第10話 ギルドで絡まれる


 ゴーレムを倒した俺は、街に帰ってきた。

 防具屋に寄るのは後にして、まずは冒険者ギルドへの報告だ。


「サリナさん……! クエスト、終わりました」


 俺はゴーレムを倒した証拠となるコアの破片と、クエストシートをカウンターに差し出す。

 するとサリナさんは信じられないという顔で俺をみた。


「え……ロインさん、さっき出ていったとこですよね?」

「あ、まあ……そうですね。数時間前に」


 思ったよりもゴーレムを簡単に倒せたから、あまり時間はかからなかった。

 それもこれも、この超レア武器のおかげだ。


「も、もう倒してきたんですか!? というか、本当にゴーレムを一人で!? あのロインさんが!?」

「え、ええ……まあ。もう今までの俺とは違うってことですよ」


「驚きましたよ……。これは今月のMVPとして表彰されるかもしれませんね」

「が、頑張ります!」


 まあMVPとまではいかなくても、今月で大幅に冒険者ランクが上がるだろうことは間違いない。

 冒険者ランクが上がると、それに応じてクエストボーナスも発生する。

 ギルドとしてはなるべく優秀な冒険者に仕事をしてもらいたいからな。


「ふぅ……でも、さすがに疲れたな。今日はもう休むか」


 サリナさんから報酬を受け取った俺は、ギルド内のテーブルに腰かける。

 そして遠くからクエストボードをなんとなく眺めていた。

 そんな俺に、後ろから話しかけてきた人物が。

 おそらく兜を脱いでいたせいで、俺が誰だかわかったのだろう。


「おい、ロインじゃないか……?」


 げ……グフトック。

 俺が振り向くと、そこには俺を追放したあのパーティーの連中がいた。

 グフトックはいつにもまして機嫌が悪そうだ。

 できればもう二度と会いたくない相手だったが……。


「……グフトック」

「お前、雑魚のくせになにそんな装備してるんだよ! いっぱしの冒険者気どりか? あん? どうせその武器も、盗んできたんじゃねえだろうな」


 相変わらず嫌な奴だな……。

 まあいずれこうなることは分かっていた。

 ギルドに出入りしていれば、必ずグフトックには見つかる。

 そしてこうやって絡まれて、難癖つけられるのは目に見えていた。


「悪いがグフトック、これは全部俺が自力で手に入れたものだ。もうお前といたころとは違う」

「はぁ? スライムも倒せねえお前がか? 俺に腕を折られたのに凝りてねえようだな? こんどこそ再起不能にしてやろうか?」


 グフトックは鼻息を荒くして、腕まくりをする。

 見下していた俺がレアな装備を持っていることに我慢ならないのだろう。

 それにしても、喧嘩っ早いやつだ。


「やれるもんなら……!」

「死ねコラ!」


 グフトックは剣を抜いて、俺に斬りかかる。

 俺はそれを、デモンズブレードで受け止める。

 デモンズブレードは最強の鉱石――デモンズ鉱石をふんだんに使用した最強の武器だ。

 そんなものを、グフトックの普通の武器でぶったたいたら、どうなるか……。


 ――ボキ!


 そう、グフトックの剣は木の枝くらい簡単にぽきっと折れてしまった。


「な……!?」

「俺がスライムすら倒せないだって……? この武器を見てもまだそう思えるか……?」


「て、てめえ! なんだその武器は……!」

「これか……? デモンズ鉱石44個を使用した特注品だよ」


 俺は得意げに、武器を掲げて見せびらかす。

 この際だから、とことんやり返してやろう。

 もう二度と俺にちょっかいをかける気にならないようにな。

 せっかく人生が軌道に乗り出してるのに、邪魔をされるのはごめんだ。

 グフトックに関わると、ろくなことがないだろうからな。


「で……デモンズ鉱石44個!?」


 グフトックの後ろにいた取り巻きの女が驚きの声をあげる。

 たしか彼女はナターリアとかいったか……?

 テイマーの女性だったような気がする。

 グフトックに媚びを売って怯えるような女には興味がないから、うろ覚えだ。


「で、でたらめ言ってんじゃねえぞ!?」

「でたらめじゃない。全部俺が集めてきた素材で作ったものだ」


「っく……! なんでクソ雑魚のてめえがそんなことになってんだよ! 俺といたときは隠していやがったのか……!? やっぱり詐欺師じゃないか!」

「は? 詐欺師はどっちだ? 俺の可能性を信じずに、一切武器を持たせてくれなかったのはそっちじゃないか」


 そう、グフトックは俺が裏切る可能性があるからと、ナイフなどの武器を一切持たせてくれなかった。

 いちおう俺でも、ナイフさえあれば寝込みを襲って殺しを行えるくらいのパワーにはなるわけだ。

 だが、もちろん俺はそんなことをするつもりはなかった。

 ま、戦う気もなかったけどな。

 当然だ、戦わないでいいという約束でパーティーに入っていたのだから。


「とにかく、これ以上俺に関わらないでくれないか?」

「んだとキサマ! スライム倒せなかったくせに! 生意気を言うようになったな!」


「ああ、そうだな。。だが、今は倒せる。ゴーレムだってな」

「な……! そ、ソロでゴーレムだと……?」


 まあ、グフトック程度のお飾り冒険者じゃあ、ソロでゴーレムは厳しいだろうな。

 こいつらはパーティーを組んでやっとのことだろう。


「ほら、その証拠に」

「……!?」


 俺はポケットから【龍星岩】を取り出す。

 さっき手に入れたゴーレムのレアドロ素材だ。


「な……!? 龍星岩だと……!? ドラゴンスター……!? こんなの、ゴーレム100体倒したところで手に入らないレアドロだぞ!?」

「これでわかっただろ? もう俺にお前らは必要ない。追放してくれてありがとう。おかげで目が覚めたよ」


「はぁ……?」

「欲しいものは自分で手に入れる。やりたいことは自分でやる。それが冒険者ってもんだろ?」


「だからどうしたッ……!」

「お前は努力をせずに俺の運なんていう不確かな噂に頼ろうとした。だが、俺は自分で勝ち取ったんだ。だから、文句は言わせない。これは俺が自分で勝ち取ったレアドロだ」


 グフトックはわなわな震えて黙ってるだけで、いつまでたってもどこかへいく気配がなかった。

 だから俺はしょうがなく、その場から立ち去ろうとする。


「おい! どこへいく!」

「宿に戻るだけだが?」


「っく……! 覚えていろよ!」

「いや……俺はもう二度と会いたくないんだけど……?」


 これ以上煽るとめんどくさそうなので、俺は逃げるようにして宿に帰る。

 グフトックのあの顔は忘れられないな……。

 そして俺は、もう二度とあいつらと会わないことを祈って、眠りについた。





――――――――――――――――――


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