第8話
私、瀧本夏帆はシングルマザーの家庭で育った。
幼い頃に両親が離婚、そして母についていくことになったのだが、当時3歳だった私がそんな事が分かるはずもなかった。
突然父と会えなくなって寂しかった事だけは漠然と覚えている。
しかし、成長するにつれてそのことを理解した。
そしてそれと同時に母への感謝の念も深まった。
父は私が生まれた頃から豹変したらしく、DV夫になり、母への暴言や暴力が始まったそうだ。
そんな父から私を守るために離婚を選択、その後は私を祖父母に預けたりしながら、自分は身を粉にして働いてくれた。
そのおかげで今の私がある。
そんな母が見つけた素敵な再婚相手、そんな人なのだから私が祝福しないはずがない。
しかし、私には気になってしまう事があった。
それは同い年の義兄ができるという事、そしてその義兄も私と一緒の高校に通うという事である。
私も年頃の女の子であり、やはり色々と気になってしまうのは仕方ないだろう。
私は客観的に見て容姿は優れている方である。
告白された回数は余裕で2桁を超えるし、モデルのスカウトをされたこともある。
自分でも綺麗になり、それを維持する努力を欠かした事は無いつもりだ。
しかし可愛いということは全てがプラスにはたらくわけでは無いということ、そのことを人よりも知っている。
顔や胸などの身体を邪な目で見られる事は避けられない。
純粋に義兄に対する興味はある。
先に写真を見せてもらい、顔を知っているという母からは
「夏帆も会ったら驚くと思うわ〜」
とだけ言われていた。
会っただけで驚くってどういう事?
もしかしてテレビに出るような有名人ってこと?
色々考えたがやはり分からなかった。
そして興味もあれば不安も存在している。
義兄とは今後一緒に暮らすことになるのだ。
クラスメイトの男子などとは距離が違いすぎる。
そんな義兄からそういう目で見られたら、さらに手を出してきたらどうしよう……。
期待と不安に押し潰されそうだった。
そしてついに対面の日がやって来た。
リビングのテーブルに座っていた私は、部屋に入って来たこれから義兄になる男の子をみて開いた口が塞がらなかった。
「(えっ?何このレベチのイケメン???)」
今までイケメンと呼ばれる人はたくさん見て来た。
学校の女子たちが「〇〇君カッコいいよね〜」と噂する男子、テレビ越しではあるがアイドルなど。
確かにそういう人たちは顔は整っていると思う。
しかし今まで、本当に超カッコいい!みたいな感情になったことはなかった。
これもちょっとした異性への忌避感があるからかもしれないが。
しかし、今私の目の前にいるイケメンは格が違ったのだ。
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