第38話 ドラゴン退治


 俺たちは一度、家に戻っていた。

 ドロシーに今街で起こっていることについて話すと、意外な返答が得られた。


「な……!? ロイン……今、魔王軍幹部デロルメリアと言ったのか……?」

「ああ……そうだが……知っているのか……!?」


 なにせドロシーは幽霊としてずっとこの城に住み続けてきたわけだ。

 だからなにかしらの情報を持っていても不思議ではない。


「そいつは……私の家族を殺したのと同じヤツだ……!」

「なんだって……!?」


 そういえば、ドロシーは過去のことを話してくれたっけ……。

 だがまさかドロシーたちを襲った相手が、あの魔王軍の奴だったなんてな。


「今から500年前のことだ……そのときも、奴らは魔界からやって来た。そして、地上に拠点を作り、やがて人々を蹂躙しはじめたんだ……!」

「そうだったのか……」


「勇者が奴らを追い返したころには、もうすべてが終わっていた……。私の家族は殺されてしまったんだ……」

「よし……! いっしょに仇をとろう!」


 俺はドロシーを、デロルメリア討伐に連れていくことにした……!

 きっと彼女は、悔しい思いを抱えているだろう。

 そのせいで、ずっと成仏できずにいた。

 これで少しでもその助けになればいい。


「だ、だが……どうやって? 私はこの城から出れないっぽいけど……」

「こうするんだ……!」


 俺はドロシーをもう一度、手鏡の中に閉じ込める。

 そして、それを持って城の外へ転移した。


「うわ……! 外に出れた……」

「な……? こうすれば、お前をデロルメリアのもとへ連れていける! いっしょにあいつを倒そう!」

「ロイン……ありがとう……本当に」


 ドロシーは鏡の中で、後ろを向いて涙をこらえていた。

 これでまた、俺があの魔王軍幹部を倒す理由も増えたな。

 なんとしても倒したい。





「でも、本当に気を付けてくださいよロインさん……」

「わかっていますサリナさん、俺は絶対に戻ってきますから!」


 俺は最後に、サリナさんにハグをする。

 そしてクラリスとドロシーを連れて、転移をする!


「《転移テレポート》――!」


 転移先に選んだのは、龍の頂から最寄りの街。

 直接龍の頂に向かってもよかったが、その前にまずは状況を確認したかった。


「おおっと……こいつは大変なことになっているな……」


 龍の頂の麓にある街――ドラゴネア。

 そこは戦場と化していた……。


 たくさんの兵士や冒険者が、ドラゴンを相手に戦っている。

 周りにはたくさんの負傷者。


「これは先にこっちに寄って正解だったかもな……」


 俺は別に勇者になろうというわけではない。

 だけど、こうして目の前で困っている人たちを捨て置くほどのクズでもない。


「よし……! まずはこの街のドラゴンを掃除するぞ!」

「そうだね、ロイン! 私たちでなんとかしよう!」


 俺とクラリスは、お互いに背中を合わせ。

 剣と盾をそれぞれ構える――!


 ――グオオオオオオ!!!!


 さっそく俺たちに気づいた一匹のドラゴンが、こちらに向けて走ってくる。

 レッドドラゴンは散々狩り倒したが、こいつは別種のようだ。

 だが、俺たちの敵ではない。


「おい! アンタらあぶねーぞ!」


 戦場にいた誰かが、俺たちにそう叫ぶ。

 しかし、なにも問題はない。


 なぜなら俺たちは出来あがったばかりの、防具と武器を持っている!


 ――ブオオオオオオオオオ!!!!


 目の前のホワイトドラゴンが、ホワイトドラゴンブレスを放つ!

 灼熱の炎とは違って、龍属性の攻撃――!

 しかし、俺たちの鎧はそれをいとも簡単に弾いた!


「さっすが、あの防具屋。いい仕事をするぜ……!」


 そしてそのまま、俺とクラリスはドラゴンの間合いに入る!

