第37話 準備は整った!


 防具が完成したとの知らせを聞き、俺とクラリスは防具屋を訪れた。


「ほらよ……これが現時点でできる最高の製品さ」


 それは、まことに見事な品だった……。

 まるであのレッドドラゴンをそのまま型取ったかのような、荘厳な見た目。

 ドラゴンキラーと呼ぶにふさわしい見た目をしていた。


 全身真っ赤な、ピカピカの鎧。

 それも、派手で下品な赤ではなく、暗く深い、味わいのあるワインレッド。

 ドラゴンの素材で作られたそれは、まるで着るドラゴンだった。


「これは……ちょっとすごいな……。芸術品だ……」


 俺はあまり、見た目にはこだわらないし、田舎者だから芸術にも疎い方だ。

 だが、それでも目を見張るほどの、美しい防具だ。


「そいつはどうも。だがな、これは見た目だけじゃないぜ……?」


 防具屋の親父は、その性能についても語り始めた。


「まずこれはドラゴンの牙や炎を通さねえ。なにせ奴らの鱗を使ってるからな。さらに、魔法耐性も十分だ。あんたのくれたサンライト鉱石が役に立った」


 フクロトロール討伐の時に余ったサンライト鉱石も、素材として役に立ったようだ。

 あれは粉末状にして防具にコーティングすると、魔法耐性が上がるらしい。


「じゃあ、さっそく着てみるか」

「うん……」


 俺とクラリスは、お揃いの防具シリーズに袖を通す。

 この世でこの2着しかない。

 女性用と男性用で、細部は異なるが、どちらもとてもいい具合だ。

 名付けて、レッドドラゴンシリーズ!


「おお、似合ってるな……!」


 クラリスのバージョンのは、真っ赤なドレスのような形状をしていた。

 防具としてだけでなく、可愛さや美しさ、セクシーさも兼ね備えている。


「ロインも、とってもかっこいいよ……!」

「ありがとう」


 これで防具は整ったことだし、次は武器だ。

 武器もこの前、武器屋に注文を出しておいた。

 今からそれを取りにいく……。





「いらっしゃい、出来てるよ……。すっごいのが」


 武器屋の親父が、自慢げな顔で俺たちを招き入れる。

 俺のデモンズブレード……その改良版が、完成したのだ。


「アレは役に立ったか……?」


「ああ、もちろんだ」


 俺はあらかじめ、ある素材を渡していた。

 レッドドラゴンから得た、龍玉だ。

 俺は三つの龍玉を、彼に渡しておいた。


「三つとも全部、はめ込めたぜ!」


「おお! そりゃすごい」


 新しいデモンズブレードには、三つの穴があった。

 そこに龍玉がすっぽりと収まっている。

 デモンズブレードの分厚い刃部分に、三つの龍玉が目のように光っている。

 もともとは無骨な感じの剣であったが、それによって禍々しさや神々しさを増していた。


「これは……最強の武器だな……!」


「おうよ! これ以上の武器はめったとお目にかかれねえぜ!」


 なにせ龍玉を三つもはめ込んである。

 龍玉を使ったアクセサリーの効果は、会心率+15%というものだった。

 つまり、この武器も同じく……。

 装備するだけで、会心率+45%の武器となる……!

 アクセサリーの分と合わせると、実に60%……!


「俺は半分以上の確率で、クリティカルヒットを繰り出せるわけだ……!」


 龍玉の使用はどうやらこれが限界らしい。

 アクセサリーにするにも複数は重すぎるし、防具に組み込むと、耐久性に不安が出るそうだ。


「今回はなんとか三つも組み込めたが……かなり苦労したぜ? デモンズ鉱石は加工がしにくいからなぁ……。だが、アンタのお陰で、デモンズ鉱石の扱いにも慣れてきたぜ!」 


「ああ、助かったよ。さすがはいい腕だ」


 ここの武器屋の親父は、本当に信用できる。


 さあ、武器も防具も整った……!


 俺は店を出る。


「じゃあクラリス、一度家に戻ろうか」

「そうね……サリナさんやドロシーにも言っておかないとね」


 俺たちは転移で家に戻る。

 いくら俺が強くなったといえども、相手は魔界から来た未知の魔物だ。

 油断はできないし、死ぬ可能性だって大いにある。

 だが、だからといって挑まない理由にはならなかった――!

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