第174話 待ち伏せ


 魔界へのゲートをくぐり、降り立った瞬間――。

 ――シュィイイイン!!!!

 ――ズドーン!!!!


「…………!?」


 無防備な俺たちをめがけて、一斉に大量の魔法が飛んできた。

 それを運よくクラリスが盾で受け止める。

 なんとか魔力障壁の展開が間に合ったな……。


「みんな、大丈夫!?」

「ああ。ありがとうクラリス」


 俺たちが立っている場所には大きなクレーターができていた。

 クラリスの魔力障壁がなければ危なかったかもしれないな。

 さらには砂ぼこりや煙で前がよく見えなくなっている。

 ここは魔界で間違いないはずだが、一体今の状況はどうなっているんだ?

 視界が開けるまでぼーっとしていると、先にアレスターが口を開いた。


「む、無理だ……」

「どうした……?」

「ろ、ロインさん……あきらめましょう……こ、これは……無理です……」


 アレスターに続いて、俺も一歩前に出て顔を上げてみる。

 すると、そこにはおびただしい数の魔族、魔物、魔獣がいた。

 俺たちが出てきたゲートを待ち構えるようにして、軍団が待機していたのだ。


 しかも、その数は先の戦争やスタンピードの比じゃない。

 魔界というのは人間界よりも広いのか、ものすごくひらけた土地に、おびただしい数が並んでいる。

 そして数だけじゃなく、異常に巨大な生物もいる。

 それこそ、人間界にはそもそも存在できないほどの巨大な魔物も遠くに見える。


「あれはいったい何体いるんだ……」


 たしかにアレスターが絶望するのも無理はない、というほどの大群。

 どこまでもどこまでも魔物の列が続いている。

 これだけの魔物が魔界にはいたなんて……。

 こいつらが一斉に人間界へやってきたら、一瞬で地上は埋まってしまうだろう。


「大丈夫だアレスター。このくらいのほうが、倒しがいがあるってもんだ」

「で、でも……」

「お前は下がって後方支援を頼む……! いくぞ、カナン、クラリス!」

「うん! ロインに続くよ!」


 俺たちはためらいもなく敵軍に突っ込んでいく。

 いくら敵が多くても、その力では俺たちに敵いはしない!

 まずはクラリスが盾で突進をして、道を開ける。

 その上をカナンが身軽に飛び回って敵を蹴散らしていく。


「えぇ……」


 アレスターはその姿にドン引きしながら腰を抜かしていた。

 俺も目に付いた敵を片っ端から倒していく。

 だが、一向に数が減らなかった。


 しょせんは有象無象の下級魔物たちだと思っていたが、どいつも思ったよりしぶとい。

 おそらく魔界の土地や空気全体が魔力を帯びているから、人間界よりも奴らのホームグラウンドだということなのだろう。

 だが……それだけじゃないはずだ。


 ふと上を見上げると、遠方の方で味方にバフをかけ続けている魔物を発見した。

 巨大な付与術師タイプの魔族か……。

 あいつからみんな魔力の供給を受けているみたいだ。


「ロイン、どうする!? 私がアイツを倒してこようか……?」


 カナンがそう言うが、危険すぎる。


「いや……こっからで十分だ!」


 俺はその場で剣を構えた。

 そう、今の俺は征魔剣=エクスカリボスを二刀流で構えている。

 この状態で――。


斬空剣エアスラッシュ――!!!!」


 いつものようにスキルを発動させ、斬撃を飛ばす!

 二刀流によってクロス型になった斬空剣エアスラッシュは、地平線の果てまでも飛んでいく!


 ――ズシャァ!!!!


 かなり遠くにいる魔物まで、斬空剣エアスラッシュの進行方向にいた魔物はほぼ全部貫いた。

 もちろん、遠くでバフをしていたやつもだ。


「すごい! 今のロインなら、斬空剣エアスラッシュでもすさまじい威力だね!」

「クラリスもすごいぞ! さっきから魔法を全部受け止めてるじゃないか!」

「えへへ……ロインのおかげだよぉ」


 よし、このままどんどん倒して行こう。

 目指すははるか先に見える魔王城だ。

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