第25話 スキル厳選3


「クラリス……じつは……俺」


 戻って来た俺はクラリスに、自分の状況について正直に話した。

 嘘をついてこのまま流れでクラリスと夜を共に過ごすよりは、そのほうが誠実に思えたのだ。

 しかし、クラリスの反応は意外なものだった。


「ロインって……けっこう真面目なんだね」

「う……わ、悪いか……?」


 俺は田舎で暮らしていたせいもあって、そういうところがある。


「でも……嬉しい。それだけ真剣に、私のことを考えてくれたんだね」

「ああ……クラリスのことは大切にしたいと思ってるよ。せっかくの縁だし。つまらないことでそれを壊したくないんだ」


 もしもクラリスにサリナさんのことを話さないでいたら、後ろめたさがいつまでも残っただろう。

 そしてそれは……パーティーの崩壊にもつながりかねない。


「でも、今どきロインみたいな人って珍しいと思うよ? 一夫多妻って普通のことだしさ。複数の女生と関係を持つ人も多いよ……やっぱり」

「そ、そうなのか……? 俺の地元だとそんな感じじゃなくて……」

「それに、きっとそのサリナさんって人も気にしないと思うな。どっちみちロインのことが好きなら、私がロインとそういう関係になっても、大丈夫だと思う」

「そういうものなのか……」


 サリナさんにも、クラリスのことはきちんと説明しよう。

 俺はどちらも大切にしたいと思った。

 一夫多妻制が普通のことだとは知っていたが、それでも自分がそんなにモテる未来は想像していなかったなぁ……。


「く、クラリス……本当にいいのか?」

「うん……私、最初からロインのこと好き……。じゃないと……私みたいなわざわざソロ盾でやってきた人間が、いまさらパーティー組んだりしないって」

「そ、そうか……ありがとう。俺も、クラリス……好きだ」

「私……誰にでもこうじゃないんだよ? パーティーだって組むの初めてだったんだから、ロインだけだからね?」


 俺はクラリスに優しく口づける。

 据え膳食わぬはなんとやら!


 なんだか何もかもが上手くいっている。

 冒険者として活躍することで、俺にも自信がついたからなのかもしれない。

 その晩、俺はたくさん運動して汗をかいた。





「ん……」


 朝、チュンチュンと鳴く鳥の声で目が覚める。

 俺は大きく伸びをした。


「おはようロイン」


 横でクラリスが寝ながら言った。

 俺はそっとクラリスの頭を撫でる。


「ああ、おはようクラリス」


 さて、飯を食ったら、昨日のスキルブックを確認しよう。

 スキルブックの中身次第で、まだここに滞在するかどうかが決まる。


「じゃあ、開けるね?」

「ああ、頼む」


 俺たちはスキルブックを一つずつ確認していく。



高速移動スピードアップの書】×2

身体強化パワーアップの書】×2

転移テレポートの書】

壁破壊テルミトの書】

反射盾リフレクの書】

溜め斬りソードバーストの書】

弱点調査ウィークサーチの書】

雷撃剣サンダーソードの書】



「おお……! けっこういいのが集まったな」

「でも、いくつかかぶりがあるわね……」


 俺たちが使えそうなのはこの10冊といったところだ。

 あとの5冊は魔法関連だったので、売りにいくことにしよう。

 魔法は魔力がないと使えないからな……。

 そのへんも後々、レアドロでなんとかなればいいんだが……。


「とりあえず、この使えそうなやつは今使ってしまおう」

「そうね」


高速移動スピードアップの書】

身体強化パワーアップの書】


 この二つは、かぶりがあるので、俺たちで一つずつ使う。

 これで二人とも、かなり自由に動けるようになる。


反射盾リフレクの書】


 このスキルは明らかに盾向けだから、クラリスに。

 残りの5冊は、クラリスが遠慮するので、俺が使わせてもらった。

 これでかなり戦闘力が上がったはずだ。


「ためしに使ってみよう」


 俺たちは外に出て、スキルを使う。


「「身体強化パワーアップ――!」」


 すると、身体の内側から力が湧いてくるのを感じた。

 まるで自分の身体が何倍にも強化されたようだ。


「すごい! 重たい物でも軽々持てるぞ!」

「脚も速くなった気がするわね」


 さらには――。


「「高速移動スピードアップ――!」」


 このスキルは、一瞬で距離を詰めるのに役立つ技だ。

 回避にも使えるし、接近戦でも役に立つ。


「あはは! すごい! 風になったみたい!」


 俺たちはそこらじゅうを高速で走り回った。

 他にも試したいスキルはあるが――。


「戦闘用スキルはさすがになぁ……ダンジョンにいかないと」

「ねえロイン、このスキルはなに?」

「え……?」


 そう言えば、一冊残っていたな。


転移テレポートの書】


 聞いたことないスキルだったから、これだけはまだ使っていない。


「これを使えば、ダンジョンに行けるんじゃない……?」

「そんな馬鹿な……」


 だって、そんなことが出来たら便利すぎる。

 転移なんてありえない……。

 もしできたとしても、せいぜい短距離だろう……。


「まあ、使ってみるか」


 俺はさっそく、試してみる。


転移テレポート――!」


 クラリスと手を繋いで、死の火山を思い浮かべる。

 すると――。


 ――シュン!


「ま、まじかよ……」

「すごいわ……!」


 本当に死の火山まで一瞬で移動できてしまった。

 これは革命的だ……。


「じゃあせっかくだから、少し狩をしていこうか」


 念のため、装備も着けてきたし、冷却ポーションも持ってきた。

 ダンジョンでしか試せないスキルを試そう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る