第210話 巨乳裸体 緊縛放置事件 ※サービス回

「だ、誰が一体、こんな事を……」



朝目覚めると、何やら屋敷の庭が騒々しい。


バルコニーから顔を出すと、庭に巨乳の裸体が訓練用の丸太に縛り付けられ、地面に突き立てられていた。



階段を降り庭に出ると、ソレを皆が取り囲んでいるがユウちゃんやコタロウがその場にいない事に少しだけ安堵した。子供達にコレを見せるなど、コンプライアンスに違反する。

昨晩の宴で「我ら、家族の結束を!」と誓った矢先に、こんな事が起こるとは……


「誰がやった?怒らないから、やった奴は正直に言いなさい」


冬の寒空に、裸体で丸太に縛り付けられた巨乳は、辛うじて下着だけは身につけてあったが、ご丁寧にも局部だけは露出されている。


「俺は悲しいよ。これからこの会社を皆んなで盛り立てていこうって言った矢先に、こんな事が起きるなんて。君達のコンプライアンスに対する意識の欠如は──」「ブァックシュン!」


「あ、生きてた!」「生きてたな」「生きてるじゃん」「良かったですー」


丸太に縛り付けられた巨乳は、寒そうに震えながら助けを求めた。


「だ、誰か助けてくだされ。さ、寒くて死にそうでござる……」


「う、うらやましい……」

一人だけは羨望の眼差しで見ている。


「いいか、家畜だって一応、家族の一員だぞ?俺はこうゆーイジメは許さないからな。それに、こんな汚らしい物を晒しやがって……公序良俗に反するだろ。今の時代、コンプラだよ?コンプラ」

「あ、あの、そそそ、そういうのは後に……」


コンコンとコンプラの重要性を説く俺には、縛られたロリ豚の声など聞こえないし、聞きたくない。


「俺が、傭兵団ではなく民間軍事会社を立ち上げたのは、世間体を重視したからだぞ?分かってる?君達」


「あの、もう、ソロソロ、縄、解いて?」


人が、社員達にコンプライアンス教育を徹底させようとしているというのに、うるさい奴だ。


「ディアミド。その汚く矮小なイチモツを切り落としてやれ」

「ま、待つでござる!拙者のはまだ未使用でござる!ピュアっピュアでござる!」


剣を抜いたディアミドに、必死に弁解しようとしているロリ豚だが、未使用だろうが汚いものは汚い。


「随分と騒がしいな」


バルコニーから降りてきたアイリーンが、ロリ豚を一瞥するやいなや局部を凍らせた。


「ピッ、ピギィーーーッ!!キンキンがチンチンでござるぅーーー!」


「さすがアイリーン。コンプラの申し子」


「お前、コンプラ言いたいだけだろ!」

ミルフからのツッコミは聞こえない振りで受け流す。


ロリ豚いわく、昨夜たらふく食って酒を飲んだ後、ユウちゃんに散々追いかけられ、酔いが回って記憶がないらしい。


「とりあえず、解放してやりますか……」

そう言って縄を解こうとする織田Qに「待った!」をかける。


「現場検証がまだだろう!犯人はこの中にいる!」


そして、俺は推理した。


「コレは多分、痴情のもつれが原因だと思う。そして、犯人はお前、織田Qだ!」


その場の全員の目が織田Qに注がれる。


「デブ専で臭いフェチのお前は、ロリ豚が美少女ユウちゃんと仲良くしていた事に腹を立て嫉妬し、怒りに駆られて猟奇的犯行に及んだ。そうだろ?」


「何が『そうだろ?』ですか。こんな事やる訳ないでしょう。それに僕は、ノンケです」


白々しい顔で否定する織田Q。


「そ、そんな事より、は、早くしないと、拙者のピュアサンがフォールアウトしそうでござる!」


他のメンバーの顔を見渡すが、やはり他に動機のありそうな者は見当たらない。いや、一人いた。


織田Qもそれに気づいたのだろう、訴えるような目で俺を見る。

しかし、それはそれで、どうしたもんか……。


「なんだ、コレをやった犯人を探しているのか?それなら知っているぞ?上から見てたからな」と、アイリーンが何でもないように言う。


「知ってるんですか!?」「さすが姉さん!」


小田ちゃんとミルフは驚いているが、俺と織田Qは微妙な顔をした。


「あぁ、小田ちゃんだ」

「「「エエエェェェ!?」」」


俺と織田Qは小さい声で「やっぱり……」と呟いた。


「酔っ払って庭で寝ていたローリーを裸にして、丸太に縛っていた。気になって様子を見ていたら、それを担いでそこに突き刺していたぞ」


「姉さん、つーか、なんで放置したんすか!?」


「変わったプレイだと思ってな」

「分かります」とプリンが賛同する。


「わ、私が、犯人?」

動揺する小田ちゃんだが、俺達は知っている。小田ちゃんの酒癖の悪さを。


俺達は、オフ会で飲んだ事が度々あった。

ある日、少し飲み過ぎた小田ちゃんは、六本木の不良外人に絡まれそうになったのだが、俺達が助けようとする前に路上の放置自転車を掴み上げると、それを振り回して不良外人共を撃退するという一幕があった。


小田ちゃんは酔うと、何をするか分からない。本人には記憶もない。

正直、酔っ払った小田ちゃんが、仲間の中で一番タチが悪い。


「さぁ、皆んな、朝飯にしよう。小田ちゃん、気にしない気にしない。酔って寝てる奴が悪い。さぁ、準備しよう。これにて、一件落着!」


ゾロゾロと屋敷内に戻る俺達。織田Qが縄を解いてあげている。


「おお、マイ、ピュア・サン……無事でなによりですぞ……」


アットホームなウチの会社には、イジメなんてなかっったのだ。


「良かった良かった」


俺は、ホッとした。

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