第116話 新たなる力


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 俺は全魔力を放出して、あの男をついに倒すことができた。


「そういえば……名前すらも聞かなかったな……」


 まあ、あんな男は名前すらも覚えておく価値もないだろう。


「ロイン! 大丈夫……!?」


 魔力を使い切って、消耗しうなだれる俺に、クラリスとカナンが駆け寄ってくる。

 二人は力なく座り込む俺に、肩を貸してくれた。


「ああ、大丈夫だ。これでもう安心だな」


「ロイン、本当にすごい! あれだけ強かった敵をほんとに倒しちゃうなんてね」


「まあ、クラリスとカナンのおかげでもあるよ。サイハテ装備を手に入れられたのも、二人のおかげだよ」


「いや、私たちはなにもしてないぞ?」「そうだよ、ロインの力だよ!」


「はは……まあ今回もなんとかなってよかった」


 だが今回も、たった一人の刺客を倒しただけだ。

 まだまだ魔界からの攻撃は今後も続くだろう。

 元凶をたたねばならない。

 だが俺たちにある手掛かりは魔界四天王ガストロンの名前くらいしかない。

 今できることは、さらなる強化をして、さらなる強敵に備えることくらいだ。

 まあ、今回のサイハテ装備で当分は敵なしだろうがな……。


「そうだ、ドロップアイテムだ……」


 人間からドロップアイテムが出るかは微妙なところだが、かつて勇者からもドロップアイテムが出たことからも、今回もなにかあるに違いないと思ったのだ。


「こ、これは……!?」



《転生者の加護石》

レア度★∞

ドロップ率 不可

・説明 

本来この世界に存在しないアイテム。使用者に一度きりの加護を授ける。



「これは……転生者の加護だって……!?」


 そういえば、やつはそんなことを言っていたな。

 転生者というのは本当だったらしい。

 勇者を倒せば勇者の加護が得られ、転生者を倒せば転生者の加護を得られる、単純な話だ。


「これを使えば俺も……」


「ねえロイン、さっそく使ってみましょうよ」


「いいのかクラリス。俺が使っても」


「あたりまえじゃない。これはロインが手に入れたものでしょ」


「そうだな。よし……わかった」


 俺はさっそく、その転生者の加護石を使ってみることにした。

 転生者の加護は、やつと戦った経験からもわかるとおり、かなり強力なものだ。

 この俺の能力をもってしてさえ、かなりの苦戦を強いられてしまった。

 だがそんな力も、俺のものとしてしまえるのならば、強力な武器になる。

 これからさらに戦闘が過酷になっていくと考えれば、この加護は非常にありがたい。

 勇者の加護と転生者の加護を両方手に入れ、さらに俺のもともとのレアドロップ能力があれば、まさに敵なしというわけだ。


「よし、加護石よ! 我に加護を与えたまえ!」


 俺は胸に加護石をかかげ、祈った。

 すると、加護石をはぱあっと光り輝き、俺のなかにあたたかな力がみなぎる。

 そしてしばらくすると、加護石は効力を失ったかのように輝きを失った。


「これで……いいのかな……?」


 俺は確認のため、ステータスを見てみることにした。



――――――――――――――――

ロイン・キャンベラス(装備)

17歳 男 

レベル 1

ジョブ 勇者

攻撃力 9999(+34M)

防御力 9999(+34M)

魔力  9999(+34M)

知能  9999(+34M)

敏捷  9999(+34M)

魅力  9999(+34M)

運   2M★(+34M)

◆スキル一覧

・確定レアドロップ改

・限界突破無限成長

――――――――――――――――



「は……? レベル……? だと……?」


 俺のステータスには、レベルという新しい項目ができていた。

 そういえば、やつがレベル800だとか言っていたな。

 どうやらこのレベルとかいうやつは、転生者の加護由来のものだったらしい。

 それにしても、俺のレベルが1と書いてあるということは……。

 

 やつの言いぶりからして、レベルというのは数値が大きければいいのだろう。

 ステータスと同じわけだ。

 そして俺の予想では、このレベルというのが増えれば、その分強くなれるはずだ。

 俺の今のレベルが1ということは……これが800までいくと一体どうなってしまうんだ……?


 やつは上位装備など関係なく、ステータスが6万もあったわけだし……。

 俺もこのレベルを上げれば、素のステータスでカンスト突破もできる気がする。

 そうなれば、セット装備とあわせてどこまでいけるのか楽しみでもあるな。


「はは……これはまた、楽しみが増えたぞ……!」


「そうね……! ロインはどこまでも強くなるわね……!」


「くそー! 私も負けてらんない! もっとロインの役に立てるように頑張らないと!」


「二人とも、これからもよろしくな!」


「「もちろん!」」


 そして俺たちは、アルトヴェールへ帰還することにした。

 思えば長い戦いだった。

 サイハテダンジョンで過ごした時間も考えれば、もうずいぶんとアルトヴェールへは帰っていない気がする。


「よし、転移!」


 疲れた体を、温泉で癒したいなぁ……。

 そんなことを考えながら、俺は愛しの我が家へ帰還する。

 そして、ようやくゆっくりと腰を落ち着け、ふと考えた。


「あれ……? このレベルってどうやって上げるんだろうか……?」


 まだまだこの世界は謎ばかりだ。

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