第47話 邪剣


 ちょうど王の元から帰って来たころだ……。

 武器屋の親父から、俺のもとへ連絡があった。

 俺は急いで武器屋に向かう。


「おお、ロインあんたか……、これをみてくれ……!」

「これは……!?」


 武器屋の親父は先日俺が預けた《邪剣ダークソウル》を机に置いた。

 相変わらず《邪剣ダークソウル》は禍々しく漆黒の煙を放っている。


「これはとんでもない代物だぞ……? みていろ……」


 親父は龍玉を一つ取り出すと、《邪剣ダークソウル》の上に落っことした――。

 《邪剣ダークソウル》には持ち手の部分に、眼のような宝石が埋め込まれており……。

 龍玉はまさにそのの中に吸い込まれていった――。


 ――ズモォ……。


「ど、どういうことなんだ……」


 俺は目を丸くして驚いた。

 龍玉が、剣の中に吸い込まれていってしまった……。

 これでは、剣の改造どころではない。


「ロイン。どうやらこの剣、勝手に改造してくれるみたいだぜ……?」

「は……? かってに改造?」


 まさか、剣に素材を落としただけで、かってに改造されるというのか……?

 素材をかってに取り込んで……?


「ああ、この剣は……生きている」

「そんな馬鹿な……!」


「俺もあの手この手で手を加えようとしてみたんだがな……どうやらこちらからいじることはできないようだ。どんな道具も、弾かれてしまう。もしくはさっきの龍玉のように吸収されてしまうかだな……」

「そんな……ということは、改造して強化することはできないのか……?」


「ああ、だが……その必要はないんだ。さっき龍玉を吸い込ませただろ? それだけで、既にこの剣は《会心率+15》を得ている」

「おいおいマジかよ……」


 っていうことは、この剣、もはや武器屋いらずってことなんじゃないか……?

 でも、だとしたら武器屋の親父に少し申し訳ないな。

 今までさんざんお世話になってきたのに、ここで用済みとしてしまうなんて……。

 そんな俺の懸念を表情から読み取ったのか、親父は。


「おいおいロイン、そんな顔するなよ。俺は別に気にしねえよ……」

「いや……でも……」


 俺としては、今後もこの武器屋に助けてもらいたかったのだが……。

 そうだ、俺はいいことを思いついた。


「なあ、今後も素材を手に入れたら……ここに持ってきてもいいか?」

「ああ? 俺は別にいいけどよ……お前さんにメリットないだろ? だってこの剣は、職人いらずで勝手に進化していくんだから……」


 武器屋の親父は、少し寂しそうに言った。

 くそ、やっぱり気にしてんじゃねえか……!

 水臭い親父だ。


「でもさ、俺一人だと……やっぱり効果のわからない素材とかもあるんだ。この武器をどうやって進化させていくか、その指標になってくれないか? わからないままなんでも素材をぶち込めばいいってもんじゃないだろ? 素材の効果による相性とかもあるだろうし……。闇鍋ってわけにはいかない……。そうだな、スペシャルアドバイザーになってくれよ」


 俺は、親父にそう提案した。

 これはなにも同情からの申し出ではない。

 実際に、俺としても親父のような素材に詳しい人がいてくれた方が助かるのだ。

 この邪剣が吸い込める素材の量にも、制限があるかもしれないのだし。

 未知のものに対しては、やはり慎重にならないといけない。


「そうか……そうだな……。わかったよ。へへ……俺が勇者様のアドバイザーか……」

「そうだよ、これからもよろしく頼むぜ!」


 それに、武器屋とは他にもまだまだ付き合いが続きそうだ。

 おいおいドロシーの武器なんかも頼みたいし、クラリスだって、盾以外のものを使うかもしれない。

 それに、兵士たちを揃えるなら、その武器も必要だ。


「なあ親父、俺は自分の領地に、魔王軍に対抗するための兵士団を作ろうと思っているんだ……。これはまだまだ先の話になるかもしれないのだが……。そのときは、ぜひあんたに武器の制作を頼もうと思っている」

「ああ、任せておきな……! 俺が最高の武器を仕上げてやるぜ!」


 俺は、武器屋の親父とぐっと握手をした。

 男同士の、固い握手だ。


 そして俺は、《邪剣ダークソウル》を親父と一緒にカスタマイズした。


 《邪剣ダークソウル》に吸い込ませたのは、龍玉7個と、白龍玉8個。


 これで、《邪剣ダークソウル》は会心率+100%と、会心ダメージ率+100%を得た。


「はは……! 最強の剣の出来上がりだ……!」



《邪剣ダークソウル》

 ★17

 攻撃力+4000

 魔力+150

 会心率+100%

 会心ダメージ率+100%


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