第三章 世界最強 編
第44話 勇者誕生
翌日、ちょうど新しい月になる日。
つまりは、冒険者ランクの更新の日でもある。
俺は期待を抱きながら、ギルドへ向かった。
ギルドにはすでに大勢の人がいて、みな俺を待ち構えていた。
龍の頂のふもとの街――ドラゴネアの人たちの証言で、既に俺がデロルメリアを倒したということは知れ渡っている。
俺としてはなるべく大事にしたくないと、サリナさんにも頼んでおいたのだが――「まあちょっとそれは難しいかもですね……」と言われてしまった。
予想通り、俺が現れた途端、ものすごい注目を浴びてしまう。
俺とクラリスは人ごみをよけながら、なんとかギルドの情報ボードを目指す。
「はは……すごい有名人だね、私たち」
「まあな、魔界からの侵略者を退けたわけだからな……」
しかも、相手は勇者パーティを討ち取った強敵だ。
すでに国王にも知れ渡っているとか噂されていた……。
「ロインさん! ロインさん! 待っていましたよ!」
「あ、あんたらは……」
クエストボードの前で俺たちを待ち構えていたのは――。
なんとあのドラゴネアの街でいっしょに戦った、冒険者や街の人々。
「あのときは、本当にありがとうございました! 俺たち、ロインさんのファンになってしまいました!」
「だからこうして、ロインさんの記念すべき日に、一目見ようと、こうして集まったのです!」
みんなはそう言って、俺を取り囲んだ。
中には花束やプレゼントを渡そうとしてくる者も……。
「はは……みんな、わざわざ来てくれたってのか……。うれしいな……ありがとう」
まるで凱旋パレードだ。
俺は貴族にでもなったような気で浮かれていた。
だが、ここからが本当の始まりなんだ。
俺は、こんなところで立ち止まってはいられない。
たまたま俺にこんな力があったのだから、俺はそれを有効活用しなければならない!
「さあて……じゃあランキングを見るか」
ようやくみんなが落ち着いてくれた。
俺はランキングボードを確認する。
―――――――――――――――――――――
《冒険者ランク》
1位 ロイン・キャンベラス Sランク
2位 クラリス・キャンディラス Sランク
3位 ルジェイド・ロン Aランク
4位 ラクーシュ・イスナ Aランク
5位 ギルダー・カストール Aランク
・
・
・
―――――――――――――――――――――
「はは……俺が、1位……」
俺は一気に体中の力が抜けるのを感じた。
まさか、あのスライムすら倒せなかった俺が、冒険者ランクの1位になる日がくるなんて……。
これも、俺があきらめずに、頑張ったからだ……。
ほんとうに、ここまでこれたんだ……!
「よかったわね……ロイン!」
「ああ……! クラリスも、2位だ! おめでとう!」
「ありがとうロイン! ロインのおかげだよ!」
俺たちはその場で人目もはばからずに抱き合った。
これからは、俺たちがこの街のギルドの顔なんだ……。
「ロインさん、ボーナスもありますよ! 1位になった人には、特別にボーナスが進呈されるんです!」
「サリナさん……!」
そういえば以前にもランキング上昇ボーナスをもらったよな……。
1位の場合も、別のボーナスがあるのか……。
俺はギルドカウンターで、1億Gを受け取った。
そうこうしているうちに、騒ぎは収まってきた……。
かに思えたが……。
また再び、ギルド内がざわつき始めた。
「なんだろう……?」
ギルドカウンターのところにいた俺は、気になって後ろを振り返った。
すると、人混みのなかを、分け入ってくる人物が目に入る。
みな、彼に注目している。
――ざわざわ。
どうやらただ者ではなさそうだ。
赤と金色で彩られた、豪華な衣服に身を包んでいる。
「あれは……王国からの使者だぞ……!?」
「使者……!?」
観衆の中の誰かがそう言った。
こんな冒険者ばかりしかいない泥臭いギルドに、そんなお偉いさんが何の用だろう。
王国からの使者とやらは、俺の前までくると、ぴたりと止まった。
え……まさか俺に用があるのか……?
