第98話 死の商人④

村長宅の納屋に大量の武器荷物を納めて依頼をとりあえずは完了させた。


納屋というより武器庫の様相を呈していたそこには雑多な鎧兜、全身甲冑、剣槍弓等、歩兵用・騎兵用を問わず様々な武具のまるで展示場のようだった。


「ホラよ、約束の金だ」 狐が投げて寄越した袋を確認すると大金貨が15枚。

「確かに」


これだけのモノをどうするのか気になるが、雇われたばかりの俺にそう簡単に話すとは思えない。

俺を今回の仕事だけで解放するとも思えないので様子見かな。


「アンタにココを見せたのはやって欲しい仕事があるからなんだが、どうする?俺の仕事に手を貸してくれれば俺もアンタも大儲けだ」


「そうだな……断れば口封じとかされそうだし、だったら儲けさせてくれると言う話しに乗らない手はないだろ?」ニヤリと狐を見る。


「俺は商人だぜ?そんな物騒な事はしないさ。お互いに利益を得られるって話しだよ」

お前がそんなたまかよ。


「それで?これからどうするんだ?どっかで戦争でもやりそうな奴らに売り付けに行くのか?」


「はん!そんなのは二流・三流のやり方だ。争いってのは起こせばいいんだよ。起こっている所に売りに行くよりな」

小物風情が大きくでたな。まぁ、コイツではなく本店とやらの営業方針かな。


「なるほどな、ブリスクの騒動で売れ残ったか」


「フン!まったく、あの昼行灯の辺境伯め!せっかく育てた客先を潰しやがって!あの大司教や貴族共に、どんだけ金を回したか。それで、あの掃討作戦だろ?まあ、元は取れたと思うが、ウチの支店長はどうなるか分からん。今が上に行くチャンスなんだよ」


なるほど、この馬鹿のおかげで何となく話しが見えてきた。

しかし、あの大司教を殺しておいて良かったぜ。

犯罪組織への金や武器の提供を大司教を通していたと。


それで?最終的には誰が得する?コイツらも大司教も犯罪組織もそれなりに儲けはしただろうが、それだけではない筈だ。


ブリスクの弱体化を狙った?誰が?

一商会がやるわけないしできるわけない。

国か?隣国と接した辺境領を切り取る、もしくは実質的な支配権の掌握。

西の協商連合国が経済的な支配を目論んだ。

もっと言えば国盗りの橋頭堡とするためか?

多分、当たらずとも遠からずだろう。


こりゃあ、相当きな臭くなってきた。

この計画が協商連合国としての方針か一部の勢力の方針なのか、ブリスク領やサウザランド国内にも内通者がいるはず。


今の所ただの俺の想像だが、中々エグいなぁ。


(この小物がどれだけ知っているかは分からんが、その内聞いてみようかな)



所詮は他人事とまだその時は、そうのんびりと考えていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る