第19話 手のひら返し【三人称視点】

※少し登場人物が多いので、一時的に三人称です。





 ゴーレムに腕を折られたグフトックは、療養のために寝込んでいた。

 だがしかし、クエストを失敗したグフトックには、ホテルをとるような金銭的余裕はなく……。

 彼は馬小屋の軒下に、小さな簡易ベッドを作ってもらい、そこで寝ていた。


「くそぉ……どうして俺が……げふんげふん……」


 骨折した腕を治療する金もなかった彼は、いまだに腕の痛みに耐えていた。

 しかも、ダンジョン内の不衛生な環境にいたせいで、腕はパンパンに膨れ上がっている。

 さらには野宿で雨風にさらされ、風邪までひいていた。


「おいお前ら! 食べ物をとってこい……!」


 グフトックはパーティーメンバーのプラムとナターリアに、強い口調で命令する。

 傭兵であるカルティナは既に、グフトックの元を去っていた。

 グフトックに命令され、プラムとナターリアはしぶしぶそれに頷いた。


「は、はい……」


 二人は病気のグフトックの世話をするうちに、なぜ自分たちはこんなことを……?

 と冷静に考え始めていた。

 もはや金もなく、今後戦えもしないであろうグフトックに従う意味はない。

 彼はもはや強い男ではなくなったのだ。





 街へ出たプラムとナターリアは、グフトックについて不満をぶちまけあっていた。


「なんかもう……グフトックさまって落ち目よねぇ……」

「まあ、もう終わってるわよね、あの男」


 一度冷めてしまったら、もうあとは冷え切るだけだ。

 二人は憑き物が落ちたかのように、グフトックを見限ってしまっていた。


「今まではそれなりに強くて、かっこいいひとだと思っていたんですけどね……」


 とナターリア。

 しかしプラムはまた違った意見を持っていた。


「そう? 顔はもともとよくはないでしょ……。ちょっと強いと思ってたから、付き合っていただけよ。あんなの、冒険者として活躍できないなら無価値な男よ……」


 などと散々な言いようだ。

 それもそのはず、今のグフトックは病気を理由に、さらにわがままの限りを尽くしていた。

 そんな彼が見限られるのも、当然と言っていいだろう。


「しかもギルドへの賠償金で借金まみれでしょ? そんなのに巻き込まれる義理はないわよ……」

「ですねぇ……このままとんずらしちゃいましょうか」


 そう、グフトックにはギルドから多額の請求がされていた。

 ギルドの決まりで、ピンチに陥った冒険者は、助けられた際、その助けた冒険者に対して謝礼金を支払わなければならないのだ。

 つまりは、グフトックは今、ロインに対して多額の借金を抱えていることになる。

 そんな彼に愛想を尽かすのは、まさに当然の理だ。


「そうね、もうあんな男、放っておいてもいいでしょ。どうせあの様子じゃ助からないわ」

「そうですね……! グフトックさまには悪いですけど、借金地獄は嫌です……」


 そうやってグフトックへの愚痴をいいながら街を歩く二人。

 そんな2人の耳に、ある噂が入って来た。


「おい、あの勇者アレスターが倒されたらしいぞ!」

「ま、まじかよ……! どいつにだ……!?」

「それが……無名の新人冒険者らしい、今ランキング5位のやつだそうだ」

「あのロインてやつか……!?」


 そこまで何気なくその話を聞いていたプラムとナターリアだったが……。

 ロインという名前を聞いて、ぴたと足を止める。

 そう、2人はその名前に聞き覚えがあった。


 以前グフトックがパーティーから追放したあの荷物持ちのロインだ。

 まさかとは思いつつも、2人は真相を確かめずにいられない。


「ねえあの、ちょっと……!」

「は、はい……?」


 二人は噂をしていた男性たちに、声をかけた。


「その、ロインって人……。ロイン・キャンベラスのことですか……?」

「あ、ああ……たしかそんな名前だったなぁ」

「…………!?」


 二人は絶句した……。

 まさか、あのロインが勇者を圧倒するまでになっているなんて……!?

 信じられないという思いでいっぱいだったが、それは問題ではない。

 二人にとっては、これはいいニュースだったのだ。


 かつての知り合いが、今ランキング5位になっていて、しかも勇者まで倒してしまうだなんて……。

 グフトックというパーティーリーダーを失った彼女らが考えることは一緒だった。

 ランキング5位ともなれば、かなりの収入が期待できる。


「ロイン……! 使えない男だと思ってたけど……私たちの目が曇っていたようね……」

「そうですね……。今なら乗り換えるチャンスです! 私たちの美貌さえあれば……! あんな男、ちょろいですよ!」


 そして、2人はロインを探し出し、声をかけた。

 ロインは二人のことを覚えていたようで、話を聞いてくれた。


「あ、あの……! ロインさん、以前は失礼なことばかりしてすみませんでした!」

「え、あぁ……まあ……もういいけど……。謝ってくれたのは嬉しいけど……」

「ロインさん、やっぱり優しい! どうですか! 私たちをパーティーに入れてくれませんか! なんでもしますから!」


 二人は優しいロインのことだから、簡単に受け入れてもらえると思っていた。

 だがしかし、ロインは態度を変えて、にらみつけてきた。


「いや……それはムリだろ……」

「…………へ?」



===========================

【あとがき】


カクヨムコン用に新連載をはじめました!

7万字書き溜めてあります!渾身の出来です!

絶対面白いのでぜひ読みに来てください!


↓↓↓↓↓


🎄森の奥の大賢者~魔力ゼロのゴミと言われ大魔境に捨てられたけど、最強のドラゴンに拾われ溺愛される~記憶がないけど2度目の人生らしいので2倍のスキルスロットと史上最強の魔法適正で非常識なまでに無双します

https://kakuyomu.jp/works/16817330649133742666/episodes/16817330649133790136

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る