 どうやらホワイトドラゴンはレッドドラゴンと違って、下腹部が弱点らしかった。


 ドラゴンの無防備な腹にめがけて、一撃!


斬空剣エアスラッシュ――!」

盾火砲シールドビーム――!」


 ――ズドーーーーーーン!!!!


 俺たちの攻撃は、今まで以上の威力で炸裂する。

 デモンズブレード改は、龍玉3つ載せの超特級品だ。

 会心率60%……!

 その会心率の通り、俺の攻撃は見事にクリティカルヒットした!


「すごい……一撃ね」


 ドラゴンはもう、地面に倒れて動かない。



《白龍の龍玉》

レア度 ★×9

ドロップ率 0.02%

説明 レッドドラゴンの龍玉とは違った効果を持つ素材



「お、こいつは新しい素材だ!」


 俺はそれをさっとアイテムボックスにしまう。

 龍の頂にはたくさんのドラゴンが住んでいると有名だ。

 普段は大人しく、あまり人前に姿を見せないと聞いていた。

 まあ、ドラゴン自体が出会うことすら希少なのだ。


 だが、デロルメリアが龍の頂に拠点を構えたことで、そのドラゴンたちが暴走し始めたようだ。

 そのせいで、こうして街を荒らしている。

 これが奴らの策略なのだろう……。

 そうしているうちに、拠点で魔力を練って、侵略の準備をしているに違いない。


「これはドラゴンのレアドロがたくさん手に入りそうだ……!」


 俺は不謹慎にも笑みを浮かべていたようで……。


「もう……ロインってば……」


 クラリスに呆れられてしまう。

 そうこうしているうちに、俺のまわりに人だかりができていた。

 どうやらさっきまであのホワイトドラゴンに苦戦していた冒険者や兵士が、集まってきたようだ。


「お、おい……アンタ……なにものだ……!?」

「そうだ、俺たちがあんなに苦戦していたホワイトドラゴンを、一瞬で倒してしまうなんて……」

「そう言えば……誰かが勇者を呼びにいったと言っていたな……」

「まさか……アンタが勇者さま!?」

「ありがてえ……ありがてえ……!」


 おやおや……なにか勘違いをされているようだ。

 俺はあんな勇者たちと一緒にされたくはない……。

 というか、あの勇者たちは今頃どこで何をしているのだろうか。


「いや、あいにくだが俺は勇者ではないんだ……」


 俺はきっぱりと否定する。


「そうか……でも、勇者じゃなくてもいい! いまだに現れない勇者よりも、すぐ近くにいる見知らぬ冒険者だ……!」

「そうだそうだ! アンタが真の勇者だぜ!」

「いっしょに戦ってくれるのか……!?」


 なんだかみんなに祭り上げられたな……。

 まあ、士気が上がるのなら、それでもいいか。


「ああ、俺は全部のドラゴンを倒す(そしてそのレアドロを集め終わる)まで、デロルメリアのところにはいかない!」


 俺は高らかに宣言した。


「うおおおおおおおおおおお!!!! アンタが大将だ! みんな、彼に続け……!」


 そうして、俺たちはものの数時間で街に残っていたドラゴンを始末し終えた。

 俺のアイテムボックス内には、たくさんのドラゴン系素材。


「ありがとうありがとう! この街を救ってくれて……!」


 なにやら市長さんらしき人にもお礼を言われてしまった……。

 俺ははやくデロルメリアを倒しに行きたいんだけどな……。


「アンタのことは、絶対に忘れねえ。この街で永遠に語り継いでいくぜ……! ドラゴンキラーのロイン……!」

「そんな大げさな……。というかその2つ名なに……!?」


 俺は街の人間たちに、盛大に見送られることになった。

 そして、街を出て向かうは――。


 魔王軍幹部デロルメリアが拠点を構えるドラゴンマウンテン

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