ブルブル
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人に寒気を感じさせる妖怪。恐怖を感じると体がぞっとするのは、この妖怪に取り憑かれたからとされている。また物事に対して恐れて臆病になるのも、この妖怪によるもの、とする説がある。
恐ろしいなにかがいると感じるのではなく、そのなにかがはっきりと見えるタイプだそうで、曰くつきの場所では大抵この世のものではない存在を見るという。
「だいたいぼんやりとした顔とかが、ふわーんふわーんってかんじです」
小さい頃からずっと見えており、今のところ実害もないため、おばけの類いは怖くない。むしろいきなりドーン!と驚かされる方が苦手なのでやめてほしいそうだ。
貴重な見える人且つ恐怖に耐性もあるせいか、大学生時代は肝試しで重宝された。心霊スポットに連れ回された経験は両手の指だけでは数え切れないほど。
毒島さんとしては「行くだけでお礼に色々買ってくれるから問題なし、むしろどんとこい」とのこと。
そんな心霊スポット巡りの中で、印象に残っている出来事があるという。
「心霊スポットで有名な某廃墟に行ったときなんですけど」
山奥にあるその廃墟は何年も放置されているせいか、あちこち崩れかけだった。毒島さんを含めた一行は崩落の危険を感じ、周囲を見て回る程度に留める方針に計画を変更した。
歩いていても、それらしきものは現れなかった。
毒島さんはこの世のものではないものは見えるが、周囲にいるかどうかを感じることはできない。
なので、ここは「出る」という噂だけがひとり歩きした場所なのかも、と思っていた。
すると突然、最後尾にいた女子が悲鳴を上げた。なにかが近くにいるような、背筋がぞっとする嫌なかんじがしたと言う。
「あぁ、この子は感じるタイプの子なんだなーって」
だが、似た者同士だね、と語り合う余裕はなかった。
その女子はがたがたと震えだし、その場にうずくまってしまう。しきりに「怖い」「寒い」「嫌だ」とうわごとみたいに
それ以来、その女子は心霊スポット巡りをやめてしまい、遂には大学を辞めてしまった。なので「霊感持ち同士仲良くなれなくって残念」と毒島さんは言う。
「でね、これは誰にも言わなかったんだけど、見えたんです」
なにかを感じて最後尾の女子が震えていたとき。
その首筋には半透明の生首がいて、しきりに息を吹きかけていたという。
「だから、なんとなく“いるな”って感じたら、至近距離に幽霊が来ているってことなのかもしれませんね」
あまり想像したくない場面である。
ろうそくは残り――九十。
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