第11話
え?????
目の前の状況の情報量があまりにも多く、それを理解しようとするのに手間取ってしまう。
まずなんで義妹が俺の部屋にいるのか?
なんで泣いているのか?
なんでトロフィーが壊れているのか?
1つも答えが分からない。
しかし、とりあえず詳しい状況を把握しなければならないことに変わりはなく、俺は目の前にいる義妹に尋ねることにした。
そして口を開こうとした瞬間、
「ごめんなさい……」
先に口を開いたのは義妹の方だった。
思わず開こうととしていた口を閉じる。
そしてごめんなさいという言葉を脳内で反芻する。
この状況は義妹が作ったもので間違いないようだ。
しかしまだ詳細も把握していないのに、頭ごなしに怒ることもできない。
だから俺は床に座り、義妹と同じ目線になるようにする。
そして、
「とりあえず、ゆっくりで良いから何があったか教えてもらえないかな?」
そう義妹に問いかけた。
そして少し経ち、義妹はぽつりぽつりと話し始めた。
どうやら義妹は俺のことが気になり、俺がいない間に部屋の物などを見ていたらしい。
そしてその際、トロフィーを破損してしまったという事らしい。
俺のことが気になると言うのは当たり前のことだろう。
突然今まで知らなかった赤の他人と兄妹になったのだ。
そんな相手のことを知りたいと思う気持ちはあって当然、もちろん俺も目の前の義妹のことをもっと知りたいと思ってる。
まぁ顔面偏差値的に過度な干渉はしないべきだとは思っているけどね……。
まぁそれで部屋に忍びこんだのも許せる。
別に見られて困るものもないしね。
とはいえトロフィーに関しては「はい、そうですか」では終われない。
これは俺の努力の結晶、そしてその成果、そして俺の誇りでもある大切なものだった。
しかし初対面なのに加え、相当泣き腫らしたであろう目の前の義妹を見ると中々強く怒る気にもなれなかった。
どうしたものか、と考えていると義妹が再び話し始めた。
「虫の良い話なのは分かってます。けど、お母さんは再婚して本当に今幸せそうなんです。私はなんでもします。だから、離婚につながるようになることにはしたくないです……」
俯きながら言われたそれを聞いて俺はハッとした。
心優しい父のことである。
俺と義妹とがうまく行かなかったら、最悪離婚という選択をしかねない。
父さんは常に俺自分より俺の幸せを優先してくれる優しい人だった。俺も父さんの幸せを壊したくない。
そして、父さんの様な優しい人になりたいとずっと思っていたことを思い出した。
そしたら、今の状況がなんだか簡単で単純なことに思えてきた。
俺は目の前の義妹の頭に手を伸ばす。
叩かれるとでも思ったのか、
義妹は目をキュッと瞑り、そして身体を縮ませる。
しかしその場から逃げず、甘んじて受け入れるつもりらしい。
それを見て改めて強い覚悟を決めていたんだなと理解した。
そして俺は義妹の頭をぽんぽんと優しく撫でた。
叩かれなかったことにびっくりしたのか、驚いた顔で見上げてきた。
その目を見返しながら俺は口を開いた。
「今回のことは許すよ。けどその代わりに1つお願いがあるんだ」
ゴクリ、と俺を緊張した目で見つめる義妹。なんだか可愛いな、なんて場違いなことを思いながら俺は告げた。
「俺と家族になってほしいんだ」
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