第186話 決戦


 アレスターたちと無事合流し、俺はアイヴェツリークの身に起きたことを説明した。

 すると、エスレは子供のように泣き崩れた。


「そんな……お父さん……!」

「エスレ……すまない……」


 しばらくエスレを思うままに泣かせてやる。

 しかしエスレはすぐに立ち上がり、俺にこう言った。


「ロインさん、お願い……父の仇を討って……!」

「ああ、もちろんだ……!」


 俺はさっそく、魔王を倒しに行こうと思う。


「よし、じゃあみんなで魔王を倒しにいこう! アイヴェツリークの家に、ゲートがあるはずだ」

「私が案内します」

「頼む」


 ということで、俺たち4人は再びアイヴェツリークの家にやってきた。

 アイヴェツリークの家はぐちゃぐちゃにつぶれていたけど、なんとかゲートは無事なようだ。


「ここをくぐれば……ついに魔王と対決できるわけだな……」

「感慨深いね……。ついにここまで……」

「ああ、クラリス。俺をまもってくれるか? 俺も、クラリスを全力まもる!」

「もちろん!」


 俺たちは決意をかため、魔王城へと続くゲートをくぐった。



 ◆



 ゲートをくぐると、そこはもう魔王のいる部屋だった。

 魔王城直通のゲート、魔王軍幹部にだけ許された特権だ。

 ありがとうアイヴェツリーク、お前の死は決して無駄にはしない。


「ついに来たか、勇者ロインよ……!」


 すると、急にそんな地鳴りのような声がきこえてきた。

 奥から現れたのは――魔王デスマダーク。

 青紫色の肌をした、巨人のような見た目をしている。

 見た目は普通の人間とさして変わらないが、筋肉量は人間のそれを逸している。

 そして額には魔力を蓄える魔石のようなものが埋め込まれていて、頭には角が生えていた。


「お前が……魔王デスマダークだな……!」

「勇者ロインよ、私を本気で倒せる気でいるのかな? ここまでわざわざ殺されにきたようなものだ」

「黙れ……! お前の勝手はもう終わりだ! お前を倒し、人類に平和をもたらす!」


 俺は剣を構えた。

 相手は世界最強の魔王だ。最初から、手加減はいらない!


「うおおおおおお! 火炎龍剣ドラグファイアあああああ!!!!!」


 ――ズドーン!!!!


「ぐああああああああああ!!!!」


 俺の攻撃は見事に魔王に炸裂した。

 あれ、もしかして魔王って、意外と弱い……?


「ふはは、なかなかやるな、勇者ロインよ。だが、それは決して貴様自身の力ではない!」

「なに!? どういうことだ!?」

「すべて貴様の力は、装備品によるものではないか! そのステータスも、スキルも、すべてはレアアイテムによるもの!」

「……っく! だからどうしたっていうんだ!」


 確かに、俺自身は何の能力もないただの青年だった。

 あの日、追放されて、確定レアドロップの力に気づくまでは……。

 だけど、俺はこれまでこの確定レアドロップの力で、自分を高めてきたんだ。

 それが、なんだっていうんだ?

 なにか時間稼ぎでもしようというのか?


「なにが言いたいのかわからないが、容赦はしない! 死ねえええ!!!!」


 俺は再び魔王に斬りかかった。

 しかし、魔王は反撃のそぶりを見せない。

 俺の刃が魔王の眼前に迫ったころ、ようやく魔王は動きを見せた。


「こういうことだよ……! 食らえ勇者ロインよ! 禁術――ゼロレクイエム!!!!」

「なに……!? うわああああああああああ!!!!?」


 魔王の手から、なにやら閃光が発せられる。

 そして、俺はその閃光に包まれた。





===========

新連載やってます


破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します~欠損奴隷を安く買って治癒して高値で売りつけてたらめちゃくちゃ儲かってなぜか感謝までされた件


https://kakuyomu.jp/works/16817330651203017396

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る