第25話 スキル厳選3
「クラリス……じつは……俺」
戻って来た俺はクラリスに、自分の状況について正直に話した。
嘘をついてこのまま流れでクラリスと夜を共に過ごすよりは、そのほうが誠実に思えたのだ。
しかし、クラリスの反応は意外なものだった。
「ロインって……けっこう真面目なんだね」
「う……わ、悪いか……?」
俺は田舎で暮らしていたせいもあって、そういうところがある。
「でも……嬉しい。それだけ真剣に、私のことを考えてくれたんだね」
「ああ……クラリスのことは大切にしたいと思ってるよ。せっかくの縁だし。つまらないことでそれを壊したくないんだ」
もしもクラリスにサリナさんのことを話さないでいたら、後ろめたさがいつまでも残っただろう。
そしてそれは……パーティーの崩壊にもつながりかねない。
「でも、今どきロインみたいな人って珍しいと思うよ? 一夫多妻って普通のことだしさ。複数の女生と関係を持つ人も多いよ……やっぱり」
「そ、そうなのか……? 俺の地元だとそんな感じじゃなくて……」
「それに、きっとそのサリナさんって人も気にしないと思うな。どっちみちロインのことが好きなら、私がロインとそういう関係になっても、大丈夫だと思う」
「そういうものなのか……」
サリナさんにも、クラリスのことはきちんと説明しよう。
俺はどちらも大切にしたいと思った。
一夫多妻制が普通のことだとは知っていたが、それでも自分がそんなにモテる未来は想像していなかったなぁ……。
「く、クラリス……本当にいいのか?」
「うん……私、最初からロインのこと好き……。じゃないと……私みたいなわざわざソロ盾でやってきた人間が、いまさらパーティー組んだりしないって」
「そ、そうか……ありがとう。俺も、クラリス……好きだ」
「私……誰にでもこうじゃないんだよ? パーティーだって組むの初めてだったんだから、ロインだけだからね?」
俺はクラリスに優しく口づける。
据え膳食わぬはなんとやら!
なんだか何もかもが上手くいっている。
冒険者として活躍することで、俺にも自信がついたからなのかもしれない。
その晩、俺はたくさん運動して汗をかいた。
◇
「ん……」
朝、チュンチュンと鳴く鳥の声で目が覚める。
俺は大きく伸びをした。
「おはようロイン」
横でクラリスが寝ながら言った。
俺はそっとクラリスの頭を撫でる。
「ああ、おはようクラリス」
さて、飯を食ったら、昨日のスキルブックを確認しよう。
スキルブックの中身次第で、まだここに滞在するかどうかが決まる。
「じゃあ、開けるね?」
「ああ、頼む」
俺たちはスキルブックを一つずつ確認していく。
【
【
【
【
【
【
【
【
「おお……! けっこういいのが集まったな」
「でも、いくつかかぶりがあるわね……」
俺たちが使えそうなのはこの10冊といったところだ。
あとの5冊は魔法関連だったので、売りにいくことにしよう。
魔法は魔力がないと使えないからな……。
そのへんも後々、レアドロでなんとかなればいいんだが……。
「とりあえず、この使えそうなやつは今使ってしまおう」
「そうね」
【
【
この二つは、かぶりがあるので、俺たちで一つずつ使う。
これで二人とも、かなり自由に動けるようになる。
【
このスキルは明らかに盾向けだから、クラリスに。
残りの5冊は、クラリスが遠慮するので、俺が使わせてもらった。
これでかなり戦闘力が上がったはずだ。
「ためしに使ってみよう」
俺たちは外に出て、スキルを使う。
「「
すると、身体の内側から力が湧いてくるのを感じた。
まるで自分の身体が何倍にも強化されたようだ。
「すごい! 重たい物でも軽々持てるぞ!」
「脚も速くなった気がするわね」
さらには――。
「「
このスキルは、一瞬で距離を詰めるのに役立つ技だ。
回避にも使えるし、接近戦でも役に立つ。
「あはは! すごい! 風になったみたい!」
俺たちはそこらじゅうを高速で走り回った。
他にも試したいスキルはあるが――。
「戦闘用スキルはさすがになぁ……ダンジョンにいかないと」
「ねえロイン、このスキルはなに?」
「え……?」
そう言えば、一冊残っていたな。
【
聞いたことないスキルだったから、これだけはまだ使っていない。
「これを使えば、ダンジョンに行けるんじゃない……?」
「そんな馬鹿な……」
だって、そんなことが出来たら便利すぎる。
転移なんてありえない……。
もしできたとしても、せいぜい短距離だろう……。
「まあ、使ってみるか」
俺はさっそく、試してみる。
「
クラリスと手を繋いで、死の火山を思い浮かべる。
すると――。
――シュン!
「ま、まじかよ……」
「すごいわ……!」
本当に死の火山まで一瞬で移動できてしまった。
これは革命的だ……。
「じゃあせっかくだから、少し狩をしていこうか」
念のため、装備も着けてきたし、冷却ポーションも持ってきた。
ダンジョンでしか試せないスキルを試そう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます