第10話
俺は公園で1時間半ほど練習した。
今日はストレッチをした後、ランニング、そして最後にボールを使った練習だ。
もうあと数日で新しい高校に編入、そしてなるべく早くサッカー部に入るつもりなのでパフォーマンスの調整に専念する。
ガッツリ練習しすぎて怪我したら元も子もない。
明和高校のサッカー部は県の中でも中堅以上の実力があるとされている。
サッカー部は新設されてまだ5年という短い時間しか経っていないが、決して侮ることの出来ないポテンシャルを秘めているというのが俺の感想だ。
私立ということで設備の充実も期待でき、正直に言ってかなり楽しみである。
そんなことを考えながら俺は軽いランニングをしながら帰路に着く。
今晩の料理は春乃さんが作るのだろうか?
普段は自分か父が作る料理、それか外食しか食べないので、誰かの作る"家庭の味"というのをよく知らない。
今まであまり無かった夕飯が楽しみという感情を嬉しく思いながら走っていると、気が付けば家に着いていた。
「ただいまー」
「「おかえり〜」」
今までは父の出迎えだけだった。
しかし今では家族も増え、その出迎えの声も増していた。
再婚によって救われたのは父だと思っていたが、案の定他人より家族愛に飢えていたのは自分だったのかもしれない。
心が温かくなるのを感じた。
「もうちょっとで夕食だから汗を流して来なさい」
父からそう声をかけられたので俺はその言葉に甘えることにした。
今までシャワーや風呂の後は家に男しかいなかったので、タオルを腰に巻いただけで出る事が多かった。
しかし、今はこれまでとは違う状況下にある。
しっかり着替えを用意しないと。
そう思い、俺は自分の部屋に向かった。
そして扉を開けた俺の目に飛び込んできたのは、涙を流す義妹と、胸に抱えられたトロフィー、そして床に落ちているトロフィーの先端部分であった。
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