第75話 誰もが活躍できるギルド 


 俺はみんなを集め、今後の展開について会議をすることにした。

 重要な案は俺だけが知っていても意味ないからな。

 必要なことは共有したい。


「俺が作りたいのは、誰もが活躍できるギルドなんだ」


「誰もが活躍できるギルド……?」


 クラリスが繰り返す。


「そうだ。俺は最初、だった……。それはクラリスもそうだろ?」


「そうね、私は防御力がなかった。ロインは攻撃力」


 そう、俺たちはなにも、最初から恵まれていたわけではないんだ。

 生まれつきの不遇によって、虐げられたりもした。

 それでも、あきらめなかったから、今があるんだ。

 死にもの狂いで足掻いて、行動をしたから。


「ああ、俺は今でも忘れない。あの悔しかった日々を。でも、今は【確定レアドロップ】のおかげで、いろんな強力な武器が手に入る」


「それで……?」


「俺は、俺みたいな元々の能力が低い冒険者でも、活躍できる場所を作りたいんだ」


 だって、そんなの不公平じゃないか……。

 生まれつきの能力だけで、差別され、チャレンジすることすら許されない。

 そんなの、理不尽だ。


 それに俺はたまたま【確定レアドロップ】というスキルに恵まれていた。

 でも、全員がそうじゃない。

 ステータスも低く、能力にも恵まれない人間だっている。

 だったら、その能力を使って、俺に出来ることとはなにか。


「それで、ロインさん。どうやってそれを実現するんですか……?」


 とサリナさんが訊く。


「俺は、【貸出武器】のシステムを作ろうと思う!」


「貸出武器……!?」


「そうだ。冒険者たちが自分で用意しなくても、受けるクエストによって、適切な武器や防具を、ギルドが支給すればいい。ようは、冒険者たちの労働力のみを借りて、こっちはそれに見合った道具を貸し出すんだ」


 そうすれば、みんなおんなじ条件で戦える。

 それで稼いだ金で、買いたい人はオリジナルの武器を買えばいい。


「でも……そんな財源が……!」


 と、商人の一人が言った。

 しかし、言いながら、彼は自分で気がついた。


「あ……」


「そうだ、俺の【確定レアドロップ】能力さえあれば、それに十分な武器や防具を集められるだろ……? 俺はみんなのために、レアドロを集めてくる。そうすれば、冒険者たちはどんどん強くなる。それで、魔界の連中にも対抗できる最強のギルドが出来るってわけだ」


「なるほど……! さすがロインさんです!」


 サリナさんが手を叩いて俺を称賛する。


「それに、そうすれば俺は強敵や魔界の敵に専念できる。他の冒険者たちが強くなれば、安心して、レアドロップを探しまくれるわけだ……!」


 俺は、目を輝かせて言った。

 そう、冒険者たちが強くなれば、その分俺も楽だからな。

 お互いにメリットのある関係だ。


「結局レアドロなのね……」


 とクラリスが呆れてため息をつく。


「でも、その武器や防具は誰が作るんです……? そんな腕のいい職人、すぐには引っ張ってこれませんよ……?」


 商人の一人がそう言った。

 そう、レアドロ目当ての商人は、もうすでにかなりの量、このアルトヴェール領にいる。

 だが、武器職人や防具職人がそれほど十分にいるとはいえない状況だ。


「大丈夫だ。それも、俺には心当たりがある」


「ええ……? 本当ですか……!?」


「ああ、俺はちょっとミレージュの街まで行って、いろいろ話をつけてくるよ。みんなは引き続き、このアルトヴェール領の発展をよろしく頼む」


 正直、俺が領主とは名ばかりで、みんなに実務はまかせっきりだ。

 まあ餅は餅屋とも言うし、俺はレアドロを集めてくるのが一番いいのだろう。

 実際、今のところ、順調にアルトヴェール領は発展していっている。

 城のまわりには、小さな町のようなものもできてきた。


「さあて、これからまだまだ忙しいぞ!」


 俺は、転移でミレージュの街に向かった。

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