第9話 ゴーレムのレアドロ!


 デモンズブレードを手にした俺は、さっそく難しめのクエストを受けることにした。


「よし……これだな」


 【ゴーレムの討伐】

 C級ダンジョンに現れたゴーレム一体の討伐。


 俺はそう書かれた紙をクエストボードから引きちぎると、冒険者ギルドの受付へ持っていく。

 どうやらゴーレムが変な場所に現れたらしいな。

 本来ゴーレムはB級のモンスターだ。

 それがC級のダンジョンに現れたということは、そこを狩場とするC級冒険者にとっては危険極まりない。

 なのでそういう場合はこうして討伐クエストが張り出されるのだ。


「このクエストを受けたいんですが……」

「はい、わかりました。ちょっとまってくださいね……」


 受付カウンターはいくつかあったが、俺はサリナさんにクエスト受注を申し込んだ。

 別に、サリナさんと話がしたかったわけではない。

 たまたま、そこが空いていただけのことだ。


「……って、ロインさんこれ……ゴーレムの討伐クエストですよ!? わかってますか!?」

「え……、はい。わかってますけど……?」


 まあ、驚かれるのも無理はない。

 なにせ俺はつい先日までスライムすら倒せなかった男だからな。


「さすがに、危ないですよ!?」

「大丈夫ですよ。もう前までの俺とはちがうんです」


「た、たしかに……その剣はすごそうですね」

「ええ、こいつの試し切りにはもってこいの相手です」


 ゴーレム、それは物理的な耐久性に優れたモンスターだ。

 並みの剣では歯が立たず、それゆえB級の危険度に指定されている。

 もちろん、冒険者ランク最下位の俺に相手できるような相手ではない。

 だがこの剣――デモンズブレードがあれば別だ。

 こんな威力の剣は、A級冒険者の持っている装備でも見たことがない。


「まあ、任せておいてくださいよ! すぐに倒してきますから」

「な、なんだかロインさん、最近たくましくなりましたね……!」


「え……そうですかね……」

「これからも、期待してますよ!」


 俺はサリナさんからの熱烈な応援を受け、さらに士気を上げた。

 そして、単身で、巨大な武器を背負い、ダンジョンに潜り込む。







「ここか……」


 俺は目的の場所までたどり着いたが、どうにもゴーレムとやらの気配がない。

 ゴーレムは非生物とだからだろうか……?

 本来ゴーレムがいるはずのあたりをうろうろしていると……。


 ――ゴゴゴゴゴゴ!


「な、なんだ……!? 地震か……?」


 俺の足元がぐらつき始めた。

 ダンジョンの中で地震はよくあることだが……。

 どうもこれはそういったものとは違う感じがする。


「まさか……!?」


 ふと足元を見ると、地面の色が少しまわりと違うことに気づく。


「こ、こいつがゴーレムだってのか……!?」


 そう、どうやら俺は超巨大なゴーレムの上に立っていたらしい。


「話が違うじゃねえか……」


 クエストシートに書いてあった情報では、ごく一般的なサイズのゴーレムだとされていたが……。

 こいつは超特級の大きさだぞ!?

 ゴーレムが周りの岩や鉱物を身体に取り込んで巨大化するというのは、聞いたことがある。

 ゴーレムというモンスターは、その身体自体はまわりの物質を集めて形成したもので、その本体はその中にあるコアだという。


「それにしても、デカすぎねえか……?」


 まさか上に立っているのにも気づかないほどのでかさだとは……。

 おそらくクエストが長い時間放置されていた間に、ダンジョン周りの瓦礫などを取り込んで大きくなったのだろう。

 ゴーレムの討伐クエストなんぞ、誰もやりたがらないものだ。


「だが……! このデモンズブレードのためし斬りには申し分ない相手だ!」


 ゴーレムはその巨体をゆっくりと立ち上がらせた。

 俺はバランスを崩さないようにして、その上を器用に移動する。

 なんとかゴーレムの肩の位置までたどり着き、剣を抜く。


「うおおおおおおお! くらえ! デモンズブレードの最初の獲物となれ!」


 ――ズシャアアアアア!


 俺は巨大な鉄の塊を、ゴーレムの脳天めがけて振り下ろした。


 ――ゴゴゴゴゴゴ。


 すると、ゴーレムのコアは頭部にあったらしく、一発でそれを砕くことに成功した。


「やった……!」


 ゴーレムの強固な身体を傷つけたというのに、俺の武器は刃こぼれ一つしていなかった。

 さすがはデモンズ鉱石44個も使った武器なだけあるな。


 ――ズゴゴゴゴゴ。


 コアを破壊されたことで、ゴーレムの身体をまとっていた岩や瓦礫が、崩れ落ちる。

 俺はなんとかバランスをとりながら、地面に着地した。


「そうだ……ドロップアイテムだ」


 俺は瓦礫をかき分けて、ゴーレムのコアを探し出す。

 ドロップアイテムは、破壊されたコアの横に落ちていた。


「あった……!」



《龍星岩》

レア度 ★★★★★★★★

ドロップ率 0.01%

説明 通称ドラゴンスターと呼ばれる岩。



「こ、これは……!? ドラゴンスターじゃねえか!」


 その名の通り、龍星岩は星のような模様が刻まれた特殊な岩だ。

 龍の落とし物とも呼ばれる素材で、魔力をよく弾く効果がある。


「これはまたいい素材だ!」


 これは防具屋に持ち込もう。

 きっと強力な盾を作ってもらえるに違いない。

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