第14話
私はまともに喋ったこともない義兄のトロフィーを壊すという、許してもらえないような罪を犯した。
罪悪感と不安な感情から、先ほどから頬を伝う涙が止まらない。
これが気心の知れた仲ならば許してもらうまで謝り、そして償うことが出来たことかも知れない。
しかし、今の私の置かれた状況にもはや猶予はない。
私たち新たな家族は始まったばかりなのだ。
ここで問題を起こし、私と義兄の間に酷い確執が出来てしまった場合、せっかくの母の再婚が無かったことになる可能性が無いとは言えないのだ。
今まで私の幸せのために文字通り身を削って働き、何一つ不自由なく育ててくれた大事で大好きな母である。
そんな人の幸せを奪うなんて許されることでは無いし、私も許すことなど出来ない。
ならば今の私に出来ることは何なのだろうか……。
それは義兄に何をしてでも許してもらうしかない。
そのためならなんだってしよう。
私は覚悟を決めた。
そして1時間ほどして、義兄が帰ってきた。
義兄は自分の部屋の惨状を見て驚いた表情を浮かべたが、少しするとゆっくりと私の目の前に腰掛け、
「とりあえず、ゆっくりで良いから何があったか教えてもらえないかな?」
と優しく言ってきてくれた。
予想外の反応に動揺しながらも、私はゆっくりと何があったのか話し始めた。
義兄は特に口を挟んだりもせず、静かに私の話を聞いている。
そして最後に私は今考えている胸の内、そして覚悟を吐露した。
「虫の良い話なのは分かってます。けど、お母さんは再婚して本当に今幸せそうなんです。私はなんでもします。だから、離婚につながるようになることにはしたくないです……」
私が義兄の立場だったらどうしただろうか。
正直今の義兄みたいに静かに、冷静さを保ちながら話すのは無理な気がする。
もはや祈るような気持ちで私は反応を待つ。
たとえ頬をぶたれてでも、少し性的な要求をされたとしても、私は許してもらわなければならない。
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