第二章 ハック&スラッシュ 編

第21話 スキルブック屋さん


 俺は自分をさらに強化するべく、スキルを覚えようと考えた。

 俺には攻撃で使えるスキルがない。

 しかも、田舎でずっと冒険者とは縁遠い生活を送って来たせいで、その会得方法もわからない。

 いったいスキルとはどうやって後天的に得るものなのだろうか。


 【ジョブ】などがあればスキルポイントやレベルアップなどという方法があるらしいが……。

 あいにく俺には【アイテム師】や【テイマー】のようなジョブなんてものもない。


 勇者やグフトックですら、俺にスキルを撃ってこなかった。

 まあ勇者は油断もあったのかもしれないが……。

 きっとスキルというやつは、かなり得にくいものなのだろうな。

 俺の【確定レアドロップ】のスキルもたぶん先天的なものだろうし……。


「え? スキルですか……? でしたら……スキル屋さんにでも行ってみれはどうですか?」

「スキル屋さんですか……そんなものが……」


 サリナさんによると、どうやらこの街でもスキルブックとやらが購入できる店があるそうだ。

 幸い、俺は先のランキングボーナスで、大金を得ている。

 スキルブックを買う金なら、十分にあった。


「ありがとうございます。今日行ってみます」


 俺はサリナさんに礼を言ってギルドを出た。

 あれから何度かサリナさんとは食事をする仲になった。

 また今度、なにかプレゼントでもしよう……。





 スキル屋さんは街の大通りにドーンと店を構えていた。

 外装からもわかるように、かなり金額の張りそうな店構えだ。


「いらっしゃい」

「あ、どうも……」


 中に入ると、魔女の帽子をかぶった怪しいお姉さんがカウンター越しに出迎えてくれた。

 どうやら彼女一人で切り盛りしている店らしい。

 壁中に本棚が並んでいて、そのどれもがスキルブックらしかった。


「あの……俺、まだスキルを持ってないんですけど……なにかおススメはありますか?」

「ああ、だったら、適当にいいものを見繕ってやるよ」

「お願いします」


 数分して、お姉さんは何冊かの本を持ってきてくれた。


【水の魔導書1】

【火の魔導書1】

【風の魔導書1】


「おお! なんだかすごそうだ! これは……どういう魔法が使えるんですか?」


 俺は興味を持って聞いてみる。

 実際にはどんなことができるのか、本の名前からではイメージできない。


「そうだねぇ……この火の魔導書1なら……」


 とお姉さんは指先に火をともした。

 ――ボウ!

 まるで蝋燭の火くらい、ちいさなちいさな光源。


「え……? こ、これだけですか……?」

「ああ、そうだけど……?」


 俺の想像では、もっと巨大な火炎が飛び出るようなものだと思っていたが……。


「あの……もっと強いのはないんですか? こう、戦闘で使えるような」

「そうだねぇ……うちにはあまりそういったものはないかもねぇ。あっても生活魔法系ばっかだよ」


「えぇ……?」

「あるにはあるんだけど、かなりの高額だよ?」

「お、お金はあります! 見せてください!」


 俺はランキングボーナスで、一億近い資産がある。

 スキルブックくらい、簡単に数冊手に入るだろう。


「ほら」


 お姉さんはいぶかしみながらも、高額商品の一覧を見せてくれた。

 高額なスキルブックは盗難防止のため、奥に大切に保管してあるんだそうだ。

 俺はその金額を見て、目を丸くした……。


「い、いいいい……100,000,000G……!?」


 まさか一冊あたり、安い物でも俺の全財産くらいはある。

 高い物だと2億3億は当たり前の世界だ。


「強力なスキルブックはかなりのレアドロップアイテムでねぇ……。冒険者たちはみんな、たまたま手に入れても自分のために使っちまうのさ。だからこういったスキル屋にあるのはどれも実用性には欠けるものばかりだよ」

「そうなんですか……」


 まあ確かに、そんな手に入りにくいものをわざわざ売ろうという冒険者は少ないかもしれない。

 って……今、お姉さんはなんて言った!?


「あ、あの……! 今、レアドロップアイテムって、言いましたか!?」

「ああ、そうだけど……やめときなって。あんなもの、狙って手に入るものじゃないよ」


 俺の能力を知らないお姉さんは、俺を白い目でみた。

 まあ、普通にやっていたら一生手に入らないようなものなんだろうな……。

 お姉さんからすれば俺はぶっ飛んだばくち打ちにでも見えるのだろう。

 でも、俺にとってはそんなことなんの問題にもならない。


「教えてください! どんなモンスターがスキルブックをドロップするのか!」

「うーん……教えてもいいんだけどねぇ……。あんたみたいな若いもんが、スキルブックを求めて無駄に時間を失ったり、無駄死にする様を何度も見てきたからねぇ……それなりの覚悟ってもんが必要だよ」


 たしかに、俺としたことがどうかしていた……。

 スキルブックっていうのは、貴重なものなら億からする代物だ。

 そんなアイテムの在処を教えてもらおうっていうのに、タダってわけはいかないよな。

 情報にはそれなりの対価が必要なはずだ。


「分かりました……情報のかわりに、対価をお支払いします」

「って……アンタ……こんなにかい!?」


 俺は全財産のほとんどをその場に置いた。

 そう、ランキングボーナス97800000G全額だ。

 あまりにもの大金なので、まだ現金化はしていない。

 なので小切手ひとつ渡せばいい。


「俺にはもう必要のない金ですので」

「そ、そうなのかい……?」


 だって、スキルブックをドロップするモンスターさえわかれば、俺はスキルブックを取り放題だ。

 そうなれば、何億でも手に入るはず。

 スキルブックへの情報料としては、これでも安いくらいだろう。


「わ、わかったよ……本気なんだね、でも……くれぐれもスキルブックが簡単に手に入るなんて思わないことだよ。あんなのは、運否天賦のものでしかないからね」

「わかってます! 大丈夫です!」


 俺は、お姉さんから内緒でスキルブックの情報を手に入れた。

 スキルブックは、【スキルメイジ】というモンスターから手に入るそうだ。

 しかし、その確率は0.001%にも満たないという。


 多くのスキルメイジは生活魔法などの簡単な魔法しか落とさない。

 しかもスキルメイジ自体、エンカウントしにくいレアモンスターだという。

 運よくスキルメイジに出会っても、そいつを倒したからといって、レアなスキルブックが落ちる訳ではないのだ。


「まあ、俺の能力さえあればなんとかなるだろ」


 俺はスキルメイジが多く生息するという場所に向かった――。


 死の火山――デスルーラー。

 多くの超強力な魔物が住むという、危険度S級のダンジョンだ。


 だがその前に、まずは腹ごしらえだな!



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【あとがき】


カクヨムコン用に新連載をはじめました!

7万字書き溜めてあります!渾身の出来です!

絶対面白いのでぜひ読みに来てください!


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🎄森の奥の大賢者~魔力ゼロのゴミと言われ大魔境に捨てられたけど、最強のドラゴンに拾われ溺愛される~記憶がないけど2度目の人生らしいので2倍のスキルスロットと史上最強の魔法適正で非常識なまでに無双します

https://kakuyomu.jp/works/16817330649133742666/episodes/16817330649133790136

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