第93話 上位アイテム


 ステータス上限を突破した俺は、その効果を確かめるために草原へやってきた。

 ちょうど俺が、最初にスライムを倒したあの草原だ。

 まずは試しに、素手でスライムの一匹でも倒してみるとするか。

 そうすれば、【確定レアドロップ改】の効果がわかるだろう。

 【上位素材】というのがなんなのかも、確かめる必要がある。


「うおおおおおおおおおお!!」

「ピギィ……!?」


 ――ズシャァ!!!!


 俺は正面からスライムに駆け寄り、一撃で倒す。

 クリティカルヒットのようだ。

 俺は剣を装備していないから、これが運10000の効果だったりするのかな。


 もはやスライムなんて、逃げられることもないし、反撃されることもない。

 さてさて、どんなドロップアイテムが落ちたのかな。

 久しぶりに、レアドロップアイテムが一つだけになった。

 正直、たくさんドロップアイテムが出てくるのは便利だが、集めるのが面倒でもあったからな。

 強いレアドロップアイテム一つが出てくるほうが、俺は楽でいい。



《神秘の粘石ねんせき

レア度 ★100

ドロップ率 0.05%(上位限定)

説明 魔力をまとった不思議な素材

   柔らかい素材だが、強度もすさまじい



「おお……!? なんだこれ……上位限定ってことは……普通にはドロップすらしないってことか……!?」


 なるほど、確かに今までスライムからこんなアイテムは出てこなかった。

 スキルが進化したことで、こうやって隠しレアが出るようになったというわけか。

 今までに倒したことのあるモンスターも、積極的に倒していきたいな。

 それにしても、見たことのない素材だが……。

 これもガントレット兄弟に預けてみるか。


 しかし、まだ運のステータス10000になったことの効果はよくわからないままだ。

 こんどカジノにでも行ってみるか……。

 まあ、それよりも、はやくこの素材をガントレット兄弟に持っていこう。



 というわけで、俺は工房へやってきた。


「おう、ロイン。また珍しい素材を持ってきて……って……!? な、なんだこれ!?」

「どうかしたのか……?」

「ああ、この素材は今までのとは明らかに質が違う……!」


 ドレッドは驚いて言った。


「いいか、今までの素材の一番いいものが、すべて陳腐化するくらいの代物だぞこれは! こんなもの……まさに規格外というやつだ」

「なにがどう違うんだ……?」


「これは魔力の伝導率も桁違いだし、物質としての密度が違う! これを使えば、今までの剣をすべて過去にするものが作れるぞ!」

「ま、まじか……!」


 ドレッドの話をまとめると、この上位素材というのは、どんな素材であっても、今までの素材(下位素材)と比べてあらゆる点で優れているということだった。

 じゃあ、今まで集めてきた素材が陳腐化したってことなのか……。

 まあ、だったらそれならそれで、また集めるだけだ。



 そして、数日して、俺は工房に呼び出された。

 以前から頼んでいた、剣が完成したのだ。


「おうロイン……! 今までのモンスター素材に加えて、今回の上位素材を混ぜてみた。これは現存する中で最強の剣だぜ!」

「そうか……! 楽しみだ……! っていうことは……邪剣ダークソウルよりも強いのか……?」

「ああ、もちろんだ!」



《スライムソード改》

★150

攻撃力 +6700



 俺は剣を受け取った。

 しかし……。

 俺はあることを失念していたことに気づく。


「あ…………」

「どうかしたのか……?」


「その……俺はステータスがカンストしている。みんなもだ」


 ステータスっていうのは、9999が限界値だと思っていた。

 まあ、俺の運のステータスは例外みたいだったが……。

 とにかく、もしかしたら、この剣を装備しても俺はステータスがこれ以上上がらないから、意味がないんじゃないかと思うのだ。


「でも、一応装備してみるか……」



――――――――――――

ロイン・キャンベラス(装備)

17歳 男

攻撃力 9999(+6700)

防御力 9999

魔力  9999

知能  9999

敏捷  9999

魅力  9999

運   10000★

――――――――――――



「あ、あれ……!? なんでだ!? 俺のステータスが、ちゃんと上がっている!」


 俺は驚きの声をあげた。

 だって、防具のほうはなにも変化がなかったのだ。

 俺は今だってこうして防具を装備しているが、ステータスは9999のままだ。


「ど、どういうことなんだ……!?」


 俺が困惑していると、ドレッドが一つの仮説を口にした。


「なにか違いがあるとすればだ――」


 そこまで聞いて、俺も同じことを考えた。


「「上位素材か…………!?」」


 俺たちは異口同音にそう口にしていた。

 そう、なにか防具と武器に違いがあるとすれば、上位素材を使っているか否かだ。


「つまり……上位素材を使っている武器や防具なら……ステータス上限を突破できるってことなのか……!?」

「どうやら……そうみたいだな」


 だとしたら、俺はますます、これからも素材を集めていかないとな……!

 次の戦いに備えて、まずはまた装備集めから始めることにしよう!

 俺は、新しいドロップアイテムとの出会いに、期待に胸を膨らませた。

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