第26話 スキル厳選4


溜め斬りソードバースト――!」


 俺が最初に試したのは溜め斬りスキルだ。

 普通に斬るよりも数十倍の威力で攻撃できる。

 その分隙は多いが……。


 ――ブン!

 ――ドガーン!


「す、すごい威力だわ……」


 前までなら大きな岩くらいしか壊せなかったが、溜めを使うと壁一面を大幅に抉るほどの威力になった……。

 こんなもの、人間に向けて撃ったら確実に粉々になるな……。


雷撃剣サンダーソード――!」


 ――ビリリィイイ!!


 雷撃剣は剣先に雷を帯びさせるスキルのようだ。

 これと溜め斬りを組み合わせたら……どんな威力になるんだろう。


「今のロインなら、ドラゴンだって倒せそうね」

「はは……そりゃあ無理だろ……さすがに」


 次に使ったのは壁破壊テルミトスキルだ。

 これはどうやらダンジョンの壁を破壊できるらしい。


「おお! これならダンジョンの道を無視して進める!」

「隠れてるモンスターなんかも探せそうね!」


 さっそく俺はそれを、壁に向けて放った!

 もしスキルメイジの巣でも見つけられたら、儲けものだ。


 ――ドゴーン!


「あ……」


 だが、壁の中から出てきたのは別のモンスターだった。


「ど、ドラゴンんんんんん……!?」


 そう、なんと壁の向こうには、ドラゴンが眠っていた。

 真っ赤なドラゴン、レッドドラゴンだ。


 ――ブオオオオオオ!!!!


 ドラゴンは怒り、こちらへ殺意を向けてきた。

 俺たちに向けて、炎を吐く!


「ロイン! 危ない! 私の後ろに!」


 そしてクラリスはスキルを使った。


反射盾リフレク――!」


 ――キュイン!


 すると、どうだろう。

 ドラゴンのブレスが盾に跳ね返り、ドラゴンへと襲い掛かる!


 ――グオオオオ!?


 ドラゴンもびっくりしているのか、自分の吐いた息に顔をしかめる。

 しかし、ドラゴンに火は効かないようで……。


 ――グオオ!!!!


「え……さらに怒ってる……!?」


 ドラゴンの怒りに余計に火をつけてしまっただけだったようだ。

 まあ、自分の息でダメージを負うわけないか……。


「ロイン! ど、どどどどうしよう!?」

「しょうがない……任せておけ!」


 ドラゴンの怒りはとうてい静まらなそうだ。

 俺は剣を抜いた。

 さっそくスキルを使いたいところだ。


弱点調査ウィークサーチ――! 見えた……!」


 俺がスキルを使うと、ドラゴンの弱点部分が目に映った。

 脚の付け根部分が真っ赤にハイライトされている。

 俺はそこを狙い、剣で攻撃する……!


雷撃剣サンダーソード――!」


 ――ビリリィイイ!!


 ――ギャオオオン!


 ドラゴンは悲鳴を上げてのけぞった。

 雷撃のせいで、少し痺れてもいるようだ。


「よし、いまだ! 溜め斬りソードバースト――!」


 ――ブン!!!!


 俺は力を数秒溜め、ドラゴンに向けて叩きつけた!


 ――ズシャアアア!


 ドラゴンは避けることもできずに、その場に倒れた。


「ふぅ……」

「す、すすす……すごいわロイン! ホントにドラゴンを倒しちゃうなんて……!」

「あ、ああ……倒せちまったな……」


 まさか俺もこんなことになるなんて……。

 スキルというのはこうも人を強くするのか……。


「ドラゴン……こんなところに生息していたなんてね……」

「ああ、そうだな……。ギルドに報告しておかなくちゃな」


 こういったダンジョンの調査も、冒険者の仕事の一つだ。

 仮にクエストが出ていない場合でも、こういった情報を伝えるだけで報酬が出る。

 ドラゴンほどの危険な脅威を排除したとなると、またランキングが上がってしまうだろうな……。


「な、なぁ……この手柄、クラリスのものに出来ないか?」

「べ、別にいいけど……なんで?」

「いやぁ……さすがに一位とかになると、また勇者に絡まれそうなんだよ……」

「そ、そうなんだ……いろいろ大変だね」


 一応、今回のことはクラリス名義で調査書を提出しておこう。

 俺とクラリスのランクが近い方が、今後何かと動きやすそうだしな……。

 おっと、それよりドラゴンのドロップアイテムだ。


「どれどれ……」



龍玉りゅうぎょく

レア度 ★★★★★★★★★★

ドロップ率 0.0001%

説明 非常に貴重な、神話級の素材



「ま、まじか……龍玉……!?」

「そ、それって……かなりすごいんじゃない!?」

「あ、ああ……」


 俺も話には聞いたことがある。

 これはまたすごい装備が作れそうだぞ……。

 まさか生きてるうちに、現物を目にすることになるなんてな……。


「じゃあそろそろ……いったん街に帰りましょうか?」

「そうだな……転移テレポート――!」


 俺たちは転移を使って、ミレージュの街まで戻って来た。

 さっそく、ギルドへ行って報告をしよう。





「で……ロインさんはなんの報告に来たんでしょう……?」


 サリナさんは笑顔でそう言った。

 だが、その目は俺のよこのクラリスに釘付けだ。


「あ、あの……ドラゴンを討伐したので……その報告に」

「じゃなくて……そちらの女の子は……?」


 正直に言うしかないな……。

 俺は、覚悟を決めた。


「サリナさん!」

「は、はい……」

「俺はサリナさんが好きです! 絶対に幸せにします!」

「あ、ありがとうございます……?」

「なのでクラリスとも交際していいですか!」

「えぇ……!?」


 俺は真剣な目で、サリナさんを見つめる。

 ギルド中から視線を浴びるが、気にしない。

 俺はこの2人を平等に、真剣に愛し、幸せにするんだ。


「はぁ……そういうことですか……。わかりました。ロインさんに一生ついて行きますよ」

「ほ、ほんとですか!?」

「ええ……でも、絶対二人とも愛してくださいね? それと、今後も女の子を連れてきたらちゃんと紹介すること! それが条件です。いいですね?」

「は、はい……!」


 俺は嬉しくて泣きそうだった。

 本当に好きな人が、2人とも俺を認め、受け入れてくれたんだ。

 俺はここまで、必死に、勝ち取って来た。

 あの悔しかった日々が報われた気がした。


「そうじゃないと……私もクラリスちゃんも許しませんからね! ねぇ、クラリスちゃん?」

「は、はい! そうですねサリナさん! ロインには絶対に幸せにしてもらいましょうね、私たち」


「「ねー!」」


 おやおやこれは……。

 どうやらサリナさんとクラリスは結託したようだ。

 まあ仲良くやってくれるのはいいけど……圧が少し怖い。

 これはなんとしても二人を幸せにしなくちゃな!

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