「貴公がロイン・キャンベラス殿であるか……?」
「え、ああ……そうです……」
彼は仰々しい立ち振る舞いで、なにやら書簡を取り出した。
そして俺に向けて、それを両手で差し出し、一礼。
「ロイン・キャンベラス……あなたを王国指名勇者として認め、世界の秩序の維持に貢献することを命じます……!」
「えぇ……、俺が……勇者!?」
まさかまさかだ……。
まあ確かに、勇者アレスターはもういない。
となれば……ランキング1位の俺にお声がかかるのも当然と言えば当然なのか……!?
「前回の勇者死亡によって、再度勇者選定の儀を行いました。現状の貢献度や、実力、実績から見て、ロインさま。あなたが最もふさわしいと判断されたのです……」
「こ、光栄です……」
たしかに、勇者の指輪も俺が持っている。
デロルメリアを倒したのも俺だ。
まあ、断る理由はない……というか国王からの指名だから、断れやしないんだろうが……。
「それで……俺はこれから何を……?」
いきなり勇者と言われても、何をすればいいのかわからない。
そもそもアレスターだって、何をしていたのかわからないヤツだったし……。
「以前と変わらず、モンスターや魔界からの侵略者に対抗していただければと存じます……」
「そうか……なら、俺の目的とも同じだ……」
俺はもっと強くなると決めた。
そして、俺の生活を邪魔する者も倒す。
だから、俺の敵は国にとっても敵といってもいい。
勇者だからといって、特になにか変わるようではなさそうだ。
「ただ、勇者となったことで、いろいろな特権をうけられます」
「へぇ……」
「飲食店や各種装備屋での割引や、いざとなれば王国から兵を引っ張ってくることもできます」
「まあ……それはどうでもいいかな……」
「あとは……そうですねぇ……勇者として、国の冒険者たちの見本になり、士気を上げるように努めていただくとか……」
「まあ……それはなんとかなるかな……」
というか、それなら前の勇者は失格なんじゃないのか……?
あいつ、皆の見本って感じじゃなかったぞ……。
まあ、だからこそ俺は反面教師にしよう。
「いずれまた、王国に立ち寄っていただき、王から直々のお言葉をとのことです……。いつでもかまいませんので……機会があれば……」
「ああ……うん、そのうち行かせてもらいます」
正直、そういうしがらみは面倒だ。
でも、いつでもいいと言ってくれているのなら、まあいいか。
王国からの使者は、それだけ説明すると、書簡とメダルを渡して去っていった。
これで俺は、勇者となってしまったようだ。
「すごい……私たち、勇者パーティなんだね……!」
「だな……どうやらそうなってしまった……」
俺たちは顔を見合わせた。
なんだか、俺とクラリスが勇者パーティってのは変な感じだ。
「ロインさん、おめでとうございます! 本当に……!」
「ありがとうございます、サリナさん! これもサリナさんのおかげでもあります! あの時、俺に毛布を渡してくれなかったら……俺はあそこであきらめていたかもしれない……」
「いえいえ、ロインさんの頑張りですよ! 私はこれからも、そのサポートをさせていただきますね!」
サリナさんもクラリスも、本当にいい人たちに恵まれた……。
俺は、今最高に幸せを感じていた。
しかし……魔界とのゲートは今も緩み始めている。
またいつ強敵がこっちにあらわれても、おかしくない状況だ。
決して油断はできない。
俺は先日までの戦いで得た戦利品を元に、新たな装備を整えるため、またあの武器屋と防具屋に出向くことにした――。
この街がいくら大都市とはいえ、職人の優秀さには驚かされるばかりだ……。
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【あとがき】
カクヨムコン用に新連載をはじめました!
7万字書き溜めてあります!渾身の出来です!
絶対面白いのでぜひ読みに来てください!
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🎄森の奥の大賢者~魔力ゼロのゴミと言われ大魔境に捨てられたけど、最強のドラゴンに拾われ溺愛される~記憶がないけど2度目の人生らしいので2倍のスキルスロットと史上最強の魔法適正で非常識なまでに無双します
https://kakuyomu.jp/works/16817330649133742666/episodes/16817330649133790136
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