第99話 死の商人⑤

「アンタ、敵が多そうだなとは思ってたけど、コリャ相当恨まれてるな」

顔面蒼白の狐を見て言う。



村長屋敷で食事と寝床を提供された俺達は、傭兵隊の不寝番を除いて酒と俺の"ケツ割箸・鬼の5本束"で軽く出来上がると早々に眠りについた。


翌日、昼飯を食いながら次の輸送計画を聞き流していると何やら外が騒々しくなってくる。


「村の北と南に兵が展開している」


村人の騒動にハイランダーが確認して戻ってくるとそう言った。


村の北を塞ぐ30騎近い騎兵と、南の主力が150人ほどの歩兵。

何より村長屋敷の屋根から確認できた、攻城戦や会戦などに使用される地竜車を見た時の感動といったら「ファーーーーーーーーンタジィーーー!」と、ついつい叫んでしまったほどだ。


10m近い体長に棘と装甲を纏い尻尾がハンマー状になっているそれは、正に鎧竜と呼ぶに相応しい威容であった。

それが三頭もノシノシとのんびり歩いている。


「金かかりそう……」そうつぶやくと、「アホみたいに食うからな」と狐から返ってきた。


「あのクソ支店長、最大戦力を突っ込んできやがったな……」

おそらく、支店長とやらは事前に準備していたのだろう。出し抜けると思っていた相手が一枚上手だった事にショックを隠せないようだ。


「騎兵と地竜が邪魔だな、歩兵だけならなんとか切り抜けられるんだがなぁ……」と、傭兵隊長ディアミドがボヤいていた。


コイツら、おおよそ絶対絶命のピンチらしい。 



敵騎兵から「ガゥネッド商会のギリーの身柄を即刻引き渡すべし」との勧告がなされる。

「大人しく引き渡せば他の連中は見逃してもよい」との慈悲深いお言葉を付きで。


「半分は無理でも三割は道連れにする。ハイランダーの意地を見せろ!」 ディアミド達ハイランダーはやる気満々なんだが……狐はそんなヤツらを信じられないといった顔で見ていた。


「ハイランド傭兵は、雇い主を裏切ってまで生き恥晒す無様は見せんよ」そう言ってニッカリと笑い狐の肩を抱き「ヤツらに地獄を見せてやろうじゃないか、え?」お前もやるだろ?あ?みたいな顔で狐を脅している。

どうせ狐に後はないし俺も狐一匹がどうなろうと知った事ではないのだが、ハイランド傭兵隊をこんな奴の為に死なせるのはもったいない。


「あの地龍は引き受けよう。粗末な門とはいえ、騎兵の侵入を先延ばしにする事はできるだろう。傭兵隊は、俺が地竜を片付けて合流するまで南門で待機しろ」


「アンタ!勝手に何言な『ドシャッ!』『グシャ!』……」喚く狐に指鉄砲を向けると、問答無用でバレットで吹き飛ばす。


狐に向けて弩を構えたゴリと鶏の頭を


「お前にはもう選択肢は残ってないだろう?馬鹿なの?助けてやるって言ってんだ、俺に指揮権を移譲しろ。これが片付いたらこの傭兵隊は俺が預かる。向こう5年分の契約金をお前が払え。それでお前の命は助かるし支店長を越えさせてやる。断るなら元仲間達と仲良くあの世行きだ」


非常に楽しそうなハイランダー達と、上役から殺されそうで仲間にも弓をひかれた狐は恐怖と怒りと哀しみに表情は複雑だ。


「アンタ、コイツらの契約金がどんだけか知らないだろう? そんじょそこらのゴロツキみたいなのとはわけが違うんだ。3年分だ」

こんな時にでも値切る狐に呆れるが、悪徳商人としてはまあまあだと感心もした。


「いいだろう。ただし賊撃退の報酬は別だぞ」

と念を押す。せいぜい搾り取ってやろう。


フンと鼻を鳴らし「せいぜい成功を祈ってるぜ」と言う狐を放っておき、ディアミドに声をかける。


「そういう事だ、異論が無ければ早速行動に移れ」


「本当に地竜は任せてもいいのか?一体くらいなら引き受けてもいいんだぞ?」と笑いながら聞いてきた。


「まあ、見たところ問題ないだろ。それより人間相手に暴れて貰うからな、力は温存しておけ」


それだけ言うと、再び村長屋敷の屋根に登り三頭の地竜を眺めた。



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眠くて眠くて作業が捗りません!

とりあえずの投稿です。

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