最終話 また誰かが水の泡に
君が殺したんだ。友人だと思っていたのに。
君がいなければ私は死ななかった!メリアも!
…どうして…ただメリア…いきていただけなんだよ?
私を陥れたの?私に…何もしていないメリアを殺させたり、恨ませたの?
君がいなければよかったんだ。
責任はすべて君にあるんだ!全部全部!
…貴方はやっぱり政府員にふさわしくない人材だったの。
「…」
頭の中でこれまで僕のせいで死んでいった人たちの声が聞こえる。…僕は…どうすればいいんだ。
…アカデミーに行く気力はない。
…ライのところへ行こう。もうこんな事したくないから。
才能も…もういらない。
人々が死ぬことでもらえる才能なんていらない。
「…そうなのねぇ」
…聞こえる。ライの声が聞こえる。
また暗転していく。このまま消えてしまえばどれほど楽だったのかな。
「ふふ…御免遊ばせぇ。それで、私との契約を破棄したいということかしらぁ?」
「…もう才能は望まない。ライからもらってきた才能は全てライに返還してもいいから…僕はもう…」
もう誰も殺したくないんだ。僕は…もう嫌なんだ。僕のせいで誰かが死んで、誰かが不幸になる様子なんて…そして一番許せないのは。肝心のすべての元凶である僕が捕まらないということ。現実世界で罪に問われないこと。僕自身が告白すればいいんだけど…警察はそれを信じてくれるのだろうか。実際僕はそれが殺人につながるなんて知らなかった。知っていたらやるわけがない。…僕が知らず知らずに誰かを死ぬ要因、原因を作ってしまったんだ。だから…契約を破棄させてくれ。罪滅ぼしや償いはする。刑務所に行ってもいいから…死刑になってもいいから…。
「無理よぉ」
「…え?」
…無理って…どういうこと…?
「この契約は二人のうちどちらかが死ななければ期限は訪れないのよぉ。つまり私か貴方が死ななければ貴方の言う死の連鎖は永久に続くわけぇ」
…僕が…僕が死なないと…?じゃあ…死なないと…。
「そうそうぉ。死ぬつもりなら最後に貴方に言うわねぇ」
「な…何を…?」
「今までありがとうねぇ。利用されてくれてぇ」
っ!?
瞬きをした瞬間…僕はまるで正気に戻ったかのように解放された感覚があった。…そして目の前にいる美しい女性の見方が変わった。初めて会った時は何も疑わずに従っていたのに。才能欲しさにただただ目を奪われていただけだった。
…目の前にいる女性は魔女だ。
れっきとした魔女で僕はこの事を早く魔法警察に言わないといけないと思った。魔女なら魔女狩りに相談するしかない…僕が魔女の連鎖を断ち切らないと…!
「それは無駄でしかないわよぉ?」
「え…それって…」
「だって貴方が私のことをばらしたら…みんなが恐らく死ぬわよぉ?」
…みんなが?
「だってぇ、貴方がバラすのよぉ?殺人の元凶である貴方がぁ?」
「…まさか…」
「私、人間が数十人いたとしても殺せる自信があるわよぉ?魔女狩りでも、殺せるのだからぁ。…だからまた…そして貴方は数十人を殺した最低最悪な連続殺人犯になるわよぉ?」
…僕がばらしても…結果は変わらない…?僕が…僕が…魔女と契約してしまった人間だから?僕が契約せずに…あ…あぁ…!
「だからぁ…もう貴方にはぁ」
自分自身を殺すしか選択肢は残されていないのよぉ。
みんなが死なないようにするにはねぇ。
どうするのぉ?殺人犯さんねぇ?
もう終わる。
数日前にあった自殺者の報道。
あれは…僕と同じ運命を辿った人だったんだ。
あの魔女に言われて…もう自身を殺すしか選択肢がなくて。
そして…僕もあの人と同じ運命をたどるんだ。
自分の部屋にロープを…そして首吊りするために輪を作る。
そして…自分の人生を終わらせた。
みんな…死なないためにも。
9月26日 デスティネ・マレディ死亡
死因:首吊り自殺
「…やはり貴方も自殺したのねぇ」
にゃにゃ。
「…最後に死んでいる貴方に…すべてを話してあげるぅ。私は魔女」
だけどただの魔女じゃない。人間の救い主にもなり、滅亡を呼ぶ魔女でもある。
「欲望を司る魔女。デジール・ゼフィルス。ライという名前も偽名よぉ。とにかくありがとうねぇ。貴方のおかげで…私はまた人についての本を読むことが出来るのだからぁ。しかも貴方が殺した人々の本をねぇ」
「…デスティネ…だったかしらぁ?」
実は貴方にまだ言っていない事があるのよぉ。
確かに死ねば契約は無効になるわぁ。
だって死んだ者に才能をあげても無駄になるだけでしょぉ?
でもね…それで死者が出ないなんてことはないのよぉ。
貴方は貴方が死ぬだけでも誰かを殺すのよぉ。
みんなそうなのよぉ。…だから…。
最期まで殺人犯だったねぇ🎶デスティネ。
9月27日 マレディ家全員死亡
死因:自殺
貴方という希望が失えば…もう家族もろとも死ぬのよぉ。
この世界でもう生きていけないと悟ってねぇ。
「…追加されたわよぉ。ふふ…」
にゃ〜。
「カース。落ち着きなさいぃ。本が追加されるのは本当にいいわねぇ」
さて読みましょうかぁ。とある人物の全てが書かれた本をぉ。
「…ここは…どこだ?」
「はじめましてぇ」
…貴方も才能がほしいのぉ?
それなら私があげるぅ。
才能があれば何でもいいのよねぇ?
だから私に従ってちょうだぁい。
私に人間の内面全てを知る目標を…達成するために頑張ってねぇ。
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