第153話 正義のイケメンライダー

「ぐ、軍曹殿、ア、アンタもどうだ、一緒にたのガッ!」


下半身丸出しの小汚い男の言葉を遮り、ブシャッ!と頭を弾けさせ中身を撒き散らせた。



サセ湖北と先遣隊が駐屯しているだろう町までの間にある、小さな集落に立ち寄った。

見るからに貧相な集落で、そのまま通過しようかと思ったのだが、マップに少数の赤点を見つけたので少しばかり様子を見る事にした。


集落に入ると、帝国兵の格好をした俺を怯えるように見るジモティーと思われる人達。

かと言って逃げ出したりするわけではない。

帝国兵を余り良い相手とは思っていないようだ。


「オイ、ココに帝国兵は居るか?」

俺を見つめていた子供に聞いてみたが反応が悪い。


「帝国の軍人さんは皆んな先に行ってしまわれました」

慌てて寄ってきた貧相な体の男が、子供の肩を抱きながら答える。

この子の父親だろうか?怯えてはいるが子供を俺から守ろうとしているご様子。

言い切った男の喉がゴクリと鳴る。完全に恐怖する者の眼だ。


(こりゃ帝国兵に扮装したのは裏目に出たか?)


湖畔で殺した帝国兵達をアイテムボックスに全てしまっておいた。

現在地はすでに敵の支配地域である為、状態の良い制服と装備で帝国軍人になりすましている。


「そうか、ならば傭兵は居るのか。安心しろ、住民に危害を加えたりしない」


「ハッ!そりゃ何の冗談だ?ココにあんな無法者共を放置しておいて!」

地べたに座り込んだままの顔を腫らした青年が吠えてきた。


「お、オイ!やめろ……。すいません軍人さん。ちゃんときつく言っておきますので、どうか……」

他の大人達にたしなめられるが構わず俺を睨み続ける青年。


ふーん、そういう事か……


「あそこに居るんだな?」

集落の一角を指差すとギョッとするジモティ達。


スタスタとマップさんの示す赤点に歩いていく。


なんとも質素な家屋の扉を蹴り飛ばすと、中にはゴロツキ共数人とボロボロになった少女らしき姿が見えた。


「なん!あっ……あの、これはこれは正規軍の下士官さブゥヘッ!」


近くにいたゴロツキが口を開いたので裏拳で黙らせる。顎の関節が砕けて閉じれないようだったので、下から蹴り上げてやるとガギッと顎を粉砕しながら首が後ろに折れてしまった。


「よおクソ共、楽しんでるようだな。強行軍から脱落しておいていい身分じゃないか」

まぁ、知らんけど。たぶん、そんなところだろ。


少女の側にいる男が口を開くが、下半身丸出しの男の話しなど聞く耳を持たないので頭を吹き飛ばすと、テーブルの周りで飲み食いしている3人をフルオートで蜂の巣にした。


「いや、まて、まって下さギャーァァァイィ!」


残った二人のゴロツキの脚に2発ずつ魔弾を撃ち込んで外に引き摺り出す。


「コイツらは賊だ!俺が討伐してやってもいいが!どうする?」


思いがけない言葉にジモティ達は困惑していたが、俺を睨んでいた青年が棒切れと石を持ってやってきた。


「俺にやらせろ!」


殺る気満々の若者とは、見ていて気持ちがいいもんだ


「オイ、そんなに気張るな。すぐに殺したらもったいないだろ?力を込めて殴っていいのは股より下だけだ。皆んなで順番にちょっとずつやるんだ。死なない程度にコツコツと、長く苦しませてやれ」


俺を睨みながらもコクンと頷いた青年は、ゴロツキの膝を躊躇なく石で砕くと集落の者達に順番を譲っていた。


ジモティ達は思い思いのやり方でゴロツキ共に制裁を加えている。

脚を潰して逃げ出せなくしているが、腕は縛っていないので必死に頭部を庇おうとしているが、その内腕も動かなくなるだろう。


石を投げられ、殴られ、熱湯をかけられて、痛みと恐怖を存分に味わって死ねばいい。



集落の長と話したところによると、この土地を明け渡すよう要求されたと言う。

この国は宗主である帝国の要求を突っぱねる事などないと。

おそらく中間の補給基地か何かにするのだろう。


受け入れてくれるかは別として、町へ移住する予定だと言うので、金と食糧を提供するから南村へ行けと提案した。


「北の村はダメだ。南村に余裕が無ければ協商に面倒を見て貰えるよう手紙を書こう。ここの暮らしよりマシな生活が出来る事は保証する。アイツらが使っていた馬も好きにしていい」


ここまでしても駄々をこねるなら勝手にすればいい。どうせ野垂れ死にだろうが。


「分かりました。しかし、貴方は一体……」


「聞かない方が身の為だが、人は俺の事をイケメンライダーと呼ぶ」


「……はぁ」


「なる早で頼むよ。後、出発前にゴロツキの死体を井戸に投げこんどいて。必ずだよ!よろしく!」


大体40人が1週間程度食いつなげる量の食糧をポンと出すと、長は驚いて周りにいたジモティ達は跪いていた。

ジャラジャラと当座の資金として大金貨を50枚程度渡しておく。


「貴方は神の御使いか……」

おっ!当たり!言わないけど。


「じゃあ、くれぐれも井戸の件は頼むよ」


余り、長居する理由もないのでさっさと集落を出た。


やっぱり、いい事すると気持ちが良いなぁ!

食糧も金も協商の経費なので懐も痛くない!最高!


アクセルをフカシながら口ずさむ

立ち上がれ!英雄!的なヤツ。


戦隊モノもイイけど、俺はライダーモノもちょっと孤高な感じが好き好きすーだった。


「イケメンライダー ブラックRX!!」


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