第63話 ギルドラモンの夜


「うええええええええんロインんんん!!!! 私のお肉カナンが食べたぁ……!」

「あーはいはい、また買ってあげるから……!」


 はぁ…………まさかクラリスがお酒を飲むと、ここまで豹変するなんて思わなかった。

 まるで小さい子供のようにわがままだ。

 しかも、めっちゃ泣くし、俺に縋りついてきて、重い……。

 一方で、カナンもカナンだ。


「おいロイン……! もっと飲め! もっと食え! はっはっは! それでも私の男か……!」

「い、いや……俺はもう一杯……あぶ……!」


 断っているのに、無理やり肉を口に突っ込んできやがる……!

 まじでもう、こいつらにはお酒飲ませちゃダメだ……!


「ロイン! 全然酔っぱらってないな……!? もっと飲まないと……!」

「いや、俺が酔ったらもう収集つかないから……って、おいやめろばか……うっぷ」


 カナンは突然、俺にキスしたかと思えば、口の中に酒を流し込んできやがった。

 このやろう……無理やり飲ませてきやがった……!

 うう……なんだか俺も酔ってきた。

 このままだとまずいぞ。

 さっさと切り上げて、ホテルにいかないと……。


「おい、二人とも、もういくぞ……!」


 俺は二人を引きずって、店を出た。


「じゃあ、転移っと……!」


 ホテルに向かって転移する。

 部屋はもう、先に予約済だ。


「ふぅ……どうしようかな、コレ……」


 酔ってぐったりとしたカナンとクラリス。

 とりあえず、カナンとは別の部屋じゃないとマズイよな……?

 だから二部屋とったんだけど、そのまま二人を寝かせるのは心配だなぁ。

 いちおう、しばらく見ておくか……。

 俺はふたつならんだベッドに、カナンとクラリスをそれぞれ寝かせ。

 その横に腰かけて、見守ることにした……。

 まあ、俺は座ったままでいいや。

 この街は、なにかと物騒だからな……。

 酔っぱらって眠っている女性を、そのまま置いておくことなどできない。


「あれ……? ロイン、ここは……?」

「あ、クラリス……起きたのか」


 しばらくして、クラリスが目を覚ます。

 どうやら酔いが覚めるのは早い体質らしい。

 さっきのアレはなんだったんだ……まったく……。

 まあ、クラリスの意外な一面を知れて、俺としては嬉しくもあるが。


「え……もしかしてロイン……ずっと私たちを見ててくれたの……?」

「ま、まあな……。だって、この街って危ないだろ……? 俺が寝てしまうと、心配でさ……」

「ありがと、ロイン。ほんとロインって、そういうところ優しいよね……」

「そうか……? 普通だと思うが……」


 俺とクラリスが、月夜の元、ベッドに腰かけそんな話をしていると――。

 後ろから、二人の首に手を回してくる奴が……。


「にぇえにぇえお二人さん……? なぁにを話してんの……?」

「カナン……!?」


 振り返ると、カナンは上着をなにも着ていなかった。

 そのうえ、俺たちの背中に抱き着いて、身体を押し付けてきている……!

 俺の背中に、カナンの無防備なふくらみが当たっている……!


「お、おいカナン……!? まだ酔ってるのか……!?」

「ねえロイン……まだまだ夜はこれからにゃあ」

「なんだその口調……!?」


 こいつ……! 悪酔いしてやがる……!


「ロイン……! 私のものになるにゃあ……!」

「うわぁ……! や、やめろ……!」


 俺はカナンに、押し倒されてしまう。

 当然、装備をしていない状況じゃあ、まだまだ俺の方が非力だからな……。

 くそ……こんなことなら先にステータスの種をもっと食べておけば……!

 このままじゃ、カナンに何されるかわからない……!


 もしかして、カナンって、俺のこと……。

 いやいや……そんなはずは……。

 でも、さっきも「私の男」とか言ってたな……?

 ま、まさかな……!


「にゃああああ!」

「お、おいカナン……! それはさすがにまずいって!」


 まだ俺は、カナンと正式に気持ちを確かめ合ったわけではない。

 カナンのほうも、酔っていて気がおかしくなっているのかもしれない。


「おいクラリス! 見てないで助けてくれ……!」

「だめだにゃあ。ロイン、大人しくするにゃあ!」


 と、クラリスも俺を押さえつけてきた。

 こいつ……。


「お、おい……! お前は酔ってないだろ……! ふざけるな……!」


 どうやら、俺はこの後、大変な目にあってしまうようだった……。

 まだまだ、装備をしていないと俺は無防備だ……!



――――――――――――――――――――

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