第145話 先代勇者


「さて……じゃあさっさと残りの宿題を片付けてしまおうか」


 レジェンダリーダンジョンに戻ってきた俺は、そう言って武器を構えた。

 最後の隠しモンスター、そいつと戦い、先代勇者の最後の遺物を手に入れる。

 そして元勇者パーティーのやつらを、救ってやるんだ。


「本当に、いいんだな? ロイン」

「ああ、頼む」


 ネファレムがダンジョンを操作し、そのモンスターを解放する準備をした。

 俺たちは戦闘態勢に入ったまま、それを静かに待った。


 ――ゴゴゴゴゴゴゴ。


 地面が開き、その下に階段が見える。

 レジェンダリーダンジョンの最下層、そこからさらに階段が下に伸びている。

 そこから現れたのは、俺の想像していたようなモンスターではなかった。

 そう、見た目には、ただの人と変わりない。


「こ、こいつは……!?」


 驚く俺に、その謎の人物は告げた。


「おや……? お前が現代の勇者なのか? ふむ、似てないな……私と・・

「ど、どういうことだ……!?」


 俺はネファレムに振り向いた。

 ネファレムは、うつむいたまま、神妙な面持ちで答えた。


「レジェンダリーダンジョン最後の隠しボス……あれは……『先代勇者のクローン』だ」

「は…………?」


 クローンという言葉には、聞き覚えがない。

 だが、ネファレムがなにを言わんとしたかは、正確に伝わった。

 だって目の前のそいつは、明らかに異質な強さを持った人物だった。

 それに、どことなくあのアレスターにも似ている。


「つまり……先代勇者の残した最後の試練ってのが、これか」


 先代勇者は、自分と戦わせることで、次の勇者を鍛えようとしたのか!?

 たしかにこれまでとんでもないことをたくさん実現してきた先代勇者なら、そんな芸当も可能なのかもしれないが……。


「驚いたな……500年前の人物と戦うことになるのか……」


 まあ、その点で言えばドロシーやネファレムだって、500年前の人物ということになるが……。

 先代勇者、それはつまり、人類最強を意味する。

 そりゃあ、ネファレムが止めるわけだ。

 だけど、そんなこと関係ない。

 どのみち魔王を倒そうと思ったら、500年前の型落ち勇者くらい、倒せないと話にならないんだ。


「さあ、現代の勇者よ……! 私に力を見せてみろ!!!!」

「来るぞ……!」


 先代勇者は一気に距離を詰めてきた。

 そして、俺に向けて剣を振り下ろす――!


 クラリスが盾を構えるが、あまりにも早く、俺は避けられそうになかった。

 俺は、なんとか自分の剣でそれを受け止めようと、構えた。


 ――キン!!!!


 大きな金属音と共に、剣が折れ、宙を舞った。

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