第113話 セット装備


 サイハテダンジョンに再びやってきた俺たちは、どんどん階層を進んでいく。

 さっきまでとは違って、今度はスムーズにクリアしていくことができた。


「うおおおおおおおおお!!!!」


 ――ズドーン!


《ドロップアイテム》

《ドロップアイテム》

《ドロップアイテム》


 倒してはドロップアイテムを得る、それを繰り返して、どんどん進む。

 外の時間は止まっているので、遠慮なく時間を使うことができた。

 だが一刻も早く、あの男を倒したいという気持ちはあった。


「ロイン、そろそろ一回休憩したら……?」


「だめだ、カナン。俺は今すぐにでもあいつと戦いたいんだ……!」


 そうやって、次々にボスを倒して、ダンジョンを進んでいく。

 途中で何度も装備を入れ替えるが、それでも俺の満足する強さにはならなかった。


「まだだ……! まだ! こんなんではやられてしまう!」


 あの男に勝つためには、もっと強力な武器と防具が必要だ。

 それだけあいつのステータスは規格外だった。

 いったいどういう仕組みでそうなっているのかは見当もつかないが……。

 きっとやつの言っていたレベル800とかいうのが関係しているのだろうとは思うが……。

 レベル800がどのくらいの強さなのかは知らないが、今のままのステータスではとてもかなわないだろうことは確かだった。


「念のため、もっとステータスを上げたい……!」


「ロイン……ちょっと頑張りすぎよ……」


 クラリスにも心配されるが、それどころではない。

 あいつがどうやってあそこまでステータスを高めたのかはわからない。

 だが少なくとも、俺たちがあそこまでステータスを上げるには、上位装備を装備して、ステータスをあげていくしかなかった。

 上位用のステータスの種でも見つかれば話は別だが、今のところそういったアイテムも発見できていない。


「くそ……! こんな武器や防具じゃ、全然だめだ……!」


 今までに手に入れた装備を見てみる。

 だがどれもこれも、ステータスアップ数値が2万にも届かないようなものばかりだ。

 これでも今までを考えれば、十分規格外なのだが。

 あの転生者を殺すにはこれでも足りないような気がしていた。


「レベル800と言っていたが……そのステータスを仮に各5万と仮定しても……これじゃ全然届かない」


 あくまで数値は、戦ってみての想像でしかない。

 それに、やつはまだ奥の手を隠しているかもしれない。

 だから理想を言えば、ステータスはいくら高めておいても損はない。

 今度は不死鳥の首飾りもないことだし、絶対にまけるわけにはいかないのだ。

 俺たちはやつのステータスを確実に超えたと実感できるまで、このダンジョンから出るわけにいかない。


 そんな苦しい戦いを強いられていた俺たちだったが――。


 ダンジョンに潜り始めて、体感では数年が経過していた。

 外の時間は止まっているため、時間の感覚が麻痺してしまっている。

 どういうわけか、その間、俺たちは歳をとらなかったし、お腹が減ったりもしなかった。

 そのため、いくらでもダンジョンに潜り続けることはできた。

 だがさすがに、俺もクラリスたちも、うんざりしてきていたところだった。


「うおおおおおおおおお!!!!」


 第1700階層のボスを倒したときだ。

 これまでに手に入れた武器や防具で、俺たちのステータスは3万を超えていた。

 だがここらでまた頭打ちを感じていた。

 そのとき、今までには見たことないタイプの防具がドロップアイテムとして手に入った。


「これは……なんだ……!?」



《サイハテの籠手》

★???

説明 サイハテセット1/7

防御+34000

◆セット効果

追加で全ステータスに10倍ボーナス



「セット装備……!?」


 これはいったいどういうものなのだろうか。

 説明を見る限りでは、この防具にはほかにも種類があるようだった。

 今までは名前の違う防具を各部位に装備していた。

 だが、シリーズ防具は、店に売っていたりするものの中にもある。

 それらを装備しても、こんなふうにセットでの効果を発揮するようなものはない。

 セット装備――セットの防具を全部そろえることで、初めてその真価を発揮する、そういう防具が、仮にあるのだとしたら……。


「これはそろえるしかなさそうだな……!」


 これをそろえることさえできれば、ステータスに10倍のボーナスが付く。

 そうすればさすがに、あの転生者を倒すこともできるだろう。


「でもロイン、これって……1/7っていうことは……あと6つもあるのよね……?」


「ああ、そうだな。でも……集めるしかないだろう? 俺のスキルなら、それができる」


「そうね……! 先に進みましょう……!」


 クラリスも期待を持った目で防具を見た。

 ここまでやってきて、ようやく出たセット装備、それがまだ1つしかない。

 これを7つすべて集めようと思ったら、いったいどれだけの確立になるのだろうか。

 だがそれも、俺のスキルを使えば、こうやってなんとか攻略できる。

 奇跡にも近いようなレア装備を、そろえることができるかもしれない……!


「よし……! やる気がでてきたぞ……!」


 なんとかやつに勝てるかもしれないという希望をみつけ、俺たちは気をとりなおしてダンジョンの先を進んだ。

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