ドーラ・オセロトラの話①『Uno !』


 アルフレイム大陸のどこかにある山猫の氏族が暮らす街に生まれたドーラ・オセロトラは、幼い頃から拳闘士グラップラーである父の背中を見て育ちました。


 彼女の父は拳闘士グラップラーでしたが、ただの拳闘士グラップラーなどではなく、大衆芸能として楽しまれながらも、文化性の影響を受け神聖視までされている流派『ルチャ=リブレ聖闘術』の使い手だったのです!

 軽快な動きで悪役の拳闘士ルチャドール達を倒していく姿は、パフォーマンスの範疇には収まらない”確かな力強さ“を感じさせるもので、周辺地域ではその人気と、街道に現れたガルーダ相手にパフォーマンス抜きで戦った時の身のこなしから頂天に輝くものスペルエストレージャと呼ばれる程でした……!


 そんな父も母と沢山のきょうだいが待つ家に帰ればとってもやさしいおとうさんで、

 ドーラはそんな父が大好きでした。


 もちろん、そんな父に憧れたのはドーラにとっては当たり前のことで、

 立派な拳闘士ルチャドーラになるべく、ワルぶるこども達を懲らしめてガキ大将になったり、父の試合を毎回見に行ったりしました。

 前者はまあ、かなりおこられたのですが……!


 そして、ドーラが7歳の誕生日を迎える頃、父があの《ジニアスタ闘技場》に招待され、そこで興行することになったのです!

 当時、ブルライト地方の各地で暗い出来事が立て続けに起きており、民衆の間では目に見えかねないほどの”不透明な不安“が発生していました。

 その民衆の不安を取り除くための、至極真っ当な興行に、ドーラを含めた家族達も招待されたのです!

 初めての長旅に浮き立つ家族達を見て、父が「これからはもっと直接的な家族サービスもするべきかな」と困ったように笑っていたのを、彼女はよく覚えています。


 それはもう、今も夢に見るほどに。

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