第7話 水で終わろう

 また…誰かが死んでしまった。昨日、死んだ人は警察官。そしてそれと同時に退職してしまった警察官がいた。死んだ人は知らない…けど退職した警察官は…僕があの時…話しかけた警察官だった。何が起きたのか聞いてみるべくライト警察官の家に訪ねたが、呼び鈴を鳴らしても反応してくれない。…寝ているのかなと思い、今日はライト警察官の家を後にした。だから死亡した人たちの事件のことを詳しく調べる。

 …だから僕は魔法最高刑務所の留置所に行こうとした。キル・フィリアはまだ生き残っている。終身刑にされているがまだ刑務所の独房にいるはずだ。アガペー…メリアの父親のことについて知りたいから…血縁関係のない僕が会えるのか分からないけど…看守さんにお願いして会わせてもらわないと…何も知らないままは…嫌なんだから。

 看守さんに懇願して監視をつけるならという条件をつけて僕はキル・フィリアに会うことになった。本来なら許されていい行為ではないが僕があまりにもしつこすぎるためか、ため息をつきながらオーケーを出してくれた。キル・フィリアは顔だけしか知らない。…だけど僕は知りたいから知るためには何でもするから。

 「…貴方は誰?」

 気がつくと目の前には怖い女性がガラスの向こう側に座っていた。この人がキル・フィリアだ。前に見たときと顔が同じだから。でもだいぶ目が真っ暗で本当に前までは幸せだったのか疑うレベルだった。

 「僕はデスティネ・マレディと申します。…アガペー・フィリアの死について聞きに来ました」

 「!?」

 キルさんは驚いた表情を見せた。そりゃあ、顔も知らない赤の他人がいきなり自分の旦那の死について知りたいなんて…気持ち悪いとは思われる。どうして血縁関係すらもないのに興味が湧いているのか。完全に記者とかじゃない限りいないだろう。

 「…なぜ知りたいの」

 「…この国を震撼させている連続殺人や連続自殺事件についてご存知ですか?…僕はその原因を突き止めたいんです」

 「…はっ。子供のお遊びってことかしら」

 「いいえ。お遊びではありません」

 子供でも出来ることはあるはずなんだから…出来ることがあるのなら…それはやらないといけない。この国…や世界のためにもなるはずなんだから!だから僕はこの人に…僕の意思を賢明に伝えないといけない!絶対にアガペーさんの事を聞かなくてはいけないんだ!

 「…そんなことを言っても子供が出来ることは限られているわ。…諦めなさい」

 「諦めません」

 「どうしてそんな事が言えるの」

 「…僕が子供でも僕に出来ることは少しだけでもあるはずです。…それに協力してくれませんか」

 怒りは出してはだめだ。冷静に、そして賢明に。…僕はここで終わっていい人間ではないのだから。

 「…子供が何になるというのか。…でも、無意味だと思うけど教えてあげる」

 「ありがとうございます!」

 よし、これでアガペーさんのことが聞ける…!

 「…死因はメリアの鋏が脳に刺さったことよ。だからメリアが殺害したの」

 メリアの鋏が…そういえば鋏買うなんて言っていたっけ…。でも本当にメリアさんが殺害したのならどうやって父親に勝ったんだろう…力量でも圧倒的に負けていると思うのだけど。

 「父親の死についてメリアちゃんは何か言っていましたか?」

 …当事者であり、犯人であるメリアなら何か知っているかもしれない。…それなら…何かおかしいこととか…言っていた可能性だってあるかもしれない。

 「…お父さんが殺されたのはメリアがころんだせいと言っていた」

 …ころんだ?もしかして転んだ影響で鋏を持っていた手が開かれて鋏が刺さってしまったんじゃ…。単なる偶然かもしれない…けど…故意ではないと思われる。メリアはただ転んでしまっただけ…転んで…鋏を。というかなんで鋏を袋などの入れ物の中に入れていなかったのだろうか。なにか事情でもあったのだろうか。

 「鋏を持っていたのはなぜですか?」

 「…明日の学校で使う。授業参観で工作の時間に使うからと」

 「でも…それなら入れ物には入れなかったということですよね?どうして入れ物に入れなかったのですか?」

 「…夫から最後の連絡…それは訪れたショッピングモールで折り紙などの工作するイベントがあって…メリアはそれに興味が惹かれていて買っていた鋏を使っていたらしいわ。その影響で鋏を持ったままにしてしまったらしいわ」

 …イベントがあったから…か。…様々なことが重なって…結果的にアガペーさんの死に陥ってしまったんだな…。どんなに小さなことでも…運命が変わる原因…起源になるのかもしれないのだから。…場所を聞いてみよう。

 「死亡した場所はわかりますか?」

 「ノースエンチャント地区のタブー家近くよ。確か近くに…」

 ゴミ箱があったはずよ。

 …その発言で嫌な予感がした。僕自身も認めたくない予感が…。…僕はその場所へ急いで向かった。キルさんにお別れの挨拶をして急いで…嫌な予感の真相を知るためにも…。

 「…こ…ここは…」

 キルさんの言っていた場所に着いた。そこは…四日前、僕がバナナの皮を置いた場所だった。まさか…それで…メリアは滑って転んでしまい、その時の反動で鋏を持つ手が離れてしまい、その鋏がたまたま…。

 僕は知ってしまった気がする。そして僕は一つの疑惑の炎が宿ってしまった。消えることがない…僕が存在する限り消えない疑惑の炎が。

 …まさか…全部…?全部僕が全て…。

 気づいてはいけない何か。それを僕は気づいてしまった。


 

 人魚姫は王子様を殺せず自ら泡になることを決めました

 人魚姫の恋は水の泡となりました

 努力も愛も全て王子様に届くことはなく水の泡となりました


 …橋へ一歩ずつ前へ進みなさいぃ…。

 陸にたどり着かない桟橋の先に…一歩ずつぅ。

 …もう貴方は続かないかもねぇ。

 貴方の最期になるとき私の本当のことを全て教えてあげるぅ。

 私の…全てをねぇ…。

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