第211話 テビチ・ミミガー・チラガー

「で? なんでお前達が、当たり前みたいな顔でココで飯食ってるんだ?」


家族である社員達と大食堂で飯を食っている中に、何故かシシリーとヴァルガンが混じっていた。


「あ? ケチくさいこと言ってんじゃねーよ! そ、それより、あ、アレはないのか? あ、あの背徳のイチモツは……」


「クイニーアマンな。なんだよ"背徳のイチモツ"って。表現と服装が卑猥なんだよ、オボコのくせに」


「な、なんと、セクシーロリバニーは処……テビチィィィ!」


何か言い終える前に、シシリーのウサキックで吹き飛ばされるロリ豚。


「オイ、飯食う場所で暴れるな。 ホラ、これやるから大人しくしてろ」


取り出した冬の定番シュトーレンに齧り付くシシリー。わりと短期間ですっかり体型を戻していたが、これでまたムチムチ度を増すだろう。


「すまんな、あまりにも美味そうな匂いについな。今日はベッケル様の護衛で来たんだ」


主人であるベッケルの爺さんは、応接間で待ってるらしい。

この屋敷はベッケル家が所有してるものなので、勝手は知ってるはずだ。家事などの人の手配も任せてある。


「悪いな。勝手に待たせてもらってるぞ」


応接間に行くと、優雅に葉巻なんぞ咥えながらグラスを揺らしてベッケルがくつろいでいた。


「アンタの屋敷だ、好きにすればいい」


「まぁ、そうなんだが、正式に会社を設立した祝いに君に譲ろうと思ってな」


「随分と親切だな?またぞろ何処かと戦争でもやるつもりか?屋敷はありがたく頂くが、報酬もちゃんと頂くからな?」


「何、君と繋ぎを持てるなら、これくらいは安いモノだろう。最近もダンジョンや盗賊の討伐に大活躍してくれたからね」


ただより高いモノはないと言われるが、現在もwin winの関係であるし、今後もよろしくやっていきたいのはコチラも同じである。


「ありがたく貰っておこう。ココは結構気に入ってるんだ」


無駄な華美さはないが、こった造りで広さも十二分で多少社員が増えても問題ない。

都市の外れで敷地も余ってるので、訓練用の土地にも困らない。


「それで、これからどうするつもりかね?」


協商連合で依頼された仕事は大体目処がたっている。

十分な資金も調達できた。戦力の増強が目下の課題である。


「はぐれた仲間を迎えに行こうと思う。それと、本隊にもそろそろ一度合流して、仲間達とも会っておかないとな」


本隊の奴らも、いよいよ本格的に動き出した。

その中で、適応できない奴らもまたそれなりにいるらしいので、使えそうなやつがいたら社員として雇うつもりである。


「それは良い」


そう言って、ベッケルはにこやかに笑う。

BPSウチの戦力が増せば、協商の利益になる。それに、異世界人はこの世界でも有益な能力を保有している事が多いしな。


「ついでと言ってはなんだが、シシリーも一緒に連れて行って欲しいのだが」


「は?」


ベッケルは、この国の傭兵の中では間違いなくトップレベルで、懐刀の一人を手放すと言う。


「あやつは確かに強いが、まだ経験が足りていない。君と一緒なら、嫌でも実戦で経験を積めるだろう?」


確かにあのウッサは、単純な戦闘では馬鹿みたいに強いのだが、経験からくる裏の読み合いや搦手を使った戦いはあまり上手くない。


どちらか選択できるなら、ヴァルガンの方がより戦力としては有能でありこちらも助かるのだが、それだけにベッケルも手放せないのだろう。


それでも、「まぁ、ウチとしては即戦力はありがたいが、アンタも敵が多いタイプだろ?大丈夫か?」


「今の私に手を出せる人間はいないよ。君のおかげでね」


協商内で暴れた一件。一般的には、その謎の戦力と繋がってるベッケル家は恐れられてる。らしい。

本当の俺の事を知ってる人間は限られているが、知ってる者は俺の帝国に対する戦果もまた把握しており、ベッケルと敵対したりはしない。


「まぁ、これでも正義の使徒だからな? あまり調子こいて悪さしてると、鉄槌を下さないといけなくなるから。ほどほどにしておけよ」


「分かってるよ。君を敵に回すような真似はしないさ。私も、死ぬ時はベッドで穏やかに逝きたいからね」


苦笑いでそう言うと、ベッケルはシシリーを残して帰っていった。



「ば、バニーちゃんが、仲間になるですとぉォォォ! 拙者、ブラ珍殿の部下になって大正解でしたぞォォォォ! 一生着いていきますぞ!」


「うるさい!」

「ミミガァーーーーー!!」


ロリ豚の横っ面に、ウサちゃんの回し蹴りが炸裂する。

またも一発KOでロリ豚を沈めるウッサ。鬱陶しいのでちょうど良かった。


「そうゆーことでー、このウッサが仲間になりまーす。みんな仲良くしてあげてー」


「誰がウッサだ! 主であるベッケル様が言うから、仕方なく仲間に加わってやるんだぞ! 後、お前には借りがあるからな! それを返す為だ。ワタシはお前達と馴れ合うつもりはないからな。そのつもりでいろ!」


顔を赤くして捲し立てるウッサは、俺に借りがあるつもりらしい。よく分からないが。


「オネーさん! また一緒だね! 僕、嬉しいよ!」


コタローの無垢な笑顔にウッサもタジタジになる。

純真で純粋な好意を向けられる事に、いまだに慣れていないのだろう。


「こ、コタロー! く、訓練だ! 訓練するぞ! 今日は手加減しないからな!」


「ウン!」


獣人ペアは丸太を軽々と担ぐと庭を走り始めた。



「ち、チラガー……」


「ローリー!ローリーーーーッ!」


まだギリで意識があったのか、ロリ豚が鼻血を垂らしながら恍惚の表情で死にそうになっている。


ミルフが慌てて回復魔法を施していた。


「チラガーって豚の顔ですよね? なんか、パワーつきそう!今度、挑戦してみましょうか」


小田ちゃんはずっとそのままでいて欲しい。

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