第35話 装備を整える


 俺は魔王軍幹部デロルメリアと戦うことを決意した。

 ヤツは【ドラゴンマウンテン】に拠点を築いている。

 だが、その前にいろいろ装備を整える必要があった。

 なにせ敵は未知の異世界から来た魔物だ。


ドラゴンマウンテンか……ヤツの他にも、ドラゴン系の魔物と多く戦うことになるかもしれないな……」


 そう考えた俺は、龍属性に耐性のある装備を作ろうと考えた。


「よしクラリス、もう一度死の火山デスルーラーに飛ぶぞ! 転移テレポート――!」


 死の火山には、レッドドラゴンが生息していた。

 そのことはギルドにも報告済みだが、レッドドラゴンの数は思ったよりも多く、まだ対処は遅れているそうだ。

 なのでちょうどいい、俺が乱獲すれば、彼らの手助けにもなるだろう。


「レッドドラゴンなら、前にも倒したから余裕ね!」

「ああ、だが……今回は試したいことがあるんだ」


 俺はクラリスに提案をした。


「前にレッドドラゴンを倒したときは、ヤツの脚の付け根部分を狙っただろ?」

「たしか、そうだったわね」

「そのときのレアドロップアイテムが《龍玉》だったわけだ」


 そう、つまりは龍玉の会得条件が、足元の部位破壊にあるかもしれない……というのが俺の仮説だった。

 なので、今回は別の部位を攻撃してみることにする。

 そうすれば、なにか別の素材をドロップするかもしれない。


 ――グオオオオオオ!


「さっそく一体お出ましだ……!」


 俺はレッドドラゴンの、胴体部分めがけて放った!


斬空剣エアスラッシュ!」


 ――ズバ!

 ――キン!


 しかし、レッドドラゴンのお腹部分は、分厚い鱗に守られていて、攻撃をはじかれてしまった。


「くそ、固いな……!」


 これは溜め斬りをお見舞いするしかなさそうだな……。

 だが、強力なドラゴンに……しかもその腹に溜め斬りを当てるとなると、至難の業だ。


「ロイン! いつもみたいに私が引き付ける!」

「ああ、頼む……!」


 クラリスが挑発アピールを放った!

 ドラゴンはクラリスの方めがけて、突進していく……!

 さすがのクラリスの大盾も、ドラゴンの巨体を受け止められるのか……!?


 ――ドドドドドドドドド!!!!


 ドラゴンは我を忘れて、クラリスに突っ込もうとしている。

 くそ……さすがにこれはマズイんじゃないのか!?

 俺は咄嗟に、クラリスに駆け寄ろうとするが……。


「大丈夫よロイン! 盾火砲シールドビーム――!」

「…………!?」


 クラリスは、まったく怯むことなく、盾をまっすぐに構えていた。

 そして、盾から盾火砲シールドビームを放った――!

 盾に向けてまっすぐに進行していたドラゴンは、咄嗟に進路を変更できず……。


 ――シュウウウウウ。

 ――キュインキュインキュイーン。


 ――ドゴーン!!!!

 ――グオオオオオオオオオオ!?!?!!??!?!?!?


 ドラゴンの顔面に、強烈な光線が炸裂する……!

 顔面が焼けただれたドラゴンは、その場でバランスを失い、倒れた。

 あまりの痛みと眩しさに、もだえ苦しんでいる。


「よし! ダウンをとった! ロイン、今よ!」

「さすがクラリス! うおおおおおおお!」


 俺は急いでドラゴンの腹に回り――。


溜め斬りソードバースト雷撃剣サンダーソード重ねがけえええ――!!!!」


 雷を帯びた溜め斬りをお見舞いする……!

 さらに戦闘前には必ず身体強化パワーアップもかけているから、威力はものすごいものになる……!


 ――バリリリ!!!!

 ――ズドーーーーーーーン!!!!

 ――グシャァアアアア!!!!


 俺の剣が、ドラゴンの固い鱗を粉砕する!

 そして、剣は腹の内部にまで達し……。

 ドラゴンの体中を電撃が暴れ回る!


「やったぁ……!」


 俺とクラリスはハイタッチ。

 以前は弱点の足元を狙う作戦だったが……。

 今回はドラゴンの一番固い部分を破壊しての討伐だ。

 これで、以前と違う素材が出ればいいのだが……。


「さて、ドロップアイテムは、と」


 俺はドラゴンの腹を探る。


「あった……!」



龍光石ドラゲナイト

レア度 ★×11

ドロップ率 0.03%(腹部破壊により会得)

説明 龍の腹の中で作られる石。



「こ、こんな石……みたことない……!」


 ゴツゴツとした石だったが、ピカピカと輝いていてとても綺麗だ。

 これはきっと、特殊な装備の素材に使えるに違いない。


「やはり、ドラゴンにも部位破壊によってさまざまなドロップアイテムがあるらしい……」


 これは新たな発見だった。

 そうとなれば、レッドドラゴンをいろんな倒し方で倒してみよう!

 俺たちはいろんな部位のドラゴン素材を集めまくった。

 そしてそれを、どんどんアイテムボックスにしまっていく。


「よし……このくらいでいいだろう」


 ほとんどの部位を攻略し終え、俺たちは街へ帰還する。

 そして、向かったのはいつもの防具屋だ。


「いらっしゃい……って、ななななななんだその石は……!?」


 防具屋の親父は、俺の持ってきた《龍光石ドラゲナイト》に目を丸くして驚いた。


「こいつは驚いた……《龍光石ドラゲナイト》じゃねえか!」

「知ってるのか……!?」


 まさか既に発見されていた素材だとはな……。

 俺以外にも、ドラゴンの固い腹をわざわざ破壊して倒すヤツがいるんだな……。


「ああ、だが……これは滅多にお目にかかれねえ……。俺もこうして実物を見たのは2回目だ。まってろ……今最高の防具を仕上げてやるからな」

「ああ、それはありがたい。でもちょっと待て。これらの素材も頼めるか……? 全部使ってくれて構わない。とりあえず今できる最高の防具をくれ。金もいくらでも払おう」


 俺はアイテムボックスを取り出した。

 そして……。

 今日集めたレッドドラゴンの素材をドバァっとぶちまけた。


 ――ドドドドドドドドド。


「……って、おいおい……! こいつはどういうお祭り騒ぎだよ……!?」

「まあ、ちょっとな。今日はいろいろ頑張った」

「こいつは腕がなるぜ! こんなにふんだんに素材を使ったことなんてねえ! 職人冥利に尽きるってもんだぜ!」


 親父は部下に素材を奥の倉庫にしまわせた。

 どうやら防具屋としても、これほどの素材に恵まれた仕事は珍しいようだ。

 基本的には、少ない素材でどう既存の防具と差別化をはかるかっていうのが、防具屋の仕事だからな。


「これだけ素材も予算もあれば、史上最高の防具が作れる。約束するぜ! これは世界が揺れるぞ……!」


 親父はまるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のような目をしていた。

 それだけやる気になってもらえると、依頼したこちらとしても頼もしい。


「じゃあ、あとは頼んだよ」

「おう! 他の仕事は投げ出して、真っ先に作るぜ!」

「お、おう……」


 半分「いいのか……? それ」と思いながらも、俺は防具屋を後にした。

 防具が仕上がれば、いよいよ魔王軍幹部に殴り込みだ!

 あのバカ勇者より先に、俺が世界を脅威から救ってやる……!

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