第22話
「うわっ、デカすぎだろ……」
明和高校の校門を潜って、最初に出てきた感想はその一言に尽きた。
校舎はかなりの距離があるのだが、そこまでの道の両端にはサッカーのコートや野球のグラウンドなど、ものすごい広さがあるのだ。
今までは公立高校に通っていた。
グラウンドはもちろん一つであり、野球部とサッカー部、陸上部などで使う場所を細かく分けて部活をしていた。
つまりここのサッカー部は本来の広さのコートで練習が出来るのか!?
ますますサッカー部の活動が楽しみになったのは言うまでも無いだろう。
俺はこの設備に完全に夢中になっていた。
だからこそ周囲に気を配る余裕はなかった。
夏帆に腕を掴まれ、まぁ見る人からしたら繋いでるようにしか見えない状況にずっとあったこと。
男女問わず周りの生徒から穴が開くほどガン見されていたこと。
夏帆が手を掴んでいる状況が恋人同士の行動のように思えてしまい、ずっと照れて俯いていたこと。
それらに全く気付くことは無かったのだ。
校舎に入り、俺は夏帆の案内で職員室に来た。
ここで杉本先生に話せば良い、ということだけ父さんから言われていた。
夏帆曰く一年の先生だどいうことだけは聞いた。
「失礼しまーす」
夏帆がノックの後、ドアを開けて入っていったので俺もついていく。
「杉本先生、話していた義兄です」
「よろしくお願いします。風間慎二です」
夏帆がとある女性に挨拶し、その方を杉本先生と呼んでいたのでこの人だと理解する。
ダボダボな白衣を着た身長低めの女性?
女の子と言っても過言では無いほど小さい。
しかし先生に対してそんなこと言えるはずもなく、胸にしまっておいた。
「おう、ありがとな〜瀧本。そして君が風間くんだね。いや〜驚いた。兄妹揃ってそのスペックか〜」
「???」
「まぁいいや。風間くん、今日から君は私が担任の1Aの生徒になるわけだ。折角だからHRで教室入って皆んなのド肝抜いてやろうゼ」
「は、はぁ……。分かりました」
見た目といい、行動といい、中々にクセが強そうな先生である。
言ってることが正直あまり分からない。
夏帆のクラスは1Dらしく、今日は日直で仕事があるらしいので教室へと向かった。
そして残された俺はというと、HRの時間まで杉本先生とちょっとした雑談などをして時間を潰していた。
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