第86話 夜明け
俺たちは夜中じゅう戦い続け……。
「夜明けだ……!」
「うおお! これでアンデットたちが死滅するぞ……!」
冒険者たちは喜びの声をあげた。
ふう……ここまで長かった。
さすがの俺も、もううんざりしていた。
だが、これでアンデットたちが消え去り、敵の数もかなり減るはずだった。
「おかしい……」
日が差してきて、アンデットたちが復活しなくなった。
それなのに、一向に敵の数が減らない。
「それどころか、増えているぞ……!」
いったいこの敵たちはどこから湧いてきているのだろうか。
まさに無限に湧き出てくる。
このままではキリがない。
本来であれば、夜明けまで持ちこたえれば、なんとかなると思っていたのだが……。
どうやらそれがそうでもないらしい。
「これは元を絶たないとな……」
こいつらはきっと、どこかから湧いてきているはずだ。
だとすれば、その元を断ち切れば、なんとかなるかもしれない。
俺は一度、みんなが戦っている場所へ戻った。
「みんな、きいてくれ……!」
「ロインさん……!」
冒険者たちはみんな疲弊していた。
当然だ、いくらポーションなどの回復手段があっても、夜中じゅう戦っていたのでは、疲労もたまる。
それに、終わりがみえていたと思っていた戦いに、終わりがなかったのだ。
その絶望感たるや、すさまじいものがある。
いったいいつになればこの戦いは終わるのかと、みんなもううんざりしていた。
そんな中、俺が現れたことで、みんなの顔にわずかながら希望の光が差す。
だがすまない……なにか解決策があるわけではないんだが……。
「俺は、このモンスターたちの出どころを調べてみようと思う」
「ロインさん……わかりました!」
「だから、みんなもう少し耐えてくれ。俺はいったんこの草原を離れる。それでもいいか?」
「わかりました! ロインさんに託します! ここは俺たちに任せてください!」
みんな本当は、疲労がたまっていて、文句の一つもいいたいはずだ。
それなのに、こうして俺に笑顔を向けてくれる。
俺を信頼して、問題の解決策を託してくれる。
俺はその期待に応えたい。
俺も、そんなみんなだからこそ、信頼して街を預けられる。
「うおおおおおお! ロインさんが戻ってくるまで、みんなで街を死守するんだ!」
冒険者たちは、これが最後の踏ん張りどころだとばかりに、再度奮起した。
「ねえロイン……大丈夫なの?」
クラリスが俺に問いかける。
「ああ、俺は大丈夫だ。だからクラリスも、みんなと共にこの街を守ってくれ」
「私……ロインのことも心配だよ。だって、なにがあるかわからないんだもん……」
たしかに、こんなモンスターたちを生み出している場所を突き止めたとして、そこになにがあるかはわからない。
さらに危険ななにかが潜んでいるのかもしれない。
それでも、俺はいかないわけにはいかなかった。
「ロイン……。ロインは私が護るって決めたんだから、私に護らせてよ! だって、デロルメリア戦のときだって、私がいなかったら……!」
と、クラリスは俺に縋りついてきた。
「でも、俺は大丈夫だよ。それよりも、この街の防衛にはクラリスが必要だ。だから、頼む。みんなとこの街を護ってくれ」
「でも…………」
俺たちのそんなやりとりを見て。
冒険者たちがこんなことを言った。
「大丈夫ですよロインさん。ここは俺たちだけでも。クラリスさんをぜひ、連れていってください」
「でも……」
「なあに、俺たちにはロインさんからお借りした装備がありますからね!」
「みんな……」
ということで、クラリスも俺に同行することになった。
カナンは戦いに夢中で、そんな話、聴いてさえもいなかった。
まったく……あの戦闘狂め……。
「よし、じゃあクラリス。行こうか。このモンスターたちの出どころを突き止めに……!」
「うん! なにがあっても、私がロインを護るから……!」
そして、クラリスのことは俺が護る――!
この後、俺は、クラリスを連れていって本当によかったと、思い知ることになる。
まさか転移していった先に、あんなことが待ち受けているだなんて……。
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