第100話 狼煙

村の南門からおよそ200mの距離で展開中の歩兵を中心とした部隊の後ろで目下準備中の地竜を見る。


アンキロサウルのような全身装甲の地竜に金属製と思われる追加装甲を施しているのだ。

生物の弱点である頭部に鉢金の様な兜と、自前の装甲が薄い横腹には戦車よろしくサイドスカートのような帷子。尻尾のハンマーには金属製トゲトゲ付きになり馬鹿でかいモーニングスターのようになっていた。どうやら、地竜が牽引していた車に装備や餌などが積載されていたようだ。


試しに7.62mmで装甲の厚い背中を狙ってみたが、地竜の反応は薄い。

ラプアマグナムであっても、とてもじゃないがあのデカさを仕留める事はできない。


「テレレテッテテー!キャリバ〜50〜!」

魔力操作がⅢになって撃てるようになった12.7mm NATO弾を模した魔弾を試す事にした。

人間相手には威力が過剰なので早々出番等ないと思っていたんだが。


ボシュッと今までにない発射音とともに撃ち出されたバレットは地龍の装甲を撃ち抜き、地竜はその衝撃と痛みに暴れだす。

周囲で準備をしていた人間を踏み潰し、跳ね飛ばし尻尾で三人ほどまとめて薙ぎ払った。


「こりゃ凄え。ちょっと可哀想な気もするが……」あんな物騒なモンを野放しにはできない。


いくら大口径といえど一発であの巨体を射殺するにはいくらか物足りないが「頭ならどうかな?」


暴れる地竜の兜付き頭部を狙うのは中々厳しそうだが、「アレ使ってみるか……」

今まで出番がなかった"魔弾の射手"の精密誘導射撃を試す事にした。


バレットを撃ち出すと、意識が拡張されるような感覚に時間の流れが恐ろしく間延びされた。

スローモーションで撃ち出されたバレットの軌道を修正しながら眼球に着弾させると、弾は頭蓋を貫通し脳を破壊しながら頸椎まで損傷させた。

ビクリと大きく身体を振るわせ倒れた地龍は、ピクピクッと小さく何度か震えると動かなくなった。


「へっへー、グッドキル!」

ちょっと遠目にも巨体が倒れるのが確認できた。

狐の俺を見る目が恐怖に染まる。


「アンタ……」言葉に詰まる狐に、

「俺の能力は秘密にしといてくれよ。せっかくの金蔓を殺したくないからな」と釘を刺し、残りの地龍に意識を戻す。


いきなりの地龍撃破に敵の動揺も激しい。


「コッチも試しとかないとな、テレレテッテテー!20mmばれっとぉ〜!」

残念ながら20mmと遂に銃から砲へとグレードアップを果たすも、榴弾などの手を加える事はできなかったので徹甲弾のみだ。

それでも先程の12.7mmバレットを超える破壊力を持つ事に変わりない。


ボスッっと発射された20mm弾は二頭目の頭を文字通り吹き飛ばし、三頭目はこちらに横向きなった土手っ腹に大穴を開けた。


「人間相手には封印かな……」

おそらく人に当たればミンチだろう。


地竜はあんな見た目でも魔物ではなく、所謂"恐竜"のような生き物で、ファンタジー的ドラゴンでは無い。

ドラゴンもいるにはいるらしいが……

俺はそんなのノーサンキューである。


呆然としている狐を肩に担ぐと、村長屋敷の屋根から飛び降りて傭兵隊と合流地点へと急いだ。


レベルがまた上がったがお楽しみはとっておこう




————————


地龍→地竜に変更


ドラゴン=魔物

〇〇竜=恐竜の仲間的な感じですかね

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