第40話 ドラゴンマウンテン


 俺たちはついに龍の頂へとやって来た。

 ダンジョンの中へ転移しようかとも考えたが、いきなりの接敵を考えると、リスクが大きすぎる。

 大人しくダンジョンをはじめから攻略することにした。


「おかしいな……ぜんぜん敵が出てこない」


 そう、まるでさっきまで別の誰かが先に攻略をしていたかのように、敵がいない。

 それとも、ドラゴンたちはみんなダンジョンを出てしまい、あの街にいたので全部なのだろうか。


「静かだ……静かすぎる……」


 誰もいないダンジョンをしばらく行くと――。


 道の端に倒れている人を見つけた。


「うぅ……だ、誰か……」


「だ、大丈夫かアンタ!」


 俺は急いでそいつに駆け寄る。

 彼はどうやら身体のほとんどを潰されているようだった。

 今にも死にそうといった感じで、うめいている。

 近づいてみて、ようやくその人物が誰だかわかった。


「あ……! お前は……勇者アレスターじゃないか……!?」


 アレスターの顔や体はもうボロボロで、本人の原型をとどめていないほどだった。

 実際に近くで戦ったことのある俺でなければ、気づけなかったほどに。


「うぅ……だ、誰だ……。誰でもいい……俺を、殺してくれ……」


「え……」


「俺はもうだめだ……回復の術はない……苦しい……今はただ、とどめを刺してほしい……」


 アレスターは最後の力を振り絞って、俺にそう訴えかけた。

 ドラゴンのブレスで火傷もしているのだろう。

 彼はものすごく苦しんでいるようだった。

 そして彼の言う通り、もう助かる見込みはない。


「そうか……わかった……今までよくがんばった……」


 俺がくるまで、アレスターは死ぬよりもつらい痛みに耐えていたのだ……。

 決して印象のいい奴ではなかったが、彼の痛みを思うとぞっとする。


「あ、ありがとう……」


「じゃあな……ゆっくり眠れよ……」


 俺はなるべく楽な方法で、彼を送ってやることにした。


 ――グサ……!


「う…………」


 アレスターの身体から力が抜ける。


「ロイン、ここで……何があったんだろう……」


 クラリスが複雑な表情でアレスターの死を見届ける。


「そうだな……おそらく、デロルメリアにやられたんだろう……勇者パーティー全員」


「そんな……勇者パーティが全滅するなんて……」


 たしかに、いくらなんでも勇者パーティが全員揃っていてやられるなんて考えにくい。

 相手はよほどの強敵なのだろうか。


「私たち……大丈夫かなぁ……」


 クラリスが不安そうな顔をする。


「大丈夫さ……俺がいる。俺が必ず、ヤツを倒す……!」


 ふと、倒れたアレスターの方を見る。

 すると、彼の足元になにやら転がっているのが見えた。


「これは……? ……! 勇者のドロップアイテム……!?」


 俺がドロップアイテムを得られるのはモンスターからだけだと思っていたが……。

 どうやら人間もドロップアイテムを落とすらしい。

 人間を殺すような機会などなかったが……。

 今回は介錯をしてやったことで、ドロップアイテムが落ちたというわけか。


「まあ、ありがたく頂戴するか……。勇者アレスター……お前の仇は、俺が討つ……!」



《勇者の指輪》

レア度 ★×不明

ドロップ率 0%

説明 装備したものは勇者の加護を得る



「勇者の加護……か……」


 そういえば、アレスター自身はこんな指輪はしていなかったな……。

 勇者アレスターが死ぬことによってはじめて、勇者の指輪がこの世にあらわれるとは不思議な話だ。

 つまり、アレスター自信は勇者の加護を受けていなかったのか……?

 まあ、よくわからないが、この指輪は役にたってくれそうだ。


「ん…………?」


 そういえば、さっきより周りが暗いな。

 ここはダンジョンの中だから、昼も夜もないはずだが……。


「ね、ねえ……ロイン……」


 俺はクラリスに呼ばれて、振り向く。

 ふと上を見上げると、この暗さが影ゆえのものだと気づいた。

 俺たちの頭上に、超巨大なドラゴンがいたのだ。


「おいおい……こいつは規格外だな……」


 なるほど、アレスターはどうやら、こいつにやられたらしい。

 ならばまず、デロルメリアを討伐しに行く前に、コイツを倒さねばなるまいな。


 ――グオオオオオオオオオオ!!!!


 巨大なタイラントドラゴンは、地響きを起こすような声で鳴いた。


「っは……! 俺たちを敵と認識したようだ」


 こんな巨大な魔物は、いつぞやのゴーレム以来だ。

 ……!?


 そうか……あのゴーレム、なにかこの件と関係がありそうだ。

 時空が歪み、魔界との扉が開くその少し前に、あの巨大ゴーレムは現れた。

 つまり、魔界からのなんらかの影響を受けて巨大化したのだろう。

 あれは、すべて予兆だったのだ……!


「ってことは……はなから俺はコイツと戦う運命だったのかもなぁ……!」


 相手は通常の数倍もある巨体。

 しかし、俺は一切ひるまない……!


 なぜなら……!


「こんなでかいってことは、さぞかしいいドロップアイテムを落とすに違いない……!」

「はぁ……ロインってば、そればっかり……!」


 俺は、タイラントドラゴンに斬りかかった――!




――――――――――――――――――


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