第3話

高校は家の近所、偏差値はボチボチな公立高校に入学した。

狙おうと思えばもっと上の高校も狙えたと思うが、俺はここを選ぶ理由があった。

それは俺の家庭とも関係してくる。


俺の家庭はは俗に言うシングルファザーというやつである。

母は俺を産んだ時に天に召されたらしい。

そこからというもの、俺は父さんに多くの時間と愛を注がれて育った。

母がいないことは寂しくもあるが、俺は決して不幸ではなかった。

その理由は人として良くできた父さんのおかげである。


愛する妻は俺が原因となって亡くなったようなものである。

それでも決して俺に当たらず、失意のどん底であるはずなのに俺をここまで1人で育て上げた。

お金を置いといて「これでご飯を買って食べて」みたいなことはせず、毎日食事と弁当も作ってくれた。

学校の保護者参観の日や運動会などは見にきてくれたし、俺との時間を作るために仕事もリモートに変えた。

休日は遊びにも連れて行ってくれた。

これが今の俺を作った自慢の父親、風間誠二である。


さて、話を戻そうと思う。

俺が今の高校に決めた理由についてである。

今話した通り、俺はシングルファザーの家庭である。

もし雨が降ったりしたら過保護な父は遠い高校だとしても「送っていくよ」とか言いかねない。

今まで散々迷惑をかけてきたのだ。

少しは楽にさせてあげたかった。


また、ここの高校は実はサッカーのかなりの強豪校でもある。

この県の国公立の高校の中では恐らくトップ3に入るほどである。

俺は趣味がサッカーなサッカー少年?である。

そのことを踏まえても俺はこの高校選択に後悔は全く無い。







高校に入って2ヶ月ほど経った。

俺はサッカー部に入り、今は毎日がっつり練習に明け暮れている。

さすが強豪校と言わざるを得ない。

毎日結構充実していた。

そんなある日の夕食の時のことであった。

いつも通り父さんと食事をしていたのだが、その日の父さんはいつにもまして真剣な顔をしていた。

そして食事がひと段落したころ、父さんはゆっくり口を開いた。


「なぁ、慎二。父さん再婚しようと思うんだ。だけどもしそうなった場合には引っ越すことになるんだ。結構距離があるから慎二は転校しなきゃいけなくなる。だから納得できないなら正直に、お前の本心を教えてくれ。俺にとって最も大事なのはお前だからな。」


久しぶりに見た父の真剣な顔、話に俺は居住まいを正す。

再婚という話題、俺は薄々察していた。

最近の父は休日にちょこちょこ出掛けたり、誰かと楽しそうに電話していた。

あぁ、なるほどなと1人で納得した。

そして俺の心は一瞬で決まった。


「俺は父さんに沢山幸せにしてもらったよ。だから今度は父さんが幸せになる番じゃない?」


すると父さんは目尻を抑え、席から立ち上がり俺の肩に手を回した。

だから俺は優しく背中をさすってあげる。

俺のことを何より考える父さんの好きになった人である。

絶対に良い人に違いないだろう。

転校を残念と思う気持ちは少なからずある。

サッカー部ではレギュラーチームに選ばれたばかりでもあった。

しかし、それ以上に父さんには幸せになって貰いたかった。

俺以外に父さんを支えてあげられる人が増えて欲しかった。

だから俺の選択に後悔はなかった。


「ねぇ、父さん。転校はいつ頃?」


「順当に行けば2週間後くらいかな」


「次の高校はどうしよう?」


「引越し先の近くの私立高校、明和高校に編入出来ることになってる。実は父さんの再婚相手は瀧本春乃さんと言うんだが、そのお父様が高校の理事長らしいんだ」


完全なるコネ入学である。

それにしても俺の新しい母さんは春乃さんというらしい。

果たしてどんな人なんだろう。

そう考えているとき、父さんから爆弾発言が降ってきた。


「あ、そういえば言い忘れてたんだが、お前に同い年だが妹が出来るぞ」



えっ……なんて……??

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