第6話 ドロップ率が下がる呪い!?【side:グフトック】
「はっはっは! 無能を追い出して、気分がいいぜ!」
「そうですねグフトックさま!」
俺ことグフトック・ラインベールの言葉に、女どもが同意する。
俺のパーティーは、俺以外ほぼ女で構成されていた。
そのなかでひときわ目ざわりだったスライム野郎を追放して、俺は最高の気分を感じていた。
「あいつは使えなかったからなぁ。金食い虫の詐欺師だよ」
「そうですそうです!」
俺のお気に入りの女、プラム・マドレーヌが相槌をうつ。
「さあ、あんなクズのことは忘れて、冒険を続けよう!」
「はいです!」
◇
その日も俺たちは、普段とかわらずに、納品クエストを受けていただけだった。
それなのに……。
「っく……なぜだ!? おかしい……!」
目標のアイテムを、モンスターが一向にドロップしないのだ。
「どういうことなんだよ……!」
俺たちはもう何体もそのモンスターを倒しているのに……!
「おい、これって通常のドロップアイテムだよなぁ……?」
「そのはずです……」
プラムは《アイテム師》という、アイテムをメインに扱う職業だから、アイテムのドロップ率なんかには詳しい。
「クソ……! おい、もっと倒すぞ!」
仕方がないので、狩を続けるしかない。
なぜなら目標のアイテムは、モンスターからのドロップでないと入手できないからだ。
「がああああああああ! クソ……!」
長い間狩を続けているせいで、だんだん集中力もなくなってくる。
そのせいで、傷を受ける回数も多くなってしまう。
つまり、ポーションを使う量が増え、どんどん財布にダメージが入る。
「クソ! こんなんじゃクエスト達成しても、赤字だぞ!? もうやめだやめ!」
「ですね……、もうあきらめましょう……」
俺としたことが……いったいどうしてしまったんだろうか。
もしかして今日は厄日か?
呪われてるとしか思えない運の悪さだ。
「クエストが終わったのであれば、私は自由行動をするぞ?」
「ああ、好きにしてくれ」
そう言って俺たちから離れていったのは、《傭兵》職のカルティナ・ルグィンという女だ。
あいつは金で動くことを絶対としていて、決して馴れ合わない。
まあそんな女を自分のものにするのが俺の趣味だから、そのために雇っているのだ。
なかなか仲良くなれそうにないが、まあそこは俺の魅力で気長にオトすさ。
「クソ! むしゃくしゃするぜ! おいプラム! カジノにいくぞ!」
「はい、グフトックさま!」
「ナターリア! お前もだ!」
「はい! もちろんです!」
ナターリア・ブランドー、こいつもプラムと同じく、俺の取り巻きだ。
気の弱い女だが、なんでもいうことを聞くやつだ。
俺は今日のクエストでのストレスを癒すために、2人を両脇に従えて、カジノへ向かった。
こんな日は、思いっきり遊んで忘れるのが一番だ!
それなのに――!
「くそおおおおおおおお! なんでだよおおおおお!」
なぜか俺はその日、信じられないくらいに負けまくった。
「まあまあグフトックさん、落ち着いて。これは運の勝負なんですから、そういう日もあります」
カジノのディーラーがそう言うが、俺は落ち着いてなどいられない。
「うるせえええ! イカサマだろこんなの!」
俺は思わず、机の上のカードをぐしゃぐしゃにしてしまう。
「おや……? 当店の賭け事をイカサマだと疑いで? それでしたら、奥で詳しいお話をしましょうか……?」
カジノのディーラーがそういうと、奥から屈強な男たちが顔をのぞかせた。
これは……マズイことを言ってしまったのか……?
「い、いや……そういうつもりではない……。取り乱してすまなかった……」
「でしたらいいのですが。こちらとしても、賭け事は楽しくやりたいですからね」
だが、次のラウンドで巻き返さないと、赤字ばっかでヤバいことになるぞ!?
どうにかならないか……!?
俺はプラムに目で合図して、イカサマの手伝いをさせることにした。
カードの番号を、瞬きの回数で教えてもらうのだ。
「では……参りましょう。次のラウンドです」
俺はなんとしてでもここで、今日の負けを取り返したかった。
負けたまんまで終われるかよ……!
そして……。
すべての賭けが終わった。
「ふっふっふ! やはり最後には俺が勝つのだ!」
イカサマが功を奏し、俺はなんとか赤字ギリギリで勝負を切り上げることができた。
「さあ、ホテルに戻ろう」
俺たちがカジノを出ようとしたその時だ。
「お客様、当店のイカサマを疑っておきながら、ご自分がなさるとは……いい度胸ですね?」
「は……?」
出口で、男たちに囲まれ、止められる。
まさか、俺の完ぺきなイカサマがバレてい
たというのか……!?
「そんな……! どうやってバレた!?」
「おや……いまのはカマをかけただけだったのですが……。やはりですか」
「キサマァ……!」
「よし、奥に連れていけ……。女たちはほっといていい」
俺は、屈強な男たちに抱えられ、奥へと連行される。
いったい何をされてしまうんだろうか……。
「グフトックさま……!」
「くそおおおおおおおおお! 俺を放せ! 俺は客だぞー!」
「すみませんお客様。当店ではイカサマを働く輩を、お客様とはみなしません。そして、大変厳しく取り締まっております。そう。二度とそんなことができないようにね……」
そのあと俺が、どうなったかはもう思い出したくもない。
俺よりもはるかに体のでかいスーツ姿の男たちに囲まれて……。
「うぉえ……!」
「グフトックさま…………!」
ホテルに戻ったあとも、俺はトラウマで吐き続けた。
クソ……!
こんなに屈辱的だとは!
――――――――――――――――――――――
【あとがき】《新連載》を始めました!
この作品が気に入っていただけている読者さんなら、こちらも気に入っていただけると思います!ぜひよろしくお願いいたします!
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https://kakuyomu.jp/works/16816700429527557087/episodes/16816700429527754758
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