、これはまだ見ぬ読者のため、に限ったことではないのです。


 既に作品を書いた経験のある方は、こう思ったことが無いでしょうか。


「なぜ自分の作品のPVは増えないんだろう」

「こんなに面白いのに」

「二話目以降のブラバ(ブラウザバック)率が高い……」


 そんなことを思ったこともねーよ、と言う人はそもそも他人の創作論なんて読まないでしょう。

 コレを読んでいる人は、多少なりとも似たようなことを思ったことがある、という前提で続きを書いていきます。



 作者と言うのは作品の一番のファンなので、何を書こうが基本的に面白いです。


 しかし読者は違うでしょう。


 自分に刺さらない作品なんて、「もしかしたら次の話は面白いかも」なんて微塵も思わずにさよならバイバイです。それはもう、あっさりと。二度と来てくれません。


 逆に読者の想定さえ出来ていれば、彼らの望む展開が何となく予想できます。

 その展開を、読者は多少なりとも評価してくれるはずです。


「読者の為じゃねぇ! 自分は自分の書きたいものを書いて、読者を満足させるんじゃ!! 読者が俺について来い!!」


 はい、それも結構です。

 それが実際に出来ているなら、大いに結構。

 大変すばらしい才能だと思います。



 売れっ子作家には実際に、そういうゴーイングマイウェイな方もいらっしゃるでしょう。


『面白いと思って書いたら売れた』


 それは多くの人の『好き』を実際に満たし続けているからです。


 ただそれを狙ってやるか、やらないかの違いだけであって。狙わずにやれるのは、それはもう一部の天才だけです。


 ――が、壁にぶつかった時。もしかしたら天才は、それを越えることが出来ないかもしれません。



 狙ってやれる人は壁にぶつかっても、『じゃあココをこう変えてやってみよう』と理論立てて行うことができます。


 人間の『好き』という感情はどうあっても強いです。それを理解している人は、今がダメでも他のやり口で書けます。

 応用がきく人は、たとえジャンルが違っても書ける人が多いです。



 だから、最初のうちに何となく『コレは誰の“好き”に刺さるのか』という狙いを定めましょう。長編における途中からのテコ入れ、方向転換は難しいです。


 最初は狙ったターゲットから外れることがあっても、『このネタはこういう人間に刺さる』という気付きを増やしていきましょう。

 経験とテクニックを磨いていくことで、確実に実力は上がります。



 では再び、私が例を挙げたネタを使って実践してみましょう。


『大正生まれの婆ちゃんが住む限界集落が異世界にまるごと転移したので、大往生目指して、竹やり片手にモンスター相手に無双する話』


 作家脳のみなさんであれば、私が言わずとも勝手に何となく作品のイメージが浮かぶかもしれません。

 腰が曲がっているのにパワフルな婆ちゃんが歳を感じさせない無双っぷりをしている図などなど。


 文字で上手く表現できなくとも、シーンの一部分が脳裏に浮かぶと思います。

 それが自分で思い付いたネタであればなおさらに。


 それを元に、そういった話が好きそうな人間の性別、年齢、学生or社会人といったことを想像していくのです。



 ジャンルはコメディ、ファンタジー。

 男性がメイン。

 異世界が舞台ならば10代~20代前半がとっつきやすいはず。


 私の場合、最初はこんな感じです。


 とすれば、この作品に期待するのは『戦争経験を活かしたサバイバル』、『蘊蓄のある人生観』、『大正ラブロマンス(?)』とかでしょうか。


 これはあくまでも私がサラっと考えたパターンなので、実際には他にはもっとこうした方が面白い!!沢山あるかとは思いますが。


 ともかく、これでターゲットを想定しておけば、それに沿った出だしが書けるはず。


 その読者さん、冒頭から世界観の説明がつらつらと何千文字も書いてあるのが読みたいと思いますか?


 だったら転移してきたお婆ちゃんの着替えシーン偶然見てしまった!とかの方がまだ興味が湧きますよね?



 今後のストーリー展開においても、これらの主軸を活かせます。


 どうでもいい話をグダグダ書くより、『今の読者さんたちならこういうネタがあった方がウケるやろ!』と書いていく。

 そうすれば読者さんも『これなら最低限、期待した通りの面白い話が続くだろう』となってもらえるわけです。





 さぁ、いかがでしょうか。

 たしかに読者さんに媚び媚びでちょっとなぁ、と思われるかもしれません。


 しかし自分のエゴで余計なシーンばかり詰め込み過ぎるのは、それをネットに公開して読者さんに読んでもらおうとする行為とは相性があまり良くありません。


 加筆修正なら後でいくらでもできます。

 まずは『もっと読みたい!』と思われる作家になる方が建設的ではないでしょうか。


 なによりも、あらかじめ方針を決めておくだけで、勝手に作者自身の想像が膨らんでいくのです。それも、ストーリーが破綻せずに。


 あとはこの『テーマ』と『読者層』という主軸からブレないように書き続けるだけ。

 途中で『あれ、コレって何書いてたんだっけ』ということは無くなっていくと思います。




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