第94話 国
※最初だけ三人称視点
アルトヴェール領が存在する国、ミルグラウス帝国。
大陸の約半分を占める、超巨大な国だ。
ミレージュの街も、そこに位置する。
王都ミルグレモンを除けば、ミレージュが最大都市だった。
だが、ロインの活躍もあって、アルトヴェールもかなりの大きな街となってきていた。
ロインにそのアルトヴェールを授けた張本人、王――ケイン・ヴォルグラウスは考える。
「ふむ……アルトヴェール領……少々大きくなりすぎたな……。これは、私の思っていた以上のことだ」
「っは……! 陛下……どうなされますか……!」
「そうだな……ロインをもう一度城に呼んでくれ。私から話をする」
「かしこまりました!」
ケインはアルトヴェール領に、使いを出した。
そして、ロインは再び、城へと招かれることになったのだった。
◇
【ロイン視点】
「うーん、ケイン王からまた呼び出されるなんて……俺、またなにかやっちゃったのか?」
俺は内心、不安になってしまう。
今回のモンスター大量討伐があったからだろうか。
かなり目立ってしまったようだ。
王っていうのは、権力にうるさいからな……。
いつでも反乱を恐れているというし……。
もしかして俺、領地を取り上げられたりするのかな……?
それとも、なにかの罪を着せられたり?
「きっと大丈夫ですよ。ロインさんは、頑張っていましたから! なにかまた、ご褒美をもらえるんではないでしょうか……?」
とサリナさんが俺の不安を察して、そう言った。
「うーん、そうだといいけど……」
上位アイテムを集めに行きたいところだったが、王からの呼び出しとなれば、すぐに答えないわけにはいかない。
俺はさっそく、王城へ転移した。
◇
「おお、ロイン……久しぶりだな……よく来てくれた」
ケイン王は、俺を快く迎えてくれた。
あれ……俺の警戒のし過ぎだったかな?
とりあえず、握手をする。
「久しぶり、ケイン。それで……今回は何のようだ……?」
俺はケインに友人として接する。
前に領地をもらったときに、そうしてくれと言われていたからだ。
それなのに……。
ケインの横にいた従者が、俺を見て怒り出した。
「キサマ……! 勇者だかなんだか知らんが、王に向かってなんだその態度は……!」
「は…………?」
どうやらこの部下は、空気が読めないらしいな……。
俺とケインの関係を察することもできないらしい。
というか、王の従者ならそのくらい知っていてもらいたいところだが……。
どうやらケインも俺と同じ思いのようで。
ケインは従者に対して、大目玉を喰らわせた。
「キサマ……! わきまえるのはキサマのほうだ……! ロインは私の友人であり、客だぞ!」
「し、しかし……」
「ええい! いいわけをするな……! お前はクビだ……! おい、誰かこの教育の行き届いていない不届き者を、城から追い出せ!」
「そ、そんな……!」
へまをした従者は、ほかの兵士たちに連行されていった。
「すまない、ロイン。不快な思いをさせてしまったな。いや、臣下の教育がなっていなくて恥ずかしい限りだ。申し訳ない」
ケインは王であるにもかかわらず、俺に誠意を込めて頭を下げた。
しかし、俺とて、そのくらいで怒るような人間ではない。
「いやいや、頭をあげてくれ。俺なら平気だから、あの従者にはあとでもう一度チャンスをやってくれ」
「そうか……? ロインは優しいんだな……。さすがは勇者だ。私よりよっぽど王の器にふさわしい」
ケインは過剰に俺を持ち上げた。
これは……なにかあるな、とさすがの俺も察する。
「それで……今日はなんの用なんだ……?」
さっそく、本題を切り出す。
ケインはゆっくりと口を開いた。
「ロイン、君に任せたアルトヴェール領は、かなり発展していると聞いている」
「ああ、おかげ様で……」
「そこでだ……君のアルトヴェール領を、国として独立させてみないか……?」
「え…………? いいのか……?」
「ああ、もちろんだよ。そのほうが魔王軍に対抗するにも有利に働くだろう。自分の国のほうが、なにかと動かしやすいだろう……?」
「ああ……助かるよ」
ケインはなんと太っ腹な王なんだ。
俺に領地を与えただけでなく、国としての独立にも手を貸してくれるという。
「もちろん、支援は変わらずにさせてもらうよ。それに、独立してお互いに国の王となったほうが、いろいろ楽しいだろう? なに、わが国にもメリットのある話だ。協力して、国を大きくしていこうじゃないか……!」
「ああ、もちろんだ……!」
俺たちは固く握手を交わした。
てなわけで、俺は急遽としてアルトヴェール王国の王となったわけだが……。
俺のやることは変わらない。
俺は魔王軍と戦って、最強のアイテムを集めるだけだ。
それに、他の国もみんな、魔王軍に怯えているからな。
今はまだ、人間同士で戦争なんかしていられる時代ではない。
だから、俺は国として独立しても、他の国と連携して、助け合っていくつもりだ。
まあ、それは向こうから攻めてこなければの話だが……。
ケイン王と、大国ミルグラウス帝国が後ろだてとなっているから、まあ、アルトヴェールを攻めてくるような馬鹿な国はそうそうないだろうが……。
念のためだ、国力は大きいに越したことはない。
俺はそのためにも、一段と責任感を強めて、さらにアイテム集めに邁進しようと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます