第85話 無限湧き
「
俺はスキルを発動する。
効果時間は役十分。
一日につかえる回数は5回ってとこか……つーかこれが限界。
そして――。
「
剣が二倍となっているから、威力も範囲も2倍だ!
――ゴオオオオオオオオオオオオオ!!!!
俺はモンスターの大群を、炎で焼き払うようにして蹴散らす!
だが、これだけ大量にいると、キリがない。
しかも中にはアンデットモンスターもいて、倒すなり復活してきやがる。
まさにモンスター地獄だ。
アンデットだけじゃない、他のモンスターも、次から次に湧いて来て、一向に数が減っている気がしない。
「くそ……いったいどこから湧いてきているんだ……!?」
◇
とりあえず、俺はモンスターたちの大群の中にきって入っていって、草原の中央部分で戦っていた。
俺は特に戦闘力が高いから、敵の数の全体量を削る役割だ。
まあ、それでも全然減っていないように感じてしまうくらい、敵が多いんだが……。
クラリスと、カナン、それから他の冒険者たちには、街の防衛を頼んでいる。
壁状に並んだ冒険者たちが、そのままの陣形で、前線を徐々に押し上げていく感じだ。
そうすることで、確実に街を護ることに徹する。
街の外壁の前で戦えば、上からの狙撃もできるしな。
それに、補給も簡単だ。
攻めていくより、護りに徹したほうが、消耗は少ない。
余ったスキルブックを、いくつか冒険者たちに支給してあるから、中にはかなりの手練れもいる。
まあ俺ほどではないにしろ、みんな他の街の冒険者とは比べ物にならないくらい強い。
そのはずなんだが……。
「なんでこうも一向に敵が減らないんだ……!?」
もう1時間は剣を振り続けている。
それでも、敵がとどまることをしらない。
むしろ、全体としては増えているような気さえした。
アンデットは夜明けまで持ちこたえれば死ぬから、なんとかなりそうだが……。
夜明けまでみんなが戦い続けられるとも限らない。
それに、謎は深まるばかりだ。
いったいこのモンスターたちは、どこからきているのだろうか。
俺たちは、今までにない苦戦を強いられていた。
ただ敵が強いだけなら、いくらでもやりようはあるが……。
敵が無数にいて、終わりが見えない戦いなんて、想定外だ。
いつ終わるかもわからないから、うかつに魔力と体力を消耗することもできない。
これだけの軍勢だ、きっと魔界からの敵――なのだろうけど。
恐ろしいのは、その前兆がなにもなかったことだ。
デロルメリア出現のときは、空がぱっくりと空いて、ヤツが出てきた。
ベへモスのときもそうだ、アレは稲妻とともに現れた。
しかし、今回はまだあれから日も浅い。
それに、なにか大きな天候の変化なんかもなかった。
いったいいつの間に……?
これだけの多くのモンスターを、いちどに送ってくるなんて、ありえない。
「くそ……埒が明かない。いったいいつまで戦えばいいんだ……!?」
◇
俺がみんなと距離を置いて戦っているのには、もう一つ理由があった。
俺がみんなと共に戦うと、明らかに邪魔になるからだ。
どういうことか。
俺が敵を倒すと、望んでいなくても大量のドロップアイテムが吹きだしてしまう。
そうなると、味方からすれば邪魔なことこの上ない。
だから、今回はもうクラリスやカナンとも距離をとった。
うえええ……孤独って辛い。
これが強者故の孤独ってやつか……っふ……。
なんて言っている場合ではない。
俺は、倒したそばから、アイテムボックスにアイテムをしまっていく。
右手に剣を、左手にアイテムボックスをだ。
だってそうしないと、俺自身戦うのが邪魔だからな。
ただでさえ、モンスターがうじゃうじゃいて、なにがなんだかわからないのだ。
これ以上画面がうるさくなったら大変だ。
もはや、誰がなんのアイテムをドロップしているのかさえ分からなかった。
「
俺は定期的に、
力の加減で、アイテムだけを吸収してモンスターは吸収しない、ということもできる。
そうすることによって、戦いながらでもスムーズにアイテムをアイテムボックスに収納できた。
俺の左手はまるでドラゴンの吸い込みのように、なんでもかんでも飲み込んでいく。
右手から炎の剣をだし、左手でアイテムを吸収する。
今の俺は、修羅のようだった。
「って……あれ……? なんかアイテムボックスが反応しないぞ……」
急に、アイテムボックスがアイテムの回収をやめた。
どういうことなんだろう。
今までにこんなことはなかったのに……。
【アイテムの収納限度数に達しました】
アイテムボックスには、そういうメッセージが表示されていた。
「え……うそ……」
こんなこと、なったことがない。
今までどんなアイテムでも、何個でも収納できたはずだ。
いったい……今日だけでいくつのアイテムを吸収したんだ……!?
まあ、そりゃあそうだ。
これだけ長時間、無限に湧き続けるモンスターを処理していれば、そうなってもおかしくないか……。
「仕方がない。予備のを使おう」
俺は一瞬でその場から転移で、アルトヴェールの街に戻る。
そして備蓄してある空のアイテムボックスを何個か手に取る。
アイテムボックスは基本的に、収納用とは別に、新品のものが、何個か倉庫に眠っている。
なぜなら、新規冒険者登録をしたものには、全員に配っているからだ。
冒険者として活躍するときに、かなり便利なアイテムだからな。
なくなれば、また俺がとって来ればいいだけだし。
それに、このキャンペーンのおかげでかなりアルトヴェール領に人を呼び込めた。
「よし、じゃあ戻るか」
俺は、アイテムボックスを持って転移する。
元居た草原の中央あたりに、再び舞い戻る。
「ようし、これでポケットの中身は空だ。いくらでも入るぜ? モンスターさんたちよぅ……」
これで遠慮なく、さらにアイテムボックスをパンパンにできるな。
いったい限度はいくつなんだろう……?
収納用のボックスには、5000個ほど入れているものもあるから……。
少なくとも万ではきかないはずだ。
この戦いが終わったら、かなりのアイテムが飽和するなぁ……。
俺は戻ったついでに、魔力回復ポーションも飲んできたから、体力はばっちりだ。
少々高いが、ここはポーションを出し惜しみしている場合ではないだろう。
「さあて、第二ラウンドだ……!」
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