第2話
「30が妥当なとこじゃない?」
「え?」
俺は聞き返さずにはいられなかった。
60ではなく30!?
この従姉妹は基本的に冗談なんか口にしないタイプである。
「嘘だよ」と言ってくれることを願って顔を見るものの、気まずそうに俺から視線を背けられる。
その瞬間、俺はこれが事実なのだと理解してしまった。
自分は結構イケてると思ってたのだ。
女の子の友達は結構いるし、バレンタインも皆んな義理チョコとはいえある程度貰ってた。
よく顔を見られるし、これはモテなのだと今までは思っていた。
しかしそれらは自身にとって都合の良い妄想でしか無かったのである。
俺の顔面偏差値は30。
これはもはやブ男だと確実に断言できるレベルであることに間違いない。
今まで絡んでくれた人たちは顔の美醜に縛られない優しい人たちだったのか…。
今の心情としては悲しみ7割、驚き3割といったところであろうか。
この世界は自分の考えていた以上にルックスに対して寛容なのかもしれない。
顔面偏差値30という恋愛などにおけるとてつもないハンデはあるが、生きていくことは出来るだろう。
辛くもあるが、そう考えると少しは心が楽になった。
顔以外でほかの人と勝負出来るものが無いわけではない。
俺はサッカーが人以上に得意だし、性格は悪くないと思う。
そういったところを磨いていこうと心に誓った。
とまぁこれが中学時代、俺のそれからを大きく変えることになるきっかけの顛末である。
そして時は流れ、俺は高校生になった。
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