第21話
「ごめん夏帆、ちょっと遅れた」
「大丈夫。ここから明和高校まで徒歩10分あれば余裕だから」
今の時間は7時30分。
HRは8時30分からなので、何か変なトラブルに巻き込まれたりしない限りは余裕で間に合うだろう。
「それじゃあ行こっか。案内するよって言いたいけど私も一応ここから通うのは初めてなんだよね。まぁ大通りに出てあとは基本道なりだから迷うはずもないとは思うけど」
それは俺も昨日のうちに地図で確認しておいた。
家から100メートルほど住宅街の路地を歩くと大通りにぶつかる。
あとはそこを進んでいくと明和高校は見えてくるらしい。
とはいえここら一体の地理感は皆無である。
初めてといえど多少分かっている案内人がいるというのはとても心強かった。
そのため幾分かの余裕ができ、俺は夏帆の真隣を歩きながら、新たな風景に胸を躍らせていた。
そしてあっという間に大通りに出た。
するとポツポツとだが俺と夏帆と同じ制服、つまり同じ高校に通う生徒たちの姿が見え始めた。
そしてここで大事なことに気付いてしまった。
俺が夏帆の隣を歩くのはまずいのではないだろうか?
夏帆は見ての通りすごい美少女である。
そんな美少女と顔面偏差値30の野郎が並んで通学などしたら、悪いニュースが学校で流れてしまうかもしれない。
俺は結構ずぶといので、真正面から悪口を言われてもケロッとしているようなタイプである。
しかし、夏帆にまで悪口がいくと話は変わる。
俺のせいで夏帆に不快な思いをさせたくはない。
だから俺は歩くペースを落とし、夏帆の後ろをついて行くようなかたちにした。
「慎二?」
「いや、並んで歩いてたら変な噂流されるかもしれないだろ?」
「もうっ!慎二は私と噂されるの嫌なの?」
「おれは別に気にしないけど……」
「私も気にしないからほらっ!隣!」
「お、おう」
俺は強引に夏帆に腕を引っ張られ、隣を歩かせられる。
案の定、少し後ろを歩いていた同じ制服を着た女子2人が、何やらヒソヒソとこっちを見ては話している。
そして、
「なぁ、夏帆さんや。腕は離さないの?」
「こ、これは慎二が迷子にならないように……」
「いや、さすがにこの距離では……」
「嫌なの?」
「嫌というわけでは……」
上目遣いでこっちを見てくる義妹。
それはさすがに反則だろう……。
俺は絶対断った方が良いと理解はしているが、断り切ることが出来なかった。
もうどうにでもな〜れ🎶
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