第101話 生き餌の狐

「本当にやりやがったな」


傭兵達が俺をどう思ってたのかは知らないが、合流したディアミドはそう言うと興味深そうに俺を見て、「あの距離じゃ随伴魔法使いも油断してたろう。こんな村にあんな火力があるとは思ってなかっただろうから。そもそも連れてきてないかもな」

と続けた。


ディアミドから聞いた話では、地竜もいくら強力な兵器と言っても、所詮は生き物。

人が撃てる弓矢程度では歯が立たないが、投石機カタパルト大型弩弓バリスタとなると、さすがに地竜も無事ではすまない。


更に言えば、この世界には魔法があるのだ。

初級魔術ではまず効果はないだろうが、上級魔術ともなれば20mm弾なんかより遥かに破壊力がある。

なので、それ等を撃たせないようにしたり、防御する魔術士や魔道士などの魔法使いを随伴させたりするらしい。

戦車の随伴歩兵みたいなものか。


然程俊敏な動きはできずにあれだけの大きさだと、魔法使いから見ればただの動きが鈍いデカい的だからな。



ヤツらは狐達や村の保有戦力を正確に把握していた。

そして、持てる最大戦力を投入してきたのだが、早くも虎の子の地竜を三頭とも失った。

さぞやアチラさんは楽しんでくれてる事だろう。


「隊長、どう戦う?俺的には正面から叩き潰してやるのが手っ取り早いと思うんだが?あっ、騎兵は気にしなくていい」


このディアミド達10名のハイランダー達は全員が超越者だ。

それも、単純に戦闘能力だけを見るなら、おそらく

Bランク冒険者のボルグと同程度か少し劣る程度。

隊長のディアミドに至っては、聖棍ブロリーすら超えてそうだ。


狐が命がかかっているにも関わらず、俺に契約年数を渋るほどの契約金で雇われる連中である。


「騎兵を任せていいならそれで問題ない。しかし、向こうが乗ってくれればだが」


地竜ショックの影響で逃げださないか心配してるらしい。

歩兵相手だけなら自信満々な様子だ。


「心配ない。支店長には後がないらしいから。な、ギリー?」と狐の首根っこを掴み「餌ならここにあるじゃないか」と門を開くように伝えた。


「待て、待て待てまて!冗談だろ?」


離せ、やめろと喚く狐を無視し、南門を出る。


「あっ!この盾使いたい奴いる?火槍ファイアランス二発でも耐えれるんだけど、アンタらなら片手でも充分使いこなせるだろ?」


バリスティックシールドをディアミドに渡すと剣の柄頭で殴ったりして強度を試している。


10倍以上の敵を前に緊張感の欠片もない奴らだ。


「俺が使わせてもらおう!」とディアミドが言うと、「ズルいぞ!」「盾なら俺の方が上手いだろう!」と他の傭兵達からの文句に応えて全員分を貸与することになった。

10万Pの出費だが、投資と考えれば悪くない。


盾を構えて密集隊形で俺と狐を囲い前進する。


「お前らの大好きなギリー君ならココだぞー!そんなに欲しかったらー!力尽くで奪ってみせろー!」


ヤツらは俺達が投降するとでも思っていたのか、急に殺気立ち、相手から矢とまばらな魔法が飛んで来ると、俺とディアミドは顔を見合って笑っていた。

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