第209話 家族
「それでは、皆んな席に着いてくれ」
ブリスクにモーリッツ達を送り届けさせていたハイランダー達も帰って来て、より賑やかになった屋敷のテーブルには懐かしい顔もあった。
「ブラちゃん!」
聖騎士ユウちゃんと、その父親である変態魔法少女プリンである。
勢いよく突っ込んできたユウちゃんを受け止め抱き上げる。
「いい突進だ。ユウちゃん、レベル上げたなぁ?」
「へへッ!ユウ、頑張ったんだよ?でも、もっと強くなる為にここにきたんだ!」
ユウちゃん、既にレベルキャップに達してしまったらしい。『聖騎士』の必要経験値は『まほうつかい』だった頃の俺より多いはずだったんだけど、どんだけ魔物狩りまくったのだろうか?
まぁ、レベル50を超えて一周した俺が言うのもなんだけど。
心なしかプリンの前髪が以前より寂しい気がする。
「そうか、偉いなぁ、ユウちゃんは」
「テヘッ」と、あざとく笑うユウちゃんは天使か悪魔のどちらだろうか?
「皆んな、紹介しよう!これから我らブラックホーク・ピース・セキュリティーの一員となる、家族を紹介する!まずは、異世界人仲間の聖騎士ユウちゃんでーす!」
「初めまして、『ユウNO.1』です!好きな物は金貨です!よろしくお願いします!」
うん、さすがユウちゃん。素直でよろしい。
「あ、初めまして、ユウの父親で魔法少女をやってる『☆:.。.
コイツは真性のドMで魔法少女の40代男性という、異世界人の中でも類を見ないど変態である。
あと、一応、ボロ雑巾のようになったロリ豚クソ野郎に釘を刺しておく。
「貴様がユウちゃん指一本でも触れた場合、いかなる理由があろうとも、あのオーク共と同じように挽肉にしてやる。理解したか?」
「ブヒィィ!了解したでありますですぞ!」
「ハイこれ、ユウちゃん。あのオークが不審な行動をしたら鳴らしていいからね。俺が、秒でこの世から消し去ってやるから」
ユウちゃんに防犯ブザーを手渡す。
「あ、あんまりですぞ!拙者、コレでも紳士のローリーで通っております故、ノータッチの掟を破る事などありえませんぞ!」
「黙れロリ豚。貴様は監視対象だ。未来永劫な」
床に項垂れるローリーに天使のユウちゃんが手を差し伸べる。
「ローリーさん、よろしくネ!」
「あ、あぁぁ、天使が、天使の降臨ですぞ!」
差し出された手を掴もうとするロリ豚クソ野郎に再度念を押す。
「如何なる理由があろうともだ。忘れたか?」
モチ、指鉄砲を向けながらだ。
「ブヒィィ!こ、これは、拙者、ど、どうすれば……」
「ローリーお兄ちゃん、ユウとは仲良くしてくれないの?」
まさに天使のような悪魔の所業に、ユウちゃんの修行の成果が伺える。
「あ、拙者、拙者ァァァ」「触れたら殺す」
ひとしきり楽しんだユウちゃんが席に戻り、見習い新メンバーの紹介に移った。
「銃士の織田Qです。Qちゃんとでも呼んでください」
疲れ果てた織田Qは、まるで陰キャの自己紹介だ。
「小田ちゃんです!栄養士なので、皆さんの食事のお世話させていただきます。目指すは最強の料理人です!パワー!」
「「「パワァァァ!!」」」
どうやら小田ちゃん、ダンジョンでパワー教に目覚めたらしい。ウチの連中共のウケもいいし、相性は良いだろう。それにしても、彼女はセガ○ルにでもなるつもりなのだろうか?
「拙者、ローリースキーと申す。『オペレーター』なので直接戦闘には向いておりませぬが、粉骨砕身、努力する所存!」
「コイツは肉壁要員だ。皆、鍛えてやってくれ」
「ま、まって下され!拙者『オペレーター』ですぞ!支援職が肉壁って!聞いた事ありませんぞ!」
「よし、それじゃあ紹介はこのくらいにして、飯にしよう」
豚の言葉は理解できない。理解できないものを無理に分かろうすることは無駄だ。
「小田ちゃんが作ってくれた料理だ!異世界ならではの料理もあるからな!堪能してくれ!」
小田ちゃんのスキル『調理』で作られた料理の数々は実に見事な物だった。
食べた事もない料理や食材でも調理可能な上、時間も大幅に短縮される。
食べた料理はどれも美味しく、ステータスにバフまでかかるチートスキルである。
焼物、煮物、揚げ物、蒸し料理に鍋料理が所狭しと並べられ、皆も美味そうに食べている。
「サーモンの刺身食べるヒトー?」
「ハイハイハイ!ユー食べるー!」
異世界人達は皆手を挙げるが、現地人の連中もそこそこ手を挙げている。
「ハイランドでは生魚はよく食べるからな」とアイリーンが教えてくれた。
醤油はさすがになかったようだが、回してやると意外と美味そうに食っていた。
初対面の異世界人同士の交流や、ハイランダー達の歌や踊りに盛り上がる宴。
防犯ブザーを手に、ロリ豚を追いかけ回すユウちゃんも楽しそうだ。
異世界に来た時はどうなる事かと思っていたが、今はそれなりに楽しくやれてる。
しかし、これからだ。
この世界でやりたい事も、やらねばならん事も山ほどある。
勿論それには、コイツらを食わせていくのも含まれている。
そして、コイツらの力を借りねばならん事もあるだろう。
力をつけ、仲間を増やす。当面の目標はこんなとこだろうか。
酔った俺が、ボンヤリとそんな事を思っていると、アイリーンが隣りにそっと寄り添ってきた。
「楽しいな」「ああ、そうだな」
珍しく酒でほてったアイリーンの顔は、穏やかで、途轍もなく艶めかしかった。
アイリーンを抱き抱えると、全員からの冷やかしや囃し立てる声を聞き流して、俺達はベッドルームへと消えた。
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