第16話
「(きゃーっ!言っちゃった!)」
さっきまでの悲壮な覚悟はどこへ行ったのやら、私の胸中は薔薇色に染まってしまっていた。
ただそれは仕方ないだろう。
許してもらえた上に、今のところ良いところしか見えていない超絶イケメンの義兄にプロポーズまでされてしまったのだ。
これからなんて呼べば良いんだろう?
"お兄ちゃん"や"お兄さん"ではなく、"旦那さま"、いやいや"あなた"とか?
いや流石にそれは気が早すぎるか?
考え出しては妄想が止まらない。
好ましく思った異性が出来ずに15年以上の月日を経た私は、恋というものに強い憧れがあったことは否定できない。
だが、これは仕方ないことなのだ!(2回目)
脳内お花畑の思考で有頂天になっていた私の前で、義兄はどうやら戸惑っているようだった。
もしかして、オッケーを貰えるって思ってなかったのかな?
それで感情の整理が追いついていないに違いない!
ふふ、可愛いところもあるんだな〜。
しかし、未来の私が見たら自害していたかもしれないほどの醜態を晒していることに全く気付くことは出来ていなかった。
そんな状態の私は次の瞬間、義兄の一言により一瞬で地獄へと叩き落とされることになる。
「じゃあ改めて、今後はゆっくりで良いから本当の"兄妹"になろう。俺もしっかり認めてもらえる様に、兄として頑張ってみるから」
ん???今なんて???
えっ……プロポーズじゃないってこと???
ただ兄妹になる=家族になるってこと???
私の勘違い……???
「(えええええええっ!!!!!)」
私は心の中で過去1番の叫び声をあげた。
そして荒れ狂う心の中とは裏腹に、思考は止まっておらず、澱みなく流れ続けていた。
私が勝手に勘違いしていただけなら私が勝手にダメージを受けるだけである。
しかし、私はさっきなんて言った?
「ふ、不束者ですが…よ、よろしくお願いします……」
そう、言ってしまったのである。
勘違いしたことが目の前の義兄にバレているということである。
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。
どうしよう??
こんな勘違いをする頭のおかしい妹なんて思われた日には、私はもう耐えられる自信がない。
というかもう思われてるのでは??
よし……、もはや全力で誤魔化すしか残された方法しか存在しない。
「べ、別にっ!プロポーズされたなんて勘違い、しっ、してないしっ!!!」
そして言った瞬間気付く。
いや、どこのツンデレヒロインだよ……。
拝啓、未来の私へ。
……まじでごめんなさい。
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