第2話一日目(昼)

男は少し考えた。

(存分に利用した後にお祓いでも受けてスッキリしようか・・・。)

そんな男を横目に夢月は掃除を始めた。掃除機を押し入れから取り出してかけたり雑巾がけをしたり。

そんな夢月に男は言った。

「おい、悪魔。勝手にやるのは良いが掃除機は無しだ。止めてくれ!」

「どうして?床だって埃が転がっているわ。こんなにしてたら健康を害するよ。」

男は不機嫌そうに言った。

「掃除機は・・・うるさ過ぎる、ただそれだけだ。分かったら早く止めてくれ!!!」

流石悪魔、人の嫌がる事は率先してやるってもんだ。

「嫌だね~あんたの為なんだから少しは我慢しなさい!」

掃除をしている夢月は楽しそうだった。それを見て男は次第に我慢できなくなった。

「こうなったら・・・。」

「な・・・ぼ、暴力反対!こんなにかわいい私に手を上げるつもり!?」

「俺もやる!こうなったら徹底的に綺麗にしてやる。」

「ほっ、良かった。それじゃあ頑張りましょう!」

それから使いっきりだった一軒家のありとあらゆる場所を掃除した二人。気が付けばもう夕方だった。

男は機嫌を良さそうに言った。

「お風呂を沸かすボタンをポチっと。いやーありがとう、お陰で綺麗になったよ。」

夢月は胸を張って言った。

「そうよ、私に感謝しなさい。夜ごはんは何する?勿論この夢月ちゃんが作ってあげるんだからね!?」

男は感激した様子で言った。

「そんな、至れり尽せりじゃないか!」

それに答える夢月は自信満々だった。

「当ったり前じゃない!あんたを骨抜きにしてやるんだから覚悟をなさい!さて、何を作ろうかしら?」

そう言って冷蔵庫を開ける。無い。何も無いじゃないか。それに唖然とする夢月。

「あんた一体何食って生きてんのよ!暫く冷蔵庫に食べ物が入った形跡が無いんだけど!?」

男は答える。

「ジュース。後・・・はて、何時か忘れたが袋麺を食べたぞ?最後の一個だった。」

頷く男。夢月は激怒した。

「バカ!この大馬鹿物っ!そんな食生活してたら死んじゃうじゃない!まともなもん食え!コメを食え!コメを!肉も食うんだよ!肉も!こうなったら夢月スペシャルをお見舞いする必要がありそうね?覚悟なさい!」

勢いに押される男であったがそのサインに気が付く。

夢月は寄こせと言っている。何を?

「何が欲しいんだ?」

「お金。食材を買ってくるから。言っておくけど生活費は全部あんたが払うんだからね?」

男は衝撃を受ける。

「ふぁっ!そんな・・・。」

「良いじゃない。国債で一財産作って全部預金してるのは知ってるんだからね?それに障害年金も出てるし何も困らないじゃない。だから取り敢えず私におこずかい・・・そうね、五万円位くれても良いのよ?」

男は言った。

「手元には一銭たりとも無い。しょうがないな・・・。」

金庫から通帳とキャッシュカードを取り出す。

「金銭管理は任せた!後はよろしく頼んだぞ?しっかり者の夢月ちゃん!」

夢月は呆れた様子だった。

「出会って間もない女に金銭管理を任せるかね普通。まぁ、私は普通の女と違って信頼できる良い女だから大丈夫だけど。」

ふーっと溜息をついて買い物に行った。途端に家に静けさが帰ってくる。

男は考える。いや、考えざる負えなかった。

「いや、普通に考えて不味いのでは!?もしかして・・・いや、そんな筈は無い。多分彼女は悪魔ちゃんで、俺をたぶらかしてくれる筈だ。だとするならば俺の財産を勝手にばら撒くような真似はしない筈だ。いや、しかし巧妙な手口の詐欺かも知れない。」

そうこうしていると風呂が沸いたので取り敢えず入る。

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