第95話 大盤振る舞い
今までのレアドロップアイテムの上位互換ともいえる、上位アイテムが出てきたことによって、俺たちは倉庫の中に余った素材の使い道に悩んでいた。
もちろん、装備品などに使ったりも、まだまだできる。
今のところ、上位素材は、俺が一個ずつ集めてこないといけないからな。
だが、それでも下位素材は腐るほどあった。
というのも、以前のモンスター大量発生のせいだ。
「これをなんとか有効活用できればいいが……そうだ!」
今回の話は、俺のそんな思い付きから始まる。
◇
アルトヴェール領は、俺たちの活躍もあって、ミルグラウス帝国の王――ケインから国として運営することを許された。
だが、アルトヴェールはまだまだこれからの国だ。
まだ辺境の小国に過ぎない。
ケインの後ろだてがあっても、それをよく思わないものもいる。
それもそんなぽっと出の小国に、とんでもない軍事力があるのだから、恐れるものも多い。
俺のレアアイテムのせいで、この国の軍事力と資源力はとてつもない大国レベルだ。
「よし、余ったこの素材を、周りの国に配ろう!」
俺はそんなことをかんがえついた。
「さすがロインさん! それなら、周りの国からの反感を抑えられるかもですね!」
とサリナさんもお墨付きだ。
俺たちとしては、国の戦闘員全員分の装備を作っても、なお余りある素材なのだ。
もはやレアアイテムのほうがそこらのくずアイテムよりも多く在庫がある始末。
それならば、レアアイテムを持っていない周辺の国にプレゼントでもしたほうがよいだろう。
それに、これはなにも単なる慈善事業ではない。
周辺の国にも力をつけてもらうことで、魔物たちと戦いやすくするためだ。
なるべく多くの冒険者に、アルトヴェールに来てもらいたいからな。
そのためには、ほかの国の冒険者にも力をつけてもらわないとならない。
魔王軍との戦いだけではなく、普段のクエストなんかもこなさないとならないから、冒険者は強ければ強いほどいいのだ。
俺のせいで他国が手薄になったら困るからな。
冒険者たちは、そこに住んでいる人たちの日々の暮らしの安全を守るのも仕事なのだ。
それに、万が一にも俺のいない場所に魔界の門が開かないとも限らない。
これは人間対魔族の戦いなのだから、くだらない派閥争いをしている場合ではないのだ。
俺はそのことを、ケインにも伝えることにした。
ついでに、ケイン王にも手土産として、大量のレアアイテムを持っていく。
ミルグラウス帝国は俺たちアルトヴェール王国の宗主国でもあり、いろいろとお世話になった国だ。
ミレージュの町にも思い入れがあるからな。
ケインには特別たくさんのレアアイテムを送ることにしよう。
◇
「おお、ロイン……こんなにもらってしまっていいのか……!」
俺がレアアイテムが大量に入ったアイテムボックスを渡すと、ケインは大喜びで王座から立ち上がった。
「当然だ。俺たちは友好国じゃないか」
「ありがたく頂戴する。これで我が国も軍備をかなり増強できる!」
俺としても、ミレージュの発展につながってうれしい限りだ。
これで少しはこの気前のよいケイン王に恩返しができただろうか。
俺をれっきとした王国指名勇者にしたのもケインだし、アルトヴェールを与えてくれたのもケインだ。
俺としては、その恩になるべく報いたいと思っていた。
「それにしても、ロインは本当に無欲だな……」
「え? そうか……?」
それを言うなら、ケインもかなり俺にいろいろと与えてくれているから、人のことは言えないと思うがな……。
「他国に資材のほとんどを配るっていうんだろう?」
「ああ……まあな」
「そんなこと、他の王では考えもしないだろうさ」
「まあ、俺にはもう必要のないものだからな」
「はっは、その謙虚さと無頓着さが、君を大物たらしめるんだろうな!」
ケインはそういうが、俺はただ事実を言ったまでだ。
俺にとっては今は、上位素材だけが魅力的なのだった。
◇
ちなみに、どうやら上位アイテムと下位アイテムでは、根本的に倒したモンスターに対応する素材が違うらしい。
どういうことか。
デスフラワーを倒しても、ステータスの種は手に入らなかった。
厳密にいえば、手には入るのだが、今まで通りのステータスの種でしかないのだ。
なので、俺たちのステータスはこれ以上上がらない。
当分のところは、上位の装備品を使ってステータスを強化していくしかなさそうだ。
これは、きっと上位のステータスの種を落とすモンスターが、別に存在するのだろう。
スキルメイジも、スキルブックを落とすのだが、その内容は今までとさして変わらなかった。
上位スキルを落とすモンスターが、別に存在しているのだろうか……?
とにかくこの世界にはまだまだ謎がいっぱいだった。
――続く。
――――――――――――
あとがき
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大幅加筆による新しいエピソード盛りだくさんなので、ぜひ買っていただけると嬉しいです!
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