第5話
父さんの運転する車が停まった。
「慎二、着いたぞ」
車から降り、目の前の家を見上げる。
黒を基調とし、各所の白色の線がアクセントになっている。
汚れは見えず、新築特有の綺麗さのようなものがしっかりとある。
再婚をしたということ、即ち一緒に暮らすということである。
しかし今の家も、新しい母と妹がもともと住んでいた家も4人で暮らすには狭かった。
そんなわけで新しい家を購入する事にしたそうだ。
そしてこの家には既に昨日から新しい母さんと妹が暮らし始めている。
引っ越しの日が被ると荷物の搬入など、ややこしくなると考えたためだそうだ。
つまり玄関を開けたらご対面というわけだ。
そう考えると心臓がバクバクし始めた。
少し深呼吸して落ち着…
ピンポーン
あ、父さんがインターホン押しやがった。
「はーい」
落ち着いた女性の声が聞こえてくる。
そして少し時間が経って扉が開いた。
「誠二さん、そして君が慎二くんね。とりあえずしっかりした挨拶は上がっててからにしませんか?」
「そうだね、春乃さん。じゃあ入ろうかな。」
春乃さんは39歳らしいが、見た目はかなり若く見える。
あくまで俺の意見だが30歳と言っても全然疑われないと思うレベルである。
優しく、落ち着いた綺麗な大人の女性という
印象である。
この人が新しいお母さんか、ということを漠然と思いながら俺は春乃さんの案内で父さんと家へ入った。
玄関からリビングへの扉を開けると、そこにある4人掛けのテーブルに一人の女の子が座っていた。
そしてその顔を見た瞬間、俺はあまりの衝撃に言葉を失った。
まぁ、元よりなんも喋ってないんですけど…
肩あたりまで伸びた綺麗な明るめの茶髪、小さな顔に大きな目、そして小ぶりで綺麗な唇。
滅多に見ない、テレビのアイドル達に匹敵しうる美少女がそこにいた。
「(えっ?こんな可愛い子が今日から家族になって一緒に暮らすの?)」
そう考える嬉しいような、緊張するような、そんな気持ちになった。
しかし、それは仕方ないだろう。
俺だって年頃の男の子なのだ。
とはいえ、俺の顔面偏差値は30くらいなもんである。
そんなやつが急に兄になるというのは、彼女からしたら嬉しいことでは無いはずだ。
つまり、俺に求められるのは両親に心配されないよう険悪にならないこと。
そしてあまりこちらから会話などをしない方が良いだろう。
自己紹介が始まるであろうタイミングの前、すでに俺はそんな事を考えたりしていた。